オートバイのあれこれ『レアなバイク発見!』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今回は『レアなバイク発見!』をテーマにお話ししようと思います。
先日、とある知り合いのガレージでひじょうに珍しいバイクを発見しました。
ヤマハのTX750です!
私も存在自体は知っていましたが、実車を目の当たりにしたのは初めて。
TXを生で見られるとは思ってもいませんでした。
知り合いはバイク・クルマ問わず旧車のレストアが趣味のようで、不動のTXを安く買いDIYで直したそうです。
TX750は、日本のバイクメーカーがどんどん発展していく最中の1972年(昭和47年)に登場しました。
1972年といえば、ホンダのCB750FOURやカワサキのZ1(900SUPER4)が出てきたばかりの頃で、4気筒エンジンが最も注目を集めていた時期です。
そんななかヤマハは、同じ大型バイクカテゴリーのTXに並列2気筒エンジンを採用しました。
その理由は、当時のヤマハが“スペック”よりも“親しみやすさ”を重視していたから。
ドリームCBが世界初のナナハンだったように、当時はまだ750ccもあるバイクなんて決して身近な存在ではなく、多くの人にとってはハードルの高いバイクでした。
そして、その現実を鑑みたヤマハは「いくら4気筒マシンが高性能だといっても、その高性能にライダーが尻込みしたり、扱いづらく感じてしまっては意味がない」と考え、TXへは世間的にも馴染みのあった2気筒エンジンを搭載したのです。
結果的に、TXはCBやZほどのハイパフォーマンスや人気を得ることはできなかったものの、ヤマハらしいスリムなスタイリング、狙いどおりの親しみやすさを獲得し、ヤマハはその“周りに流されない姿勢”、“感覚を大切にする設計思想”を世にアピールすることができたのでした。
ちなみに、ヤマハには現在も「人機官能」という開発思想がありますが、これはまさにTXの開発方針そのもの。
数字的なスペックに踊らされず、まずは人(ライダー)と機(マシン)が一体となって乗りやすさや面白さを感じられるようにするという思想です。
TXの開発時にはまだ「人機官能」という言葉自体は無かったでしょうが、その思想の先駆け的存在の一つが、このTX750というバイクなのです。