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主な新興国/米国経済ニュース(24日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米政府、クリミア半島に焦点当てた対露追加制裁へ―ロシアは効果を否定

バラク・オバマ米大統領は20日、ロシアに対する追加経済制裁措置を実施する大統領命令に署名した。地元のタス通信(電子版)が伝えた。

ホワイトハウスが発表した特別声明では、追加制裁はロシアが3月に住民投票の結果に従って併合したウクライナのクリミア半島への財・サービス、技術の輸出や投資を禁止する一方で、クリミア半島からの輸入も同様に禁止するとしている。また、大統領命令では財務省はクリミア半島に居住する個人や企業に対する制裁措置の実施を認めるとしている。

米政府によると、今回の追加制裁は米国企業に対するメッセージの意味合いがあり、米国はクリミア半島をロシアの領土と認めないことを確認するものだという。実際、オバマ大統領は、「改めてロシア政府に対し、クリミア半島の占領と併合を中止し、ウクライナ東部の反政府武装グループへの支援を停止すべきだ」と述べている。

一方、ロシア政府はこの米国の追加制裁について、「効果はない」とした上で、「米国がクリミア半島に対するロシアの歴史的権利を認めるまでロシアは待ち続ける」としている。

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米ステープルズ、ハッカー攻撃被害は116万人のカード情報盗難と公表

米事務用品小売り大手ステープルズ<SPLS>は先週末、2カ月前に起こった同社のコンピューターシステムがハッカー攻撃で、116万人の顧客のクレジットカードやデビットカードの個人情報が盗まれたことを明らかにした。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが伝えた。

同社は10月に初めてハッカー被害の事実を認めてから、これまで2カ月かけて顧客データの盗難の可能性を含めて社内調査を進めていたが、ようやく、その結果を公表した。小売り大手ターゲット<TGT>が2013年暮れごろにハッカー被害に遭い、その後もホームセンター大手ホームデポ<HD>や食品スーパー大手スーパーバリュー<SVU>など小売り大手7社が相次いで同様な被害を報告しているが、ステープルズがなぜ顧客情報の保護対策を迅速に講じなかったのかは不明となっている。

信用情報が盗まれたのはステープルズの全米1400店舗のうち、一部の115店舗で、7月20日から9月16日までに買い物をした顧客で、ハッカーはカード利用者の氏名やカードの番号、有効期限、認証コードを知っているという。ハッカーはすでに個人の氏名と銀行を知っているため、今後、闇市場で出回っている他の個人情報と組み合わせることで悪用される可能性があるという。

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米グーグル、自動運転車の開発めざし自動車メーカーとの提携模索へ

米インターネット検索大手グーグル<GOOGL>は、今後5年以内に無人運転が可能な自動運転車を市場に投入するため、自動車メーカーとの提携を模索している。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が19日に伝えた。

これは自動運転者開発プロジェクトの責任者であるクリス・アーマン氏が明らかにしたもので、同氏は、「グーグルはこのプロジェクトを実現するために自動車メーカーになる考えはない。ただ、提携が可能な自動車メーカーを探している」と述べている。

同氏によると、当分の間は、同社独自のプロトタイプ車を開発するため、自動車部品メーカーのサプライヤー(自動車部品・資材供給業者)と共同で作業を進め、2015年初めにも路上試験に入る計画で、2017-2020年に完全な自動運転車を市場に投入する目標は変えていない。グーグルは自動運転を可能にする高度なレーザー光線レーダー(LIDAR)技術があり、これを使えば、自動運転車の周囲の状況を正確に画像処理できる低価格なソフトウエアを作ることができるとしている。

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楽天、インドネシアで携帯電話向けイーコマースアプリ提供へ

イーコマース(電子商取引)大手の楽天は、2011年3月にインドネシアにオープンしたショッピングサイト「ラクテン・ブランジャ・オンライン」を通じて、来年早々にもインドネシアの顧客向けに、携帯電話で同社のショッピングサイトが利用できるアプリケーションソフトを提供していく計画だ。ジャカルタ・ポスト(電子版)が20日に伝えた。

