4強激突。カギは接点とスクラム…、レフリング。
ラグビーの全国大学選手権の準決勝は来年1月2日、帝京大×早大、筑波大×東海大の2試合が東京・国立競技場で行われる。焦点は、史上初の4連覇を目指す帝京大の戦いぶりだろう。「経験値」の高い王者が、関東対抗戦4位から巻き返しを図る早大の挑戦をどうやって退けるかである。
▽帝京大×早大
「相手は日本ラグビーをけん引してきたチーム。最高の舞台で最高の相手とできる」と、帝京大の岩出雅之監督は言う。帝京大は今季、8月のオープン戦で43-0と早大を圧倒し、11月の対抗戦ではラスト5分の連続トライで37-27と逆転勝ちした。いずれもフィジカルの差を見せ、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)で優位に立った。
ポイントは、帝京大が「リアリズム」に徹することができるかだ。すなわちゲームマネジメント。「これからが本当の勝負」という策士の岩出監督がどんな戦術をとるのかが興味深い。早大の高速ラグビーを封じるためには、やはりFWでボールをキープし、スローなテンポのゲームに持ち込みたい。ボールをはやく動かせば、スピード豊かな早大に翻ろうされる危険性が出てくる。
勝負は接点、とくにブレイクダウンとなる。ここでファイトし、FWの結束力で早大FWを押し崩したい。ディフェンス網を乱した上で、日本代表候補のSO中村亮土やCTB権裕人が縦横に走れば、勝機が膨らむ。ぶ厚いディフェンスは健在である。
ただ昨季と比べると、FW個々の突破力は見劣りする。スクラムもパワーダウンした。そのあたりを固まりとなってどう補うか。フッカーの泉敬主将は「自分たちはチャレンジャーのつもりで、泥臭く、ひたむきにやるのみです。部員全員で戦っていきたいと思います」と結束を強調する。
早大はやっと、調子が上向いてきた。とくに出足と集散、パスの精度、タックルがよくなってきた。個々の身体能力は高く、長身ロックの芦屋勇帆、フランカー金正奎の動きは目を見張る。中づる隆彰、原田季郎の両WTBの決定力も高い。集散力、展開力では相手より上とみる。要はブレイクダウンでボールをタイミング良く出せるかどうかだ。テンポの速さでリズムをつかみたい。
早大は今季、当初から『打倒!帝京大』を目標に掲げてきた。後藤禎和監督は言う。「チームの地力は積み上げられた。真っ向勝負する」と。故障していたエースCTB布巻峻介の復帰は好材料だ。接点勝負。まずは「先手必勝」にかける。
課題は80分間の集中力の継続とゲームマネジメントか。とくにハーフ団のゲームコントロールである。スクラムは3番垣永真之介の奮起にかかっている。
こうやってみると、スローテンポなら帝京大、ハイテンポなら早大が有利だろう。ついでにいえば、ブレイクダウン、スクラムでのレフリングも勝敗に影響を与える。いかに反則を少なくするか。それぞれのチームがレフリーとどうコミュニケーションをとるのかにも注目したい。
▽筑波大×東海大
4チームの中で、FWとバックス、攻守のバランスでは筑波大が頭ひとつ抜けている。国立大ながら、彦坂兄弟(WTB匡克、フッカー―圭克)や主将のFB内田啓太ら好素材が並ぶ。部史上初の対抗戦優勝に続き、大学選手権セカンドステージの戦い方も安定していた。
ただ同ステージ期間中、主力メンバーの大半がノロウイルスなどのウイルス性の胃腸炎にかかった。古川拓生監督は「ほとんどの選手の体重が5キロくらい落ちた。相手が大きな東海さんということで、体調からしっかり準備しないといけない」と言う。筑波大の最大のポイントは体調管理であろう。
コンディションさえよければ、ボールを保持し続ける『ポゼッションラグビー』が冴えるだろう。とくにSH内田啓介がいい。バックスのパススピード、連携は群を抜く。新戦力のWTB福岡堅樹のランもキレを増している。
関東リーグ戦の覇者、東海大のFWは先発メンバー全員が体重100キロ以上とでかい。セカンドステージ最終戦の明大戦の総体重は872キロで平均109キロもあった。しかもよく鍛えこまれている。フィジカルも強いのだ。
スクラム、ラインアウトはもちろんだが、モールの攻防がかぎを握る。とくにゴール前のそれだ。東海大としては、体重差を生かし、FW戦で圧倒し、ゲームの主導権を握りたい。
今季、無傷は東海大だけ。木村季由監督は「うちはどこからもノーマークだったと思いますので、チャレンジャーとして全てを出し切りたい」と無欲さを強調した。実はこの姿勢がこわいのだ。