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JR北海道社長、定例記者会見で「快速格下げ」に含み 札幌―室蘭間結ぶ特急すずらん号、利用低迷で

鉄道乗蔵鉄道ライター
特急すずらん号(写真AC)

社長定例記者会見で快速格下げなどに含み

 2024年3月のダイヤ改正で札幌―室蘭間を約1時間40分で結ぶ特急すずらん号は、全席指定席化と窓口での往復割引切符の廃止により利用者が激減。ダイヤ改正以降は空席が目立つ特急すずらん号の様子がSNS上に相次いで投稿され話題となっていた。

 JR北海道が6月11日に発表した5月の特急列車の利用状況によると、特急北斗号や特急すずらん号の走る東室蘭―苫小牧間については、前年同月比3.9%減と3カ月連続で前年同月比を下回った。昨年2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行となったが、コロナ5類移行前の数値との比較においても前年同月比を下回っていることから、コロナ禍からの回復の兆しはみられない状況だ。

 ダイヤ改正前までは、札幌―室蘭間は当日購入可能な自由席の往復割引切符であれば往復約5000円で利用できていたが、当日購入では正規運賃で往復約1万円と2倍近い値上げとなった。割引切符はえきねっとのみでの販売となったが、前日までに予約が必要なうえに発券後の変更ができないなどの制約があることから利用が敬遠されているようだ。

 こうした状況の中、JR北海道の綿貫社長は6月11日に行われた定例記者会見の場で「すずらんに乗ってもらうための対策はこれから検討していく」「安くご利用というニーズが強いのであれば、特急でなくてもいいと思う」と発言。すずらん号の特急列車から快速列車などへの格下げについても含みを持たせた。

安易な快速格下げは客単価の減少を招く?

 しかし、ここで1つ疑問がある。特急すずらん号の快速列車などへの格下げは、それこそ客単価の減少を招きさらに収支状況を悪化させるのではないだろうか。札幌―室蘭間については高速バス運賃との比較などから、乗客に受け入れてもらいやすい適正価格は片道2500円から3000円程度と考えられ、さらに、えきねっとでは切符を買いにくくなったことから、そもそもは値付けと販売方法の失敗が客離れを招いた本質的な要因と考えられる。

 したがって必要な対策は、利用者にとって受け入れやすい価格と販売方法に改めることの2点が対策を講ずるべき課題ではないのか。経営学上、利用者のニーズは、例えば、価格や購入方法、移動の快適さなど「さまざまな要素が絡まりあった束」であることは2024年4月30日付記事(JR北、特急列車の客離れ招いた「乗客ニーズの本質」とは何か ニーズは「さまざなな要素を含む束」である)で触れたとおりだが、特急すずらん号の客離れの要因について安易に「乗客は安さだけを求めている」と判断し、高速バスよりも快適性の劣る通勤仕様でロングシートの733系や737系電車の快速列車に格下げをしてしまうと、今度は長時間の通勤電車での移動が敬遠され、さらなる客離れにつながってしまうことが心配だ。

 例えば、特急すずらん号の4号車はコンセントが完備されたグレードの高いuシート車両となっていることから、こうした設備の良い車両については高速バスよりも若干は値段を高くしても移動中にPC作業をしたいビジネスマンの利用が考えられることから、本来であればこうした客層ごとに想定されるニーズを分析し、必要とされるサービスレベルと値付けを考えていくことが、利用者回復に向けての理想的なプロセスである。

 札幌ー苫小牧間であれば、通勤型車両でもまだ耐えられる距離ではあるが、これが登別や室蘭となるとやはり椅子の固い通勤型車両で長時間移動するのはなかなかハードで、グレードの高い座席で移動したいというのが筆者の個人的な感覚である。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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