このアプリはグーグルの携帯電話向けOS(基本ソフト)「アンドロイド」と米IT大手アップル<AAPL>のスマートフォン「アイフォン」向けOS「iOS」に対応し、アプリのショップでダウンロードすることができる。楽天ではインドネシアの顧客の25%が携帯電話によるショッピングサイトの利用が期待できるとしている。

インドネシアのイーコマース市場は今年末時点で年率45.1%増になると予想されているが、ラクテン・ブランジャ・オンラインでは来年の売り上げ目標について、この業界平均を上回る3ケタ増を維持していきたいとしている。

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広島信金、ベトナム投資開発銀行と業務提携

ベトナム投資開発銀行(BIDV)はこのほど、広島信用金庫のベトナムでの営業活動を支援するための了解覚書(MOU)に調印した。ベトナムの声・ハノイ放送局(電子版)が22日に伝えた。

同覚書に基づいて、BIDVは広島信金のベトナムでの最初のパートナーとなり、広島信金の法人顧客となっている中小企業に対し、金融関連の商品やサービスを提供していく。それらの中にはベトナムでの決済口座の開設や与信、給与の支払い、貿易や投資環境、税金、人材採用などに関する相談も含まれる。

広島信金では来年3月に、ベトナムでの投資機会を模索するため、地場企業の代表からなる使節団を派遣する計画だ。

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ブラジル中銀週報:2014年GDP伸び率見通しを5週連続で下方修正

ブラジル中央銀行が22日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想した2014年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比0.16%増から0.13%増へ下方修正された。下方修正は5週連続。1カ月前の予想は0.2%増だった。また、2015年のGDP伸び率見通しも前週予想の同0.69%増から同0.55%増へ下方修正された。下方修正は4週連続。1カ月前の予想は0.8%増だった。

また、IPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2014年は前週予想の前年比6.38%上昇のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は6.43%上昇だった。2015年の見通しは前週予想の6.5%上昇から6.54%上昇へ下方修正(悪化)された。1カ月前の予想は6.45%上昇だった。

一方、2015年末時点の政策金利の見通しは前週予想の12.5%のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は12%だった。また、来年1月20-21日の次回の金融政策決定会合時の政策金利の見通しは前週予想の12.25%のまま据え置かれた。1カ月前の予想は11.75%だった。

為替レートの見通しは、2014年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.6レアルから2.65レアルへ引き上げられた。引き上げは2週連続。2015年末時点の対ドルレートも前週予想の2.72レアルから2.75レアルへ引き上げられた。引き上げは8週連続。

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ロシア中銀、金融危機で事実上経営破たんしたトラストバンクへ3.6兆円注入

ロシア中堅銀行トラストバンクが22日、ロシア通貨ルーブルの急落による金融危機に耐え切れず、事実上経営破たんした。この事態を受けて、ロシア中銀は直ちに傘下の預金保険機構を通じて同行を監視下に置いて業務を監督する一方で、緊急の救済資金として300億ドル(約3.6兆円)の流動性資金を注入した。英紙ガーディアン(電子版)などが伝えた。

中銀では、公的資金の資本注入の一方で、同行の再建を目指して、大手行に同行の買収を要請する方針。ロシア下院議会は先週末、金融危機で多額の損失が発生する可能性がある銀行セクターに対し、金融当局が1兆ルーブル(約2.1兆円)の自己資本増強のための資金注入を可能する法案を可決したばかり。

ロシアの銀行は西側の対露経済制裁で海外での資本調達が困難になっているほか、6月以降の原油価格の急落でルーブルの価値が年初来で50%も低下し、多額の含み損を抱えて苦しい財務状況にある。また、ロシアのオーバーナイトの銀行間取引金利も25%にも達して、資金調達が危機的状況となっている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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