浦和レッズレディースDF南萌華 「なでしこリーグ」制覇で「WEリーグ」へ弾みを
優勝争いが佳境を迎えているプレナスなでしこリーグ。全18試合中15試合を終えた時点で12勝1分2敗、2位のINAC神戸レオネッサに勝ち点8差をつけて首位を独走している浦和レッズレディースは、11月8日(日)14時から、ホームの浦和駒場スタジアムで愛媛FCレディース戦を行う。勝てば、14年シーズン以来6年ぶり3度目となる優勝が決まる一戦だ。
女子サッカーは来年9月からプロの「WEリーグ」が開幕し、浦和はその初代11クラブの一員となることが決まっている。慣れ親しんできた「なでしこリーグ」はアマチュアとして残るが、トップリーグとしての位置づけは今季が最後。なでしこジャパンの一員でもあるDF南萌華は「ホームのサポーターの前で勝って優勝を決めたい」と大いに意気込んでいる。
■南「皆が迷いなくプレーできている」
新型コロナウイルス感染症問題でシーズン開幕が7月に延期された今季、浦和はスタートダッシュに成功して3連勝し、その後も順調に白星を重ねてきた。特に前半戦は優勝争いのライバルである日テレ・東京ヴェルディベレーザやINAC神戸との直接対決にいずれも1-0のスコアで勝利。ライバルが下位チームから勝ち点を取りこぼすこともある中で、浦和は節が進むごとに独走態勢を築き上げていった。
しかし、王手をかけていても、南は慎重な姿勢を崩さない。
「去年も自力で優勝がつかめる状況で逃しているので、気を抜くことはできない」と引き締まった表情を浮かべる。
今季の浦和が強さを見せてきた背景にはどのような要因があるのか。第一に挙げられるのは、森栄次監督が指揮を執って2年目となり、昨年から推し進めてきたポゼッションサッカーがチームに浸透したことだろう。南がこのように説明する。
「森監督の戦術はポジションごとの役割がハッキリしていて、皆が迷いなくプレーできている。去年と違うのは勝負強さ。昨季は負けていた試合を引き分けに、引き分けていた試合を勝つことができている」
チームとしての成長を促した別の要素もある。選手同士のコミュニケーションの濃さだ。南は自信を持ってこう語る。
「首位にいる以上、ほかのチームが私たちを倒そうといろいろな対策を練ってくる。私たちはその中でも状況を打開しないといけない立場にあったので、試合でも、普段の練習でも、選手同士でしっかり話さないと解決できないことがたくさんあった。選手同士の会話が増えることで、さらに良くしていこうというムードもチーム内に出た」
■試合に出なくても、日々の練習で成長できる環境があった
もちろん個々の成長も見逃せず、現在21歳の南こそ、その象徴的存在と言えるだろう。南は浦和が前回優勝した14年は浦和レッズレディースユースに所属し、先輩たちのタイトル獲得をまぶしく見ていた。その後、17年にレディースの一員になったが、1年目はリーグ戦の出番がないままにシーズンを終えた。
ただ、17年はジェフユナイテッド市原・千葉レディースからFW菅澤優衣香が移籍加入した年であり、長年ドイツでプレーしていたFW安藤梢がシーズン途中の6月に浦和に復帰した年でもあった。練習で日本代表クラスのストライカーとマッチアップをしながらもまれた南は、身長172センチの長身を生かした守備力をじわりじわりとつけていった。
そしてレディース2年目の18年、シーズンの後半から先発に定着。19年のリーグ戦では1試合を除いてフル出場し、リーグ2位へと躍進したチームを最終ラインで支えた。4年目の今季は、日テレ時代の16年から19年まで4年連続得点女王で、今季からINAC神戸でプレーする田中美南に得点を許さなかった。
「1年目、2年目は普段の紅白戦で(菅澤)優衣香さんや(安藤)梢さんを相手にプレーできていたことで、2年間で本当に成長できたと感じています。なでしこジャパンに選ばれている選手や、世界で活躍してきた選手を相手にディフェンスをしていたあの2年間が自分を成長させてくれました」
南はしみじみと振り返った。
■11月8日(日)、浦和駒場スタジアムで14時キックオフ
11月8日14時キックオフの愛媛戦は14年以来6年ぶりに浦和駒場スタジアムのバックスタンドが開放される。ホームの浦和は、アルコール消毒や密を避けるなどの対策が施されたスタジアムに約5000人の来場を見込んでいる。
「来年からWEリーグが始まるタイミングで優勝できることには絶対に意味があると思います。WEリーグにつなげられるようなサッカー、たくさんの方に見ていただけるようなプレーをしたいと思っています」
新時代への助走はもう始まっている。