応募者10年間で45%減、航空管制官採用試験発表
2024年度航空管制官採用試験の受験案内が発表された。今年の募集人数は85名で例年より多い水準といえる。合格後の辞退者数を考慮すれば、昨年度の最終合格者数94名と同程度くらいの合格者が出る可能性は高い。昨年度試験の申込者数は795名で、実際に一次試験を受験した受験者数は418名であった。
10年前と比較すると航空管制官応募者数の落差に驚く。H25年度(2013年度)は申込者数1436名、最終合格者数87名であった。一次試験の受験者数はデータが見つからなかったが、申込者数の比較だけでも2023年度比45%減と歴然の結果である。なお、執筆時点で得られた公表データのうち、最も古いH22年度(2010年度)は申込者数1708名、最終合格者数63名であった。筆者が受験した頃を振り返っても、例年それくらいの人数で違和感はない。つまり、過去1700名前後で推移してきた応募者数がH25年度には1436名に減り、徐々に目減りしながら昨年度ついに795名まで減ってしまったことになる。
航空管制官に限らず若者の人口減の傾向があることは当然の事実であるため、次に受験者のボリュームゾーンである年齢を仮定した出生数の比較を行う。管制官採用試験は短大または大卒以上の30歳までが受験可能であることから、H25年度(2013年度)に24歳であった者を対象とし、1989年とその10年後の出生数がどの程度減っているかを比較する。厚労省公表データによれば、1989年の出生数1,246,802人に対し1999年は1,177,669人で、その減少率は5.5%である。つまり、航空管制官の応募者数減少は、単純な人口減では説明がつかないほどの落差ということだ。
国家公務員の不人気、シフトワークへの敬遠、コロナ禍、TV・インターネットなどを通じて職責の重さが以前よりも知られたことも数字に影響していると考える。当時を振り返ると、航空管制官の情報があまりに少なく、仕事の実態を知ることは困難だったが今はかなりの情報が得られるようになった。また自分自身、航空管制官になってからというもの周りからは、高度な技術が求められること、人命を預かる仕事であること、一言のミスや一瞬の失敗も許されない世界一ストレスが高いと評されていることなどを引き合いにそんな仕事に就くことが信じられないとよく言われたものである。そのような声を聞くほどに、自分が世のためにとって価値あるサービスを提供できていることに充実感を得るとともに、仕事の1日1日が脳内フル回転で一瞬のように過ぎる仕事への愛着が湧いていたのもまた事実だったのだが。
航空管制官採用試験(最新)リンク
https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/jyukennannnai/jyukennannnai_koukuu.pdf