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河野デジタル大臣、給与返納の『けじめ』は邪道!デジタル庁の問題をすべて背負ってこそのデジタル改革

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

KNNポール神田です。

河野デジタル大臣が、マイナンバーのトラブルについて、大臣としての『けじめ』をつけるために、閣僚給与3ヶ月分を自主返納するという。

■マイナンバーに他人の公金受け取り口座がひも付けられるトラブルが相次いだことを受け、河野デジタル大臣が閣僚給与3カ月分を自主返納すると発表しました。

■河野大臣:「マイナンバー制度を担当するデジタル大臣としてけじめをつけるべきだと認識をしております。閣僚の給与3カ月分を自主的に返納することと致します」

■ 河野大臣は「誤登録事案が少なからず発生したことは遺憾」としたうえで、閣僚給与を自主返納する理由について「誤登録が明らかになった際、情報共有の体制が不十分で初動が遅れたことにけじめをつけるべきだ」と説明しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6fd070fd5f9168a0f47db41f619f6efdc19f87ab

『けじめ』という言葉がとても気になる。河野デジタル大臣の給与を返納したところで、マイナンバーカードの負の流れはまったく変わらない。いや、全くの逆効果で火に油を注いだだけではないだろうか? 侠気をだしたつもりでの『けじめ』だが、ニュースの文脈では『辞任を否定』したこととなっている。

ご本人が『けじめ』としても火に油を注ぐような『けじめ』となっていないか?

■閣僚給与3ヶ月分はいくらに?439万8,000円?

出典:内閣官房 主な特別職の職員の給与
出典:内閣官房 主な特別職の職員の給与

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/20221118_tokubetsushoku_kyuyo.pdf

国務大臣の給与は、特別職の国家公務員となり給与は決められている。

『俸給月額』としては、大臣の場合は146万6,000円

3ヶ月分では、439万8,000円となる。『年間給与額』では、約2,929万円なので、1ヶ月あたり244万円なので、3ヶ月では732万円となる。

つまり、439万8,000円〜732万円の返納額となるだろう。

こんな時は、低いほうで見積もるので、439万円だ。

しかし、この金額を返納しても『けじめ』となるのだろうか?

そう、河野太郎氏の資産は、1億5,804万円(2022年)と、大臣、閣僚の中ではトップクラスだから、痛くもないので『けじめ』としても『損』な発表であったと思う。

■そもそも『デジタル庁』は問題だらけのデパートだった

出典:首相官邸 令和2年9月30日
出典:首相官邸 令和2年9月30日

第98代の安倍政権時代時にさかのぼる…

2013年に安倍政権は民主党案ベースの関連法案(2011年)を再度提出・成立させた。これが『マイナンバー法』である。民主党が提起し、自民党が否定して、新たに決めた法律だ。

■総務省のマイナポイント付与の再委託問題 

2019年9月3日 総務省は、マイナポイント付与による消費活性化方針の『マイナポイント事業』を公表。

2019年補正21億円、2020年、予算2.478億円のうち、2,000億円が還元ポイント 

500億円が経費。経費分の350億円は 一般社団法人環境共創イニシアチブへ委託。さらに電通へ再委託。さらに、トランスコスモス、大日本印刷などへ再々々委託 最終的には、56億円。 300億円は、どこに消えた?

2020年7月1日『マイナポイント事業』開始 

出典:東京新聞
出典:東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/36004

デジタル庁』は、第99代の菅政権時代(令和2年2020年9月16日~令和3年2021年10月4日)に、発足した新省庁。

出典:デジタル庁
出典:デジタル庁

■平井デジタル担当相 NTT接待 NECは完全に干す問題

2021年7月2日、平井卓也氏、内輪の会談とはいえ、言葉遣いがラフだったことは認める

2021年8月、デジタル監に伊藤穰一氏要請の報道 エプスタイン疑惑で頓挫 

2021年9月1日、デジタル庁発足。初代デジタル大臣は、平井卓也

2021年9月1日、デジタル監に石原洋子氏就任 7ヶ月で退任

2021年10月 第一次岸田内閣

2021年10月 2代目デジタル大臣に 牧島かれん

2022年1月 マイナポイント事業 第2弾 開始

2022年4月 デジタル監に石原洋子氏退任 7ヶ月で退任

2022年4月 デジタル監に 浅沼尚(あさぬまたかし)(元・東芝)就任

2022年8月 第二次岸田内閣(改造)

