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平成のアイドルグループ出身で、連ドラ主演クラスになった女優は何人いるか?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)フジテレビ

 54年ぶりにドラマ枠となったフジテレビ金曜21時で、昨日スタートの『うちの弁護士は手がかかる』に、平手友梨奈がヒロインの新人弁護士役で出演している。欅坂46(現・櫻坂46)の不動のセンターから2020年に脱退。女優として活躍が続く。

 2010年代にAKB48の大ブームから多くのグループが生まれ、アイドル戦国時代と呼ばれた。10年以上を経て、ブームはピークアウトしたが、卒業して女優を目指した元メンバーは多い。

 そのうち、地上波のGP帯の連続ドラマで主演やヒロインを張れるほどになったのは何人か? 今年の各クールから検証する。

カリスマ・平手友梨奈がポンコツ弁護士に

 平手は欅坂46在籍中から、映画『響-HIBIKI-』に主演して日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞など、女優としての資質を評価されていた。

 信念を曲げない15歳の天才小説家役は、欅坂46での孤高のカリスマ少女のイメージと重なる部分もあったが、その後もドラマ『ドラゴン桜』や『六本木クラス』、映画『さんかく窓の外側は夜』や『ザ・ファブル』などで存在感を発揮してきた。

 『うちの弁護士は手がかかる』では、最年少で司法試験に合格した超エリートの新人弁護士ながら、コミュニケーションが苦手でやる気が空回りするポンコツという役どころ。

 ムロツヨシが演じる主人公が、芸能事務所の敏腕マネージャーからパラリーガルとなり、彼女に振り回されながらサポートしていくというストーリーだ。

ローカルアイドルから大躍進の橋本環奈

 10月クールのGP帯の連ドラで、他に主役やヒロインを務める元アイドルでは、16日スタートの『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ・フジテレビ系)に主演の橋本環奈がいる。

 といっても、来年後期のNHK朝ドラ『おむすび』のヒロインにも決まるなど、今や若手トップ女優の1人の彼女に、元アイドルのイメージはなくなりつつある。

 もともと中学時代に福岡のローカルアイドルグループ、Rev.from DVLのメンバーとして活動。イベント中にファンが撮った写真が“奇跡の一枚”として拡散し、“1000年に1人の美少女”として全国規模で注目された。

 それからは、グループに2017年の解散まで所属しながらも、映画『セーラー服と機関銃-卒業-』や『ハルチカ』に主演など女優活動が軸に。福田雄一監督で実写化された『銀魂』の神楽役では鼻をホジったりゲロを吐いたりと、美少女イメージを振り切り、コメディセンスも発揮した。

 多くの映画にメインで出演し、ドラマ『今日から俺は!!』のヒロインや舞台『千と千尋の神隠し』で主演(Wキャスト)も。ルックスだけに留まらない演技力を見せてきた。

 『トクメイ!』では警視庁から問題のある所轄署に、経費削減の特命を背負って派遣された特別会計係の警察官役。几帳面で数字に強く、事件をお金という角度で捉えて解決へ導いていく。

乃木坂46の元エース・齋藤飛鳥は深夜枠でヒロイン

 今期のGP帯では主役級はこの2人だけだが、深夜ドラマには元アイドルが散見される。9月5日にスタートし来週最終回を迎える『灰色の乙女』(MBS・TBS)では、乃木坂46の初代キャプテン・桜井玲香が連ドラ初主演。

 20年間、片想いをしている男性にストーカー行為をしていて、彼が事故で記憶喪失になると、恋人だとウソをついて近づきながら葛藤して……という難役。舞台出演を重ねているだけに、演技の地力が付いているのを感じさせた。

 このドラマの後番組として24日にスタートする『マイホームヒーロー』では、同じ乃木坂46のエースから昨年末に卒業した齋藤飛鳥がヒロイン。佐々木蔵之介が演じる主人公の会社員が、娘に暴力をふるう彼氏を殺してしまうストーリーで、その娘の役。映画も来春に公開される。

 グループ時代から『映像研には手を出すな!』などで主演経験もあり、今クールは『いちばんすきな花』(フジテレビ系)にも多部未華子の妹役で出演中だ。

西野七瀬は『ポケモン』原案のドラマに主演

 さらに元乃木坂46勢では、屈指の人気メンバーだった西野七瀬が『ポケットに冒険をつっこんで』(テレビ東京系)に主演する。

 『ポケットモンスター』シリーズを原案にした初のオリジナルドラマで、クリエイターを目指して上京し、小さな広告代理店で働く役。厳しい現実の中で、20年ぶりに『ポケットモンスター赤』をプレイして成長していく。西野自身がポケモン好きとのこと。

