イスラエル、ホロコースト記念日:犠牲者の追悼は動画をSNS拡散で・新型コロナの影響で
イスラエルのエルサレムにある、ヤド・バシェムは第2次大戦時にナチスドイツによって殺害されたユダヤ人らを追悼するための国立記念館。毎年4月にはヨム・ハショアと呼ばれる、ホロコーストで犠牲になった人々を追悼する休日がある。今年は4月21日。毎年ヨム・ハショアの日には、多くのユダヤ人がヤド・バシェムに集まり、ナチスドイツによって殺害された約600万人のユダヤ人犠牲者に祈りを捧げる重要な行事である。イスラエルではヨム・ハショアの日にはサイレンが2分間にわたって鳴り響き、車に乗っている人も全員が道路に降りてきて、全土でホロコースト犠牲者を追憶して黙とうをする。いつもは喧噪のイスラエル中の町が沈黙する。
だが今年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、イスラエルでは全土で外出自粛が要請されている。そのためヨム・ハショアの日に多くの人がヤド・バシェムに集まることはできない。特にその日は、ホロコースト生存者の高齢者も家族と一緒に多く集まる。イスラエルで新型コロナに感染して初めての死者が88歳のホロコースト生存者だったが、高齢のホロコースト生存者が参集することはリスクも高い。
そこで今年のヨム・ハショアの日には、一般の人は入場できずに、オンラインで追悼記念式の配信を行う。またホロコースト犠牲者の名前を読む動画を15秒以内で撮影して、ハッシュタグ「#RememberingFromHome」「#ShoahNames」を付与してFacebookなどSNSに投稿してほしいとヤド・バシェムは呼びかけている。犠牲者の名簿もヤド・バシェムのサイトで公開しており、15秒で撮影できる範囲で名前を読んでSNSで拡散してほしいと訴えている。犠牲者の名簿は生まれた国、殺害された場所、殺害された年、その時の年齢が記載されている。15秒では読み切れないくらいの大量の犠牲者の名前がある。
ヤド・バシェムの館長のアヴネール・シャレブ氏は「今年はお家からホロコーストの犠牲者を追悼するのに参加してください」と呼びかけている。新型コロナウィルスの影響で、世界中のユダヤ人らがホロコースト犠牲者を追悼する動画を撮影してSNSで拡散するという史上初の試みとなる。ホロコーストの生存者やユダヤ人は現在、欧米やイスラエルに離散して生活しているが、自分の家族の母国の犠牲者を追悼している。今年は犠牲者の名前を読んで動画で撮影してSNSにアップするということで、エルサレムのヤド・バシェムに赴かなくても良いので参加しやすいかもしれない。