2022年8月 2代目デジタル大臣 牧島かれん氏 就任10ヶ月で退任

出典:デジタル庁
出典:デジタル庁

https://www.digital.go.jp/news/d34afcd5-e6b4-4dd0-8426-919668c7ed15

2022年8月 3代目デジタル大臣に 河野太郎 就任  

リボルビングドア宣言  公務員が官と民をいったりきたりできる環境 回転ドアのように。

■総務省マイナポイント事業は『邪道』

2022年9月 総務省のマイナポイント事業第2弾最大2万円還元『邪道』発言

『ポイントはありがたいが、若干邪道なところがある』

河野デジタル大臣が就任して、1年。

ある意味、河野大臣がすべてのデジタル庁の問題を背負わされているといっても過言ではないほど、デジタル庁は問題だらけだったとおもわれる。

そして、まもなく発足2年の『デジタル庁』はこれだけの人事が動いている。

菅義偉総理、平井卓也大臣、岸田文雄総理、石原洋子デジタル監 、浅沼デジタル監、牧島かれん大臣、河野太郎デジタル大臣という流れだ。

出典:デジタル庁
出典:デジタル庁

出典:デジタル庁
出典:デジタル庁

デジタル庁幹部 小林前副大臣(リモート)、牧島前大臣、河野太郎デジタル大臣、大串正樹副大臣、尾﨑正直大臣政務官(元・高知県知事)

デジタル庁 幹部リスト

https://www.digital.go.jp/about/member

2023年6月21日 『マイナンバー情報総点検本部』設置

https://www.digital.go.jp/councils/mynumber-all-check

2023年7月19日 政府の『個人情報保護委員会』デジタル庁に立ち入り検査

中央省庁への立ち入り検査は今回で2件目、2019年に『国税庁』へ行政指導。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA197DJ0Z10C23A7000000/

2023年6月21日『マイナンバー情報総点検本部』初会合

 2022年8月8日『マイナンバー情報総点検本部』(第二回)中間報告後ノーカット会見

2022年8月8日 マイナンバー情報総点検本部(第二回)

出典:マイナンバー情報総点検本部(第2回)
出典:マイナンバー情報総点検本部(第2回)

https://www.digital.go.jp/councils/mynumber-all-check/ccc4719c-d557-4d61-873f-4c9627342e5d/

■空気を読まない、読めない河野デジタル大臣の改革

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7c57ef0ea7f305712edc2d85646202db3d1ec1b7

顔の見えなかったデジタル庁の顔として、大臣が矢面に立つのは当然。

いや、むしろ顔の見える大臣として前向きに積極的に取り組んでもらいたい。

これらは、ご本人のキャラのせいだが、辞任せずに、トップダウンで前向きに取り組まないと何も解決できない。

河野大臣が辞任すると、後はことなかれで何もやらない、やれない大臣しか就任されないことだろう。

■マイナンバーカードの一番の問題は、元データの問題だ!

マインバー制度上やシステム問題は、秋までの『マイナンバー情報総点検本部』での総点検をきっかけに、市町村の『氏名』『生年月日』『住所』『性別』の4情報の紐づけに必要な本籍に関する戸籍法、氏名のふりがな、フリガナ、誕生日の元号問題、住所表記のユレ表記などの是正につながる。

むしろ、河野大臣をふくめ、デジタル庁には、日本の個人情報の元データそのものを、元号表記、フリガナ、ふりがな、漢数字、戸籍法もふくめ、デジタルで作業しやすい元データそのものの改革に取り組んでもらいたい。

胆略的な『ヒモづけルール』を変えただけでは、この問題は永遠に解決しない。

地方行政では対応できないデジタル庁ならではの、デジタル化の弊害を点検だけではなくデジタル化弊害議案として早急に『閣議決定』を促してほしいものだ。

この逆行の中でも、デジタル大臣として、岸田総理から任命された機会を活かしきってほしい。 日本のデジタル化の推進はここが正念場だ。

■河野太郎は総理大臣だったかもしれない男

そう、自民党総裁で、河野太郎は 総裁選挙の決選投票で257票を獲得した岸田氏。170票の河野氏を制し、総裁の座を勝ちとった。 いわばライバル関係だった。

河野太郎氏の運は、この危機を乗り越えるためにあると願いたい。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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