次戦はパッキャオか 元4階級制覇王者マイキーのウェルター級初勝利が意味するもの
2月29日、米テキサス州フリスコ フォードセンター
ウェルター級12回戦
4階級制覇王者
マイキー・ガルシア(アメリカ/32歳/40勝(30KO)1敗)
3-0判定(116-111, 1116-111, 114-113)
2階級制覇王者
ジェシー・バルガス(アメリカ/30歳/29勝(11KO)3敗2分)
マイキーがウェルター級での初勝利
序盤はバルガスのサイズ、ジャブ、左フックに少々手を焼いた4階級制覇王者のガルシアだったが、中盤以降にスキルレベルの違いを見せつけた。
5回に打ち下ろしの右で相手にダメージを与えたガルシアは、追い討ちの右パンチでダウンを奪う。以降も右のタイミングを少しずらして放つ得意のワンツーは効果的な武器であり続け、バルガスに主導権を渡さなかった。
一時はストップ勝ちも有望に思えたが、マニー・パッキャオ(フィリピン)、ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)ともフルラウンドを戦ったバルガスはやはりタフガイ。前戦は150パウンドで戦ったバルガスのサイズ・アドバンテージが大きかっただけに、ライト級あがりのガルシアがKOできなかったのは仕方ない。
エリートとはいえない選手を相手にアピール不足の声も少なくなかったが、経験豊富な元2階級制覇王者を明白に上回っての勝利は意味があるものに思えた。
昨年3月にはエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)に大敗を喫したマイキーにとって、これがウェルター級での初勝利。打たれ強く、それでいてハードパンチャーとはいえないバルガスはテストマッチに最適のファイターだった。そう考えていくと、マイキーは階級最強のスペンスに挑む前に、まずバルガスのようなタイプの選手と一戦はさむべきだったのだろう。
「今回は(スペンス戦よりも)しっかりと身体を作れた」
バルガス戦後にマイキーはそう語っていたが、実際にこの順番を間違えなければ、ウェルター級の水に慣れた上で大一番に臨めたはずだ。その場合には、注目度の高かったスペンス戦はより上質な試合になっていたかもしれない。
パッキャオ戦はサウジアラビア開催?
今戦を組むにあたり、マッチルーム・スポーツのエディ・ハーンは実に700万ドルの高額を提示し、近年はPBC傘下で戦っていたマイキーの強奪をついに果たしたのだという。巨額投資の目的がバルガス戦だったはずもなく、後に続くビッグファイトを睨んでの動きだったことは明白。マッチルームはマイキーの次戦の契約にマッチできる権利を持っており、少なくとももう1戦はこのメキシコ系アメリカ人を起用するはずだ。
「最強の相手と戦う準備は整った。パッキャオか、スペンスとの再戦がしたい」
バルガス戦後のリングでマイキーはそう述べていたが、ハーンとDAZNのターゲットがパッキャオであることはもう周知の事実である。
マイキーがバルガス戦をクリアしたことで、早くも米スポーツ専門メディア「The Atheltic」は「7月11日、サウジアラビアでパッキャオ対ガルシア戦挙行か」と伝えている。この試合が具体化すれば、マイキーはスペンス、バルガスよりも小柄で、それでいて知名度でははるかに上のレジェンドを相手にビッグマネーファイトができる。
一方、加入者増加を目論むDAZNにとってもパッキャオのネームバリューは魅力。大イベント誘致に熱心なサウジアラビア、アメリカでの税金問題ゆえに米国外で試合がしたいパッキャオも異論はないだろう。これだけ条件が整っているのだから、夏頃に実現の可能性は低くないはずだ。
唯一、気になるのは過去2戦、パッキャオをプロモートしたPBCがどう反応するかである。エイドリアン・ブローナー、キース・サーマン(ともにアメリカ)を相手にした2度のPPV興行では、PBCはパッキャオに2000万ドルもの報酬を保証したがために多額の赤字を出したとみられる。
PBCは相変わらずスポークスマン不在のため、そもそもなぜパッキャオとそんな契約をしたのか、契約はあと何戦残っているのか(「あと1戦ある」「もう満了」と諸説ある)、そして、落としどころをどこに持っていこうとしているのかは謎のまま。今後、ハーンとDAZNがパッキャオの獲得を狙ってきた際、PBCがどう動くかがウェルター級戦線の鍵の1つになっていきそうだ。