ドコモの新プラン「irumo」が高く感じる理由
7月1日に始まるドコモの新料金プラン「irumo(イルモ)」は、小容量に対応するドコモの安いプランという位置付けです。
しかし発表を受けた反応としては「高い」という声が目立ちました。なぜこうしたズレが生じたのか、背景を考えていきます。
irumoは他社サブブランドへの対抗か
irumoはドコモが直接提供するMNOサービスであり、キャリアから帯域を借りて運営するMVNOサービスではありません。
速度については「混雑時に上位プランより先に速度制限をかける」という特徴的な注意書きはあるものの、MVNOに比べれば帯域に余裕があると考えられます。
ドコモが一押しとする「3GBプラン」について、細かな点で違いはあるものの、料金は他社のサブブランド(ワイモバイルとUQ mobile)に近いものになっています。
各社の小容量プランでは月額1000円前後が激戦区となっている中で、割引適用後に「月額880円」を狙ってきたのは、ドコモなりに攻めた結果という印象です。
なお、上位プランの「eximo(エクシモ)」と比べると家族間の無料通話、キャリア決済、ドコモメールなどが差別化されています。
追記:
irumoのような混雑時の速度制限はあるのか、ソフトバンクとKDDIの広報に確認したところ、いずれも「メインブランドよりも先にサブブランドの速度制限を実施することはない」との回答がありました。
ところで、ドコモには「ahamo」があったはずです。なぜ他社のサブブランドに対抗する必要があったのでしょうか。
発表会の翌日にドコモが総務省に提出した資料では、他社のサブブランドにユーザーを取られていたとみられる実情が明かされています。
ahamoは6月7日に500万契約を突破するなど一定の需要を満たしており、新たに「ahamo光」も始まります。しかし、問題はahamoが基本的に「オンライン専用」という点です。
シニア層を中心に、スマホのことは馴染みのドコモショップで全部やってもらいたいという人はまだまだ多く、ahamoはハードルが高いといえます。
その点、ワイモバイルやUQ mobileには店舗でのサポートがあります。筆者が料金プランのおすすめを聞かれた場合には、この2つを挙げるようにしていました。
しかしスマホに詳しくない人にとって、価格の安いサブブランドには、何か落とし穴があるのではないかと気になるものです。
irumoの発表において、ドコモショップでの契約手続きやサポート(一部有料)に対応した「ドコモのプラン」と強調していたのは、こういう背景を踏まえたものといえそうです。
MVNOの後継としては無理がある
irumoと入れ替わる形で、MVNOサービス「OCNモバイルONE」の新規受付は6月26日で終了します(既存ユーザー向けのサービスは継続)。
この背景には、OCNモバイルONEを運営するNTTレゾナントを7月1日付けでドコモが吸収合併するという、グループ再編の動きが関係しています。
7月以降、OCNモバイルONEはドコモが運営するものの、NTTコミュニケーションズから「再卸」を受けるという形になり、「永続的に続けることは好ましくない」(NTTドコモ 経営企画部料金企画室長の大橋一登氏)としています。
どうやって巻き取っていくのかについて、「無理にirumoに移行させるようなことはしないが、ポイントや爆アゲセレクションなど、ドコモの良さをアピールしていきたい」(NTTドコモ 営業戦略部 料金戦略担当部長の内山清人氏)と説明しています。
ただ、irumoとOCNモバイルONEはサービスの性質が異なることから、ここでは他社のMVNOをドコモの窓口で取り扱う「エコノミーMVNO」を選択肢として強調したほうが良かったのではないか、とも思うところです。
このようにirumoは、さまざまな役割を同時に背負わされることで話がややこしくなっていますが、他社サブブランドに対抗しつつ、MVNOとも棲み分けができる絶妙な位置を狙っていることが分かります。
都市部における「パケ詰まり」問題を除いて考えると、irumoのターゲット層にとっては「ドコモの安いプラン」として普通に好印象でしょう。ドコモ光やdカードとともに契約を伸ばしていくことになりそうです。