【インタビュー前編】インターヴァルズが2018年9月、日本デビュー。ギターの新時代を語る
ギター・ミュージック新時代の旗手、アーロン・マーシャル率いるインターヴァルズが2018年9月、アルバム『ザ・ウェイ・フォーワード』で日本デビュー。同月、東京と大阪で来日ライヴを行う。
インターヴァルズは2011年にカナダのトロントで結成、3作目のアルバムにして日本初見参となる。ロック/ポップ/ジャズ/プログレッシヴ・ロック/メタルなどを取り込んで昇華させた彼らのボーダーレスなインストゥルメンタル・サウンドは世界に衝撃を及ぼし、アニマルズ・アズ・リーダーズやポリフィアらと共にギター・ミュージックの“新しい波”として注目されてきた。
「2018年はギター・ミュージックをやるのにベストな時期だ」とアーロンは語る。テクニカルでメロディアス、そして常にエモーショナルなギター・プレイで新世代のヴァーチュオーゾ(名手)と目される彼に、日本初上陸への意気込みを訊いた。
<ギター・ミュージックには新しい波が訪れている>
●『ザ・ウェイ・フォーワード』の日本盤リリースと来日公演が決まりましたが、まだアルバムを聴いていない音楽ファンのために、どんな作品か教えて下さい。
『ザ・ウェイ・フォーワード』はインターヴァルズ史上、最もバランスの取れたアルバムだ。過去の作品ほどヘヴィではないけど、メロディもあるし、アグレッシヴなリフ主体の曲もある。プログレッシヴなアプローチやスウィートなR&Bやフュージョンの要素もあって、俺の音楽スタイルの集大成といえる作品だよ。
●現代ではギター・ミュージックはメインストリームのヒット・チャートで少数派ですが、インターヴァルズは音楽シーンにおいてどんな位置を占めるでしょうか?
2018年は、ギター・ミュージックをやるのにベストな時期だと思うんだ。1980年代はギター中心の音楽が急激な進化を遂げた時代だった。ポール・ギルバートやグレッグ・ハウ、スティーヴ・ヴァイ、それから『シュラプネル・レコーズ』系のテクニカル・ギタリストが登場している。1990年代はテクニカル・ギターは“クールじゃない”とされて低調だったけど、ニルヴァーナだってパール・ジャムだってギター・ミュージックだった。ギターが廃れたことなんて、実は一度もないんだよ。2018年はインターネットやSNSのおかげで、良い音楽であれば伝わっていく時代だ。1980年代のように誰もが同じMTVや同じラジオ局を聴く時代ではないけど、幾つも選択肢がある。ギター・ミュージックには新しい波が訪れていると思う。
●2018年のギター・ミュージックにおいて、注目すべきギタリストは?
アニマルズ・アズ・リーダーズのトーシン・アバシが新しい世代のギター・ミュージックの扉を開いたことは確かだよね。デヴィッド・マキシム・ミシッチやプリーニ、ポリフィアもユニークで高品質のギター・ミュージックだ。自分より前の世代でリスペクトするのは、まず当然ガスリー・ゴーヴァンだな。マルコ・スフォーリのメロディックなアプローチとフレージングからも多大な影響を受けた。グレッグ・ハウはオールドスクールなテクニカル・ギターと現代のギター・ミュージックの橋渡しをするアーティストだ。
●グレッグ・ハウといえば1980年代に『シュラプネル』からデビューしたギタリストですが、彼と単なる“速弾き系”とはどのように異なるのですか?
グレッグ・ハウはマイケル・ジャクソンやジャスティン・ティンバーレイクのバックを務めながら自分のリーダー・アルバムを出しているけど、独自の世界観を持ったアーティストだよ。彼にはテクニックや音数だけではなく、ナチュラルなメロディ・センスがあるし、常にソウル&フィールを込めている。単なるギター・オリンピックではないんだ。最近の彼のアルバムも素晴らしいよ。『サウンド・プルーフ』(2008)の「チャイルズ・プレイ」という曲は最高だ。俺にとっても大事なのはテクニックより魂なんだ。プライオリティはメロディとフィーリングだよ。グレッグにはそれが備わっている。
●『A Voice Within』(2014)はインストゥルメンタルでなくヴォーカルを入れていましたが、ライヴではどうしているのですか?
今のインターヴァルズのショーは基本的に全編インストゥルメンタルなんだ。だから9月の日本公演では『A Voice Within』の曲はやらないと思う。ただ2016年にアニマルズ・アズ・リーダーズとやったツアーでは、「Moment Marauder」をインストゥルメンタル・アレンジでやったことがあった。ラテン・テイストがあってメロディも気に入っているし、新しいアレンジを加えて多くの人に聴いて欲しかったんだ。今後また復活させるかもね。
<日本でプレイするのは最大のアドヴェンチャー>
●現在の音楽シーンのひとつの潮流となっているEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)についてどう考えますか?ギター・ミュージックとはどのように共存していくでしょうか?