 2018年末でのグループ卒業後、『あなたの番です』(日本テレビ系)の黒幕役など多くの作品で印象を残し、映画『孤狼の血 LEVEL2』でのスナックのママでは日本アカデミー賞の優秀助演女優賞も。

 最近では『シン・仮面ライダー』のハチオーグ役まで、飄々とものにしていく印象がある。主演は一昨年のホラードラマ『言霊荘』(テレビ朝日系)以来だ。

元ハロプロの鈴木愛理がコメディで推し活

 『推しが上司になりまして』(テレビ東京系)に主演しているのは、ハロー!プロジェクト出身で元C-uteの鈴木愛理(*Cは温度の単位)。ファンのみならず「アイドルが憧れるアイドル」として広く推されていた彼女が、ヲタ活で2.5次元の舞台俳優を最推ししていたOLを演じている。

 引退した彼が会社の上司となって現れて戸惑い、距離を取ろうとしながら妄想に駆られるコミカルな演技が面白い。

 2017年のC-ute解散後はソロアーティストとしての活動に力を入れていたが、この初主演ドラマや『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)の新MCなど、より幅広い活動に乗り出したようだ。

元HKT48の矢吹奈子は令嬢役で初ヒロイン

 本日深夜スタートの『18歳、新妻、不倫します。』(ABC・テレビ朝日系)では、今年4月にHKT48を卒業した矢吹奈子がヒロインを務める。大富豪の令嬢で、お見合い結婚を避けるために、藤井流星が演じるボディガードと偽装結婚をする。

 矢吹はHKT48に小学生で加入し、田中美久との“なこみく”コンビで人気を博した。日韓合同オーディションからIZ*ONEでも、先輩の宮脇咲良(現LE SSERAFIM)らと活動。HKT48復帰後はアルバムリード曲のセンターも。高い歌唱力を持ちながら、女優志向で卒業。今回が初めてのヒロインとなる。

関西ローカルでは元スパガの2人が大胆に

 放送は関西ローカルだが、19日スタートの『帰ってきたらいっぱいして。』(読売テレビ)では、元SUPER☆GiRLSの浅川梨奈が主演。アラサーのティーンズラブ漫画家役で、イケメンだが女グセの悪い年下のクズ男と漫画の参考資料として同棲を始める。

 グループ時代からグラビアで“1000年に一度の童顔巨乳”として人気を呼ぶ一方、映画やドラマにも相次ぎ出演。当初は漫画原作の巨乳キャラの役などが多かったが、キャリアを重ね、『大病院占拠』の桃鬼役など役幅を広げている。

 29日スタートの『こういうのがいい』(ABC)では、同じSUPER☆GiRLSの1期メンバー・田中美麗がヒロイン役。性に奔放で、西山潤が演じる主人公と、エッチも気楽にして束縛のないフリフレ(フリーダムフレンド)となる。2018年のグループ卒業後、腰の持病もあって女優活動は少なかったが、いきなりの抜擢となった。

バラエティ中心の高山一実の夜ドラ主演

 10月クールでは、グループ卒業からあまり年月の経ってない元アイドルの主役級が多いが、今年の他のクールではどうだったか?

 1月クールのGP帯では、NHK夜ドラ『超人間要塞ヒロシ戦記』に元乃木坂46の高山一実が主演したのみ。2021年の卒業後、『Qさま!!』(テレビ朝日系)のMCを続けるなどバラエティを主戦場にしていて、個人でのドラマ出演は初めて。人型要塞である青年の内部の艦長という異色の役を演じた。

 深夜帯では、『三千円の使い方』(東海テレビ・フジテレビ系)に節約に目覚める会社員役で主演した葵わかなは、朝ドラ『わろてんか』のヒロインなどで知られるが、中学時代に“2軍アイドル”を謳った乙女新党で活動していたことがある。

前田敦子は変わり者役で独自のポジション

 4月クールでは、橋本環奈が『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)に主演。美人すぎるゆえにトラブルに巻き込まれがちで、大家族を支えるために山田涼介が演じた御曹司と契約結婚をする役だった。

 『育休刑事』(NHK)では、黄金期のAKB48の絶対的エースだった前田敦子が、主人公の育休中の刑事(金子大地)の姉というヒロインを務めた。金髪の法医学者で五感が鋭い変人というキャラクター。

 同クールでは23時台に放送の『かしましめし』(テレビ東京系)で主演も。自殺した同級生の元カノで、パワハラから退職して気分転換の料理に活路を見出すデザイナーを演じている。

 2012年にAKB48卒業後の前田は、女優としてはアイドルやエースのイメージから離れた。映画『もらとりあむタマ子』を手始めに、変わり者や個性的な役柄で出演が続き、独自のポジションを築いた。

