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メーガン妃とハリー王子、「今年の敗者」と呼ばれる。チャリティも赤字

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「The Hollywood Reporter」から「今年の敗者」と呼ばれた(写真:ロイター/アフロ)

 今年の初め、メーガン妃とハリー王子は、2023年は良い年になるという希望を持っていたことだろう。

 ハリー王子の回顧録「Spare」は1月10日に発売され、たちまちベストセラーに。昨年12月にNetflixで配信開始になったドキュメンタリーシリーズ「ハリー&メーガン」もヒットしていたし、Spotifyとポッドキャストの大型契約があった。さらに、春には、ハリウッドの大手タレントエージェンシー、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)が、メーガン妃および夫妻のプロダクション会社アーチウェルと契約を結んだと発表。テレビ、映画の製作、ブランドとのパートナーシップなどのお手伝いをしてくれるとのことで、メーガン妃とハリー王子は、ハリウッドのパワープレイヤーになる夢に大きく近づいたと感じていたに違いない。

 しかし、その後、彼らによる新たなプロジェクトが発表されることはなかった。それどころか、Spotifyからは契約を切られ、Netflixで秋に配信開始した「ハート・オブ・インビクタスー負傷戦士と不屈の魂」もまるでぱっとしないなど、悪いニュースが続くことに。そしてこの1年も終わろうとする今、業界サイト「The Hollywood Reporter」から、今年の敗者と呼ばれることになってしまったのだ。

「2020年、この王室カップルは、公に奉仕する生活を捨て、セレブリティとして金儲けしようとアメリカにやってきた。しかし、不満をたらたら言うだけのNetflixのドキュメンタリー、やはり不満をたらたら言う自伝本(『Spare』というタイトルからしてそうだ)、冴えないポッドキャストの後、ハリーとメーガンの殊勝ぶったブランドのバブルは、弾けるのを待つだけとなった」。そんなところへ、夫妻をパロディにしたアメリカのアニメ番組「South Park」が大受けをするという決定的打撃をくらったのだと、記事は述べる。

「『The World Privacy Tour』というタイトルのあの回は強烈だった。続いてSpotifyから契約を切られた上、トップエグゼクティブから『詐欺師』とまで呼ばれてしまったのである」とも、記事は続ける。

 ハリウッドでの成功を狙っているというのに、業界メディアから敗者判定をされるとは、なんとも屈辱。しかも、それだけではない。その直後には、夫妻のチャリティ、アーチウェル基金への募金が、前年に比べて大幅に減ったという、これまた恥ずかしい事実が明らかになったのだ。

 非営利団体であるアーチウェル財団の確定申告によると、2022年に寄せられた寄付は、100万ドルが2口で、合計200万ドル。2021年は1,300万ドルだったので、1,100万ドルのダウンである。ただし、2021年も、そのうち1,000万ドルは匿名の人物ひとりから寄せられたもので、この人物はオプラ・ウィンフリーではないかと疑われていた。ウィンフリーはこの年、メーガン妃とハリー王子の独占テレビインタビューを自分のプロダクション会社で製作し、大儲けをしている。

 アーチウェル財団の運営コストは260万ドルで、2022年は赤字。これだけ知名度がありながらこの状態というのは、本人たちにやる気がないことと、人々に信頼されていないことの表れだろう。ハリー王子とメーガン妃は、このチャリティから給料を受け取っていないものの、この仕事に費やす時間は週1時間と報告されている。

自分たちの受け止められ方を察知し、対応するのを怠った

 これらを受けて、メディアパーソナリティのジテンダー・セデフは、「Forbes」に寄稿した意見コラムで、ハリー王子とメーガン妃のブランドは「これで完全に終わりだ」と言い放った。夫妻のケースはブランドの失敗についてビジネススクールで教えるための良い題材になるだろうというセデフは、こうなった原因をこう分析する。

「ハリーとメーガンは、さまざまなプロジェクトを通じ、不満をたらたら言い、自己中心的な人柄を見せて、批判を受けていた。ブランドを築いている時、リーダーは、公からどう受け止められているのか、敏感に察知しなければならない。ハリーとメーガンは、イギリス王室から酷い目に遭わされたのか?そうかもしれない。だが、人は、ハリーとメーガンがそれを利用して金儲けをするのを見たいのか?それはたぶん違う。だから反感を買ったのだ」。

 彼はまた、このブランドは約束したものを届けなかったと指摘する。「メディアにたくさん取り上げられても、質の悪い商品やサービスは救えない。メーガン・マークルはSpotifyと2,000万ドルの契約を結んだが、リスナーを集めることはできたか?」。

 ベストセラー本「The Kim Kardashian Principle: Why Shameless Sells (and How to Do It Right)」の著者でもあるセデフは、カーダシアン一家と比較もする。同じように家族を使って金儲けをしたとは言え、カーダシアン一家は自分たちの良いところも悪いところも見せ、時間をかけながらファンの信頼を勝ち取っていった。だから彼らは一大帝国を築き、信頼の欠如したハリーとメーガンは赤字に陥ったのだと、カデフは述べる。

 もちろん、大手エージェンシーのWMEはそれらを十分に理解していて、イギリス王室バッシングは完全に切り離し、新たな形でメーガン妃のブランドを作ろうとしていた。だが、メーガン妃の「非公式スポークスパーソン」とも呼ばれているジャーナリスト、オミッド・スコビーの著書「Endgame」のオランダ語版に、夫妻の長男アーチー君が生まれる前、肌の色についてコメントした王室関係者ふたりの実名が書かれていたことから、またもやこの話題に焦点が当たることになってしまった。夫妻は今もこの件について沈黙を続けているが、WMEは大憤慨をしているとのこと。「契約を切るのではないか」との憶測も聞こえてくる。

 メーガン妃とハリー王子が王室離脱を発表したのは、2020年1月8日。それから丸4年になろうとしてる。その間、夫妻はセレブリティとして注目を集めてきたが、同時に、有名であるというだけではキャリアを築けないという事実を突きつけられてもきた。アメリカでの生活が5年目に突入する2024年、彼らはこの状況をどう舵取りしていくのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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