お茶の間のゆべしに新しい風「黒くるみは」特別仕立ての深煎り黄粉が絡む上品な黒糖とたっぷりの胡桃
気が付いたら身近にあって、でもいざ離れてみると久しぶりに食べたいなぁと思う「郷土菓子」。日常が特別になるということは年を重ねるにつれて増えていくような気がします。
いくつかそういった和菓子が自分の中にはあるのですが、そのひとつが「ゆべし」。柚餅子ではなく、餅粉と胡桃のお菓子です。
上京するまでは北東北にいた私にとって、ゆべしはお茶の時間のなんとなく食べて、安定した美味しさに心癒される存在でした。有名店のものよりも、ローカルなスーパーや産直コーナーに陳列されているものばかりが脳裏に浮かんでは消えて、浮かんでは消えて。
そのゆべしが、大阪の名店「本まつばや」さんからは垢抜けた都会の装いで登場。今回は本まつばやさんの「黒くるみ」をご紹介。
その色味や形と驚くことがいくつかあるのですが、まずはその形。約2.5cm四方のキューブ型というスタイリッシュな佇まい。
ところどころ不規則に波打っている部分は胡桃の存在を知らせてくれます。また、全体に満遍なく塗されているのは、特別に焙煎してもらっているという深煎りの黄粉。こちらの黄粉がまた非常に力強く、大豆や大地の雄々しさをも漂わせているかのよう。ぎゅっと凝縮された旨味、渋みがストレートに飛び込んできます。
そして肝心の黒糖をあわせたお餅は、その佇まいとは裏腹に非常に上品でまろやかな甘味。穏やかな弧を描いていくように、舌先で溶かすように噛みしめていけば徐々にふっくらとしたお餅ならではの旨味が滲みだし、徐々に胡桃の香ばしさと仄かな苦味が逆転していき飽きの来ない味わいに。中に閉じ込められている胡桃も、一切れの大きさに対してなかなか大ぶりなので、ポリポリとした食感も立ち昇るウッディな香りにも注目を。
実はしばらく販売休止していた黒くるみ。今回出品されている六本木ヒルズノースタワー地下1階の「菓子の記録帖」という全国から選りすぐりの和菓子が集まる店舗にて、期間限定で販売中とのことで訪問。
都会の喧騒に耳を傾けながら味わったなんとなく懐かしい気持ちと新しい発見は、私の中のゆべしに新たなページを運んでくれました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<本まつばや・本店>
公式サイト(外部リンク)
大阪府大阪市天王寺区真法院町1-14
06-6771-0304
10時~18時
定休日 日曜
<菓子の記録帖>
公式サイト(外部リンク)
東京都港区六本木6-2-31 六本木ヒルズノースタワー地下1階
03-6434-5988
11時~20時