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JAXA金星探査機「あかつき」が通信途絶 設計寿命を10年以上超え、金星大気の貴重な観測データを取得

金星探査機「あかつき」©JAXA

5月29日、金星探査機「あかつき」との通信が途絶していることがJAXAより発表されました。本記事では、設計寿命を10年以上超えて様々な金星大気に関する科学的成果を創出した「あかつき」について解説していきます。

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■エンジン故障を乗り越え金星周回軌道に到達したあかつき

あかつきフライトモデル©JAXA
あかつきフライトモデル©JAXA

金星探査機「あかつき」は、金星大気の流れや組成を調べるため、2010年にH-IIAロケットにより打ち上げられました。

小惑星探査機「はやぶさ」の帰還は非常に有名なストーリーですが、この「あかつき」のプロジェクトも非常に熱いドラマがありました。あかつきは打ち上げから約半年後に金星の周回軌道に入るはずでしたが、メインエンジンが故障してしまい断念。しかし、ここであきらめず姿勢制御用の小さなスラスタで金星周回軌道に再投入することに挑戦します。このスラスタはメインエンジンの20%しか力が出ません。

あかつき搭載カメラによる金星夜面の画像©JAXA
あかつき搭載カメラによる金星夜面の画像©JAXA

そして、5年後の2015年に再チャレンジし、無事金星への軌道投入に成功しました。そしてあかつきは、金星の大きな謎であるスーパーローテションの解明などに迫り、非常に貴重な観測データを取得することができました。

スーパーローテーションは、金星大気が自転の速さを超えて周回する現象です。金星では、自転の60倍にあたる秒速100メートルで大気が回転していることとなります。そして、あかつき の観測データにより、昼夜の温度で生じる「熱潮汐波」がスーパーローテーションの原因であることを突き止めました。

■通信が途絶しているが、既に設計寿命を5年超過

金星探査機「あかつき」©JAXA
金星探査機「あかつき」©JAXA

ピンチを乗り越え大成功を納めたあかつきですが、5月29日のJAXAの発表によると、4月末から通信が確立できていない状況が続いているとのことです。現在も復旧を目指し運用が続けられています。一方で、あかつきの設計寿命は4年半であり、既に10年以上の期間を超えて運用されていることとなります。

あかつきの復旧を願っていますが、既に多くの科学的観測成果を創出したあかつきと関係者の皆様、長年の運用本当にお疲れ様です。

■あかつきの相乗り衛星「IKAROS」

ソーラーセイル「IKAROS」©JAXA
ソーラーセイル「IKAROS」©JAXA

実は、あかつきと同じロケットで打ち上げられた宇宙機が存在します。

IKAROSは、世界初のソーラーセイルによる加速と、セイルに貼り付けた太陽電池による発電の実証のため、あかつきとともに2010年に打ち上げられました。

ソーラーセイルとは宇宙でセイルを開き、太陽の力だけで進むことのできる夢の無限エンジンを搭載した宇宙機のことです。最初のアイデアは、17世紀にドイツの天文学者のヨハネス・ケプラーにより提案されたと言われています。

今までソーラーセイルは仮説や理論として提唱されていましたが、IKAROSはソーラーセイルによる発電、加速、姿勢制御の宇宙実証に世界で初めて成功します。その力は約0.1gという非常に弱い力ですが、燃料を必要とすることなく宇宙で加速することができました。SFや小説の世界の技術を、遂に現実で実証できたのです。

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