EDMの隆盛は、実はインターヴァルズみたいなバンドにとってプラスになっていると思うんだ。EDMが盛んになったことで、リスナーのインストゥルメンタルに対する抵抗がなくなった。それで多くの人がスムーズにギター・ミュージックに入ってくることが出来るだろう。よくロックが不振なのはEDMのせいだと言われたりもするけど、俺はその逆だと考えているね!
●近年、ギター・ミュージックに対する認知度が上がった実感はありますか?
うん、バンドの初期と今では、ライヴでの反応がかなり異なっている。インターヴァルズの最初のツアーはストラクチャーズ、テキサス・イン・ジュライとやったもので、続いてミザリー・シグナルズ、ザ・カラー・モラルとサーキットした。その頃、最前列のお客さんは腕を組んで「ウーン」という感じだったんだ。ショーの後半になると盛り上がってくれたけどね。でも今では最初からすごい盛り上がりだ。インターヴァルズのショーには凄まじいエネルギーがあるし、激しい動きもあるから、ヴォーカルがないことはハンディにならないんだ。
●『ザ・ウェイ・フォーワード』のジャケット・アートについて教えて下さい。
アートワークを手がけたのはティム・グローヴだ。プリーニとやっているベーシスト、サイモン・グローヴの兄さんだよ。このアートワークでは自分の人生に影響をおよぼした本や映画、ゲームなどをモチーフにしている。チェッカーボードやハリネズミ(注:おそらくソニック・ザ・ヘッジホッグをイメージしている)とかね。それをシュルレアリスム絵画のように額装しているんだよ。それはサルヴァドール・ダリからの影響だな。俺はハイスクールの頃からダリのファンなんだ。
●ジャケット・アートはアナログ盤LPジャケットを模した擦れ跡を付けていますが、アナログ盤への思い入れはありますか?
俺はミレニアル世代だし、少年時代はCDで育って、今はストリーミングで主に音楽を聴いている。だからアナログ盤レコードはほとんど通過していないんだ。最近アナログ盤が再評価されていることは知っているけど、俺自身はあまり持っていない。でも大きなジャケットは魅力的だし、いずれ家を買って置き場が出来たら、いろんなレコードを揃えていくかも知れないよ。
●9月の日本公演について教えて下さい。
来日メンバーはネイサン・ブーラ(ドラムス)とサム・ジェイコブス(ギター)、ジェイコブ・ユマンスキー(ベース)というラインアップだ。サムはジ・アフターイメージに在籍していたことがある。ジ・アフターイメージは最近、日本でプレイしたよね。ジェイコブはペインテッド・イン・エグザイルでも活動している。もう何年も日本に来る機会を待っていたんだ。インターヴァルズのショーは楽しくてエネルギーに満ちている。あまりアレンジを大きく崩すことなく、アルバムの曲をさらにパワフルにしたヴァージョンでプレイするよ。日本を初めて訪れるチャンスにエキサイトしているのに加えて、シンガポールやバンコク、中国本土でもプレイするアジア・ツアーなんだ。その後にはポリフィアと一緒に大洋州を回る。時差ボケがキツそうだけど、ちょっとした冒険の旅に出る気分だよ。日本でプレイするのは、俺にとって最大のアドヴェンチャーなんだ。
(注:時系列に関し、一部翻訳ミスがありましたので訂正いたしました。ご了承下さい。)
後編ではアーロンがそのギター遍歴、そして彼の音楽スタイルのルーツを語る。
【アルバム情報】
インターヴァルズ『ザ・ウェイ・フォーワード』
- Japan Edition
前作『The Shape Of Color』から3曲のエキストラトラックを収録
- Japan Special
海外盤(8曲)分のギター・スコア収録USB付き(限定100セット)
- 輸入盤アナログレコード(限定100枚)
ソニー・ミュージックエンタテインメント 2018年9月5日発売
【来日情報】
INTERVALS Japan Tour 2018
2018/9/17 (Mon)大阪 CLAPPER
OPEN 18:00 START 19:00
Guest Act: paranoid void
2018/9/18 (Tue) 東京 Shibuya WWW X
OPEN 18:00 START 19:00
Guest Act: tricot
ジャパン・ツアー公式サイト
バンド公式サイト
http://www.intervalsmusic.net/
Aaron Marshall Instagram