新型コロナは「祝日」に拡大、なぜ「大阪」の増加率は東京の「8倍」だったのか、京大の研究
新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、感染拡大の様々な要因が考えられるが、京都大学の研究グループが祝日の影響を調べたところ、感染拡大のタイミングや規模などによって地域で感染者の増加率が異なり、特に大阪で格段に大きかったことがわかったという。
緊急事態宣言はどう影響したか
2020年春からの新型コロナの感染拡大は、世界中で人々の生活や経済活動などに大きな影響をおよぼした。各国政府は感染拡大を防ぐため、ロックダウンや移動の制限などの施策を実施し、日本でも緊急事態宣言の発出などが行われた。
こうした外出制限、都道府県間の移動制限が感染拡大を防ぐために効果があることはわかっていたが、パンデミックが長引くにつれ、感染対策疲れ、繰り返される緊急事態宣言、政府のGo toキャンペーンなどが実施されるごとに感染防止の効果が悪くなっていった(※1)。ただ、これまで祝日にどう感染率が変化したのかについて十分な研究はなかった。
そのため、京都大学大学院医学研究科、社会健康医学系専攻のJiaying Qiao氏と西浦博教授の研究グループが、日本の祝日の感染拡大とその程度を評価するため、2020年2月15日から2021年9月30日までの間、北海道、東京都、愛知県、大阪府の4地域で、新型コロナの発生率、人々の移動データ、緊急事態宣言、そして祝日の関係を実効再生産数の感染モデルを使って評価し、その結果を疫学と公衆衛生分野の専門雑誌で発表した(※2)。
その結果、日本国内での祝日が、人々の移動率を増加させたことで新型コロナの感染を拡大させたことがわかった。新型コロナのパンデミック前と比較すると全体的な移動率は低くなったが、祝日中に人々が移動する行動は活発だった。
大阪の人は祝日の影響を受けやすい?
観察期間(2020年2月15日から2021年9月30日)中、北海道では大型連休中の2021年5月5日が新型コロナの発生ピーク(665人)となり、緊急事態宣言が4回発出された東京都では2021年8月7日(5024人)が発生ピークとなっていて、これは東京オリパラの影響と考えられた。愛知県の発生ピークは2021年8月13日(2348人)、大阪府の発生ピークは2021年8月14日(2785人)だった。
この4地域の中で、最も祝日の影響を受けやすかったのは大阪府だったという。大阪府は、他の3地域に比べ、祝日変数(祝日が休みでなくなった場合を仮定した変数)の影響を受けやすく、祝日の影響による感染者数を比べた場合、北海道は580人、東京都は2209人、愛知県は1086人、大阪府は5211人の増加となることがわかった。
また、これを実効再生産数の感染モデルに当てはめて増加率で示すと、祝日の影響で感染が拡大する割合は、北海道が5.71%、東京都が3.19%、愛知県が4.84%だったのに比べ、大阪府は24.82%の増加となる。
同研究グループによれば、この違いは2021年であらわれ、2020年の祝日では大阪府のデータは東京都とそれほどの違いはないという。また、地域の差には、祝日以外の他の要素が影響している可能性もある。
大阪府の祝日の増加率が、突出して高かった理由には何が考えられるのだろうか。同研究グループの論文では、はっきり示されていない。
これは筆者の想像だが、大阪府の対策が祝日の人出を考えないものだったのかもしれないし、大阪の人々は規制慣れしやすく、祝日になると外出したり移動しがちであり、それが大阪の感染拡大に寄与したのかもしれない。
同研究グループは、今後の追加研究が必要としつつ、日本の場合、祝日が感染症の感染拡大に重要な役割を果たしていると考えられ、これらの知見を将来の公衆衛生上の感染防止策に生かすことが重要としている。
※1-1:Cyrus Ghaznavi, et al., "Inter-prefectural Travel and Network Connectedness During the COVID-19 Pandemic in Japan" Journal of Epidemiology, Vol.32(11), 510-518, 2, July, 2022
※1-2:Kenichi Kurita, et al., "COVID-19, stigma, and habituation: evidence from mobility data" BMC Public Heath, 23, Article number: 98, 13, January, 2023
※2:Jiaying Qiao, Hiroshi Nishiura, "Public holidays increased the transmission of COVID-19 in Japan, 2020-2021: mathematical-modeling study" Epidemiology and Health, 2024; e2021025, doi.org/10.4178/epih.e2024025, 22, January, 2024