白石麻衣は『教場0』の新人刑事の1人に

 木村拓哉主演の『風間公親 教場0』(フジテレビ系)では、彼とバディを組んで指導を受ける若手刑事が2話ごとに替わる中、7・8話に元乃木坂46の白石麻衣が出演。男女の機微を察する独特な感性を事件解決に役立てていたが、自身が交際する男性とは問題を抱えているという役どころ。

 乃木坂46時代は圧倒的な美貌で人気を呼んでセンターも務め、写真集が50万部突破と記録的な売り上げとなったりも。2020年に卒業後は、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)で謎の死を遂げた美女役が「原作のイメージにピッタリ」と評判を呼んだ。

 深夜ドラマでは、同じ元乃木坂46の松村沙友理が『ショジョ恋。』(フジテレビ系)に、処女であることがコンプレックスのキャリアウーマン役で主演。『好感度上昇サプリ』(テレビ東京系)では、初期からセンターを続けた生駒里奈が主人公の出版社の営業部での同僚というヒロインを演じている。

ミュージカルで活躍の生田絵梨花が元カノ役で

 7月クールでは、『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)で元乃木坂46の生田絵梨花が主演の赤楚衛二に次いでクレジットされて、2ショットのキービジュアルも公開された。

 グループ在籍中からミュージカル志向が強く、『レ・ミゼラブル』、『モーツァルト!』、『キレイ~神様と待ち合わせした女~』など数々の作品に出演。持ち前の歌唱力とも相まって主演も多く、演劇界で高い評価を受けてきた。

 2021年末にグループ卒業後は、ドラマ『オールドルーキー』(TBS系)、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)にも出演している。

 『こっち向いてよ向井くん』では、赤楚が演じた主人公が10年前に別れた元カノ役で、ヒロインの位置づけだったが、4話までは回想シーンでの登場。5話で再会してヨリを戻すような展開になったが、結局7話でまた別れている。

 このドラマでは、赤楚が相談相手から想いを寄せるようになった役の波瑠が、実質的にはヒロインだった。とはいえ、5~7話での生田の元カレと微妙な距離感を取る演技にはリアルさも華もあり、さすがの女優ぶりだった。

多彩な役者ぶりを見せる元SKE48の松井玲奈

 同クールのGP帯のメインキャストは彼女だけ。23時台では『ウソ婚』(カンテレ・フジテレビ系)で元欅坂46の長濱ねるが、菊池風磨が演じる主人公と半年限定のウソの結婚をするヒロイン役。『やわ男とカタ子』(テレビ東京系)で元SKE48の松井玲奈が、自己肯定感ゼロのこじらせ喪女というヒロインを演じた。

 松井はSKE48時代は松井珠理奈と共にグループを中心で支え、2015年に卒業。女優として出演作は途切れず、ドラマ『プロミス・シンデレラ』(フジテレビ系)では魔性の芸者役、映画『よだかの片想い』では顔にアザのある大学院生役で主演など、多彩な演技を見せている。

 『やわ男とカタ子』でも卑屈な自虐ぶりで目を引きながら、殻を破っていく姿は励みにもなった。今クールは22日スタートの『たとえあなたを忘れても』(テレビ朝日系)に出演する。

聖母イメージから役幅を広げた元乃木坂46の深川麻衣

 深夜帯では、『彼女たちの犯罪』(読売テレビ・日本テレビ系)で元乃木坂46の深川麻衣が主演した。グループ時代は最年長メンバーで、やさしいキャラクターから聖母と呼ばれ、2016年に卒業。

 今泉力哉監督の映画『パンとバスと2度目のハツコイ』に主演、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)で和宮役、『特捜9』シリーズ(テレビ朝日系)の刑事役レギュラーなど、順調な女優活動を続けている。

 『彼女たちの犯罪』では仕事で転落して結婚もうまくいかず、焦りから犯罪行為に加わる役で、心の闇が広がる様はインパクトが強く、目が離せないドラマとなった。

 11月公開の映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』に主演する。

 こうして見ると、平成のアイドル卒業生で今年のGP帯で主演・ヒロインを務めたのは、2話だけの白石麻衣を入れても6人に留まる。地方グループ出身の橋本環奈は2作で、女優として突出してきている。

 一方、深夜ドラマでは元アイドルの主演・ヒロイン作が多いという構図がある。現役メンバーの山下美月、与田祐希(乃木坂46)、上村ひなの(日向坂46)も主演している。そして、やはり乃木坂46勢が目立つ。

 坂道グループや48グループから、映画や舞台を中心に活躍していたり、脇役などで存在感を発揮している元メンバーはいる。ただ、一般層に届くGP帯の連続ドラマの主演級となると、国民的アイドルから国民的女優となった存在は、まだ現れていない。今クールで平手友梨奈たちがその足掛かりを掴むのか、注目したい。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』が発売中。『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』が10月13日に発売(イマジカインフォス刊)。

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