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SPY-6搭載イージス艦は2000億円なのにSPY-7搭載イージス艦が2400億円するのは何故か?

JSF軍事/生き物ライター
ロッキード・マーティン社よりSPY-7レーダー。小型のフリゲートにも搭載可能

 見直しが行われているイージスアショア配備計画はイージス艦2隻の建造で代替される公算が高くなっています。代替案となるロッキード・マーティン社製の新型レーダーSPY-7を搭載する新型イージス艦は1隻2400億円(2隻4800億円)という導入経費の見積もりが伝えられており、これはイージスアショアの見積もり1基1200億円(2基2400億円)のちょうど2倍になります。

イージスアショア2019年時点の見積もり

  • 導入経費1基1202億円(2基2404億円)
  • ライフサイクルコスト4389億円(2基分、30年運用)
防衛省よりイージスアショア配備について説明資料(2019年5月28日)
防衛省よりイージスアショア配備について説明資料(2019年5月28日)

[PDF資料]イージスアショア配備について説明資料:防衛省(2019年5月28日)

イージスアショア2018年時点の見積もり

  • 導入経費1基1340億円(2基2679億円)
  • ライフサイクルコスト4664億円(2基分、30年運用)
防衛省よりイージス・アショアの構成品選定結果について(2018年7月30日)
防衛省よりイージス・アショアの構成品選定結果について(2018年7月30日)

[PDF資料]陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)の構成品選定結果について:防衛省(2018年7月30日)

SPY-6搭載イージス艦は2000億円なのにSPY-7搭載イージス艦が2400億円するのは何故か?

 2019年の見積もりにあるイージス艦1隻2000億円とは、レイセオン社製SPY-6レーダーを搭載する予定のアメリカ海軍イージス駆逐艦「アーレイ・バーク級フライト3」の導入経費です。一方でイージスアショア用のロッキード・マーティン製SPY-7レーダーを転用する日本の代替イージス艦は1隻2400億円です。SPY-6とSPY-7は会社は違いますが同レベルの技術を用いた同世代のレーダーであり、性能はほぼ同等の筈です。この価格差は一体どういうことなのでしょうか?

 導入経費の高額化はSPY-7レーダー搭載のためにイージス艦を大型化する必要があるためと伝えられていますが、SPY-7はモジュール式構造でパネル面積は船体の大きさに合わせて幾らでも変更できるはずです。実際にSPY-7の搭載を予定しているカナダ海軍とスペイン海軍の次期フリゲートは日米のイージス駆逐艦より小型です。

これは、このSPY7型のレーダーのLRDR、これアラスカにあるようなこういう大きなもの、これをSPY7型に小さくすると。大体一辺が5メーターぐらいのものがSPY7です。小さくする。小さくすると能力は当然小さくなるに決まっているんですよ、レーダーですから、素子が少なくなりますから、大きさ小さくすれば。SPY6は一辺が四メーター。こういうものを洋上でやっぱり比較しないといけない。洋上の場合、仮に船に載っける場合、5メーターを載っけるのと四メーターを載っけるのでは船の大きさが違ってくるんですよ。当然、大きなものをレーダーそのまま載せようと思えば、それは船が大きくなりますから、それに対するいろんな附帯する装備も大きいものが必要になる。

出典:参議院議員 佐藤正久オフィシャルブログ(2020年11月20日)

 SPY-7が一辺5m。これはどういうことなのでしょう? SPY-7は元々、LRDRというより大型のレーダーを小型化したものです。大きさは自由に変更可能なのに、なぜ既存のイージス艦用よりも大きな5mというサイズなのでしょうか? ※既存イージス艦用SPY-1Dレーダーは一辺約3.66m(12フィート)

 レイセオン社製SPY-6もモジュール式構造でRMAと呼ばれるモジュール1つの大きさは約60cm(2フィート)、アーレイ・バーク級フライト3用にはレーダーパネル1枚あたり37個のモジュールを積み上げて、1辺の最大長さは426cm(14フィート)です。ロッキード・マーティン製SPY-7のモジュールはより小さく、やろうと思えば更に細かくサイズ指定に対応できるはずです。それにも拘らずレーダーが大きいので船体を大きくすると説明するのであれば、二通りの理由が考えられます。

  1. ちょうどよい機会なので大型レーダーを積む大型イージス艦が欲しくなった海上自衛隊の希望
  2. イージスアショア用SPY-7が従来イージス艦には積めない大きさで注文済みで変更したくない

 理由が1番ならば率直にその動機を説明してもらえれば問題ありません。従来のイージス艦のサイズなら1隻2000億円で済む導入経費が1隻2400億円と高額になりますが、国防にどうしても必要だというなら一定の理解を得られるでしょう。

 しかし2番が理由なら説明としては納得することはできません。モジュール式で大きさ変更に対応できる製品なのですから船体の大きさに合わせて変更ができるはずです。SPY-7のままでも大きさ調整は可能です。それでもしたくないというのであれば、むしろSPY-7をキャンセルしてSPY-6に買い直すべきという要求が強まっても仕方がないでしょう。

 一体どのような理由で代替イージス艦の船体を大型化しないといけないのか、防衛省には理由の詳細な説明が求められます。

レーダーパネル一辺あたり大きさ比較

  • SPY-1D・・・約3.66m(12フィート)。アーレイ・バーク級など
  • SPY-1K・・・約2.44m(8フィート)。フリチョフ・ナンセン級
  • SPY-6(V)1・・・約4.26m(14フィート)。RMA37個。アーレイ・バーク級フライト3
  • SPY-6(V)2・・・約2.74m(9フィート)。RMA9個。サン・アントニオ級フライト2
  • SPY-6(V)3・・・約2.74m(9フィート)。RMA9個。コンステレーション級
  • SPY-6(V)4・・・約3.66m(12フィート)。RMA24個。旧型アーレイ・バーク級改修用
  • SPY-6???・・・約5.48m(18フィート)。RMA69個。大型レーダー搭載BMD艦提案
  • SPY-6???・・・約6.09m(20フィート)。アメリカ海軍が将来BMDで要求した性能
  • SPY-7???・・・約5mという情報。詳細不明。日本イージスアショア代替イージス艦

※アーレイ・バーク級は4.26m(14フィート)まで搭載可能

※SPY-6のRMA(Radar Modular Assembly)は約61cm(2フィート)四方

※SPY-7のモジュール、SAS(Sub-Array Suite)は高さ20cm、幅14cm、奥行き56cm ※石川潤一氏形状

※BMD:Ballistic Missile Defense.(弾道ミサイル防衛)

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※更新:当記事タイトルを「イージスアショア2基2400億円、代替イージス艦2隻4800億円で2倍の費用」から「SPY-6搭載イージス艦は2000億円なのにSPY-7搭載イージス艦が2400億円するのは何故か?」に変更。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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