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俳優、監督を目指す人たちにオリヴィア・ワイルドが贈るアドバイス

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
紅海国際映画祭を訪れたオリヴィア・ワイルド(2024 Getty Images)

[サウジアラビア、ジッダ]ドラマ「The OC」でブレイクし、「トロン:レガシー」、「カウボーイ&エイリアン」などハリウッドの超大作に出演。近年は監督に進出、「ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー」、「ドント・ウォーリー・ダーリン」を送り出したオリヴィア・ワイルドが、紅海国際映画祭でトークイベントを行った。

 両親も、祖父母も、叔父叔母も、いとこもジャーナリスト。エンタメ業界に何のコネもないが、女優になると決めたワイルドは、ワシントンDC の高校を卒業すると、ロサンゼルスに向かった。親族の中で大学に行かなかったのは、彼女だけ。

「両親は私の夢を支えてくれた。だからこそ私はやりたいことを追求できたのだと思う。私は3歳の時から女優になりたいと言ってきた。成長するにつれて、それが本気だとわかったら、両親は『頑張りなさい』と送り出してくれたわ。18歳でロサンゼルスに引っ越すにあたり、私は自分自身に1年の期限を与えたの。それまでに何も得られなかったら、大学に行くと。ハリウッドは厳しい世界だから」

 幸いにも、放映開始以来若者から大人気を得ていた「The OC」の第2シーズンにレギュラー出演が決まる。演じたキャラクターが当時にしては斬新だっただけに、反響はあらゆる意味で大きかった。

「配信が出てくる前の時代だし、私たちの番組は毎回2,700万人が見ていたのよ。今なら地上波はそんな数字を決して稼げない。私が演じるキャラクターがバイセクシュアルだったことに、視聴者はショックを受けた。お相手のキャラクターが黒人男性だったこともあって、恐喝の手紙がたくさん来たわ。今では『ユーフォリア/EUPHORIA』のように、もっとすごいものがどんどん出てきているけれど、当時はそうだったのよ」。

 ワイルドが早々とハリウッド女優に仲間入りしたのは、2004年。今から20年も前だ。今、俳優を目指す人たちにワイルドがアドバイスするのは、待っていないで自分で行動すること。

「オーディションに受かるのを待っているのではなく、自分で何かを作るべき。今やそれができる時代になったのだから。iPhoneでも何でも良い。友達に協力してもらって、自分の強みを見せられる作品を作るのよ。それを映画祭に出品したりね。監督として、私は、自分が監督する映画のキャスティングをするにあたり、そういったものを非常に参考にするわ。オーディションは欠点だらけだと知っているから。オーディションを受ける人は、何が求められているのかを意識するがあまり、その人ならではのものをあえて出さなかったりするの」。

 実際、オークワフィナやハリー・ベイリーもYouTubeがきっかけでハリウッドに足を踏み入れている。そうやって、もし幸運にもブレイクを果たせた場合にも、アドバイスが。

「成功すると、一般の生活から遠ざかってしまうことが多い。それだと、一般人を演じる上で、自分自身の体験を使うのではなく、ほかの映画を参考にして真似をすることになる。有名になったからと言って地下鉄に乗るのをやめるのは間違っているわ。人々を観察するすばらしい機会なのだから。一般社会から距離を置いてしまうと、それが作品に出てしまう。私はいつも、外に出て歩き回るように言っている」。

 一方、監督を目指すもなかなか実現に至らない人たちには、このように助言。

「映画を作ろうとしたことがある人ならみんな知っているだろうけれども、実現するにはすごく時間がかかる。映画を作らせてもらえるというのはミラクルに近い。だから、そのための努力をしている間、何か別のことをやるべき。マーティン・スコセッシだって、合間にドキュメンタリーを作ったりしている。常に物語を語り続けているの。ミュージシャンが楽器の演奏をやめないように、ずっとウォーミングアップしていることが大事よ」。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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