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日本ラグビーはずっと変わっていない? オールブラックス親日コーチの見解は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
両軍が最後に戦ったのは2018年。ボールを持つ福岡堅樹はすでに引退(写真:アフロ)

「オールブラックス」の愛称で知られるラグビーのニュージーランド代表が現在、来日中。10月29日、東京・国立競技場で日本代表と激突する。

 24日には到着後初の練習を実施。アシスタントコーチのスコット・マクラウドが会見した。

会見するマクラウド(筆者撮影)
会見するマクラウド(筆者撮影)

 現役時代に自らもオールブラックスとなったことがあるマクラウドは、日本と縁が深い。

 2002年度に東芝府中(後の東芝ブレイブルーパス、現東芝ブレイブルーパス東京)へ入り、引退するまでの9シーズンを過ごした。05年の国内トップリーグではシーズンMVPとなるなど活躍した。

 コーチに転身後は、母国ハイランダーズのアシスタントコーチを歴任している。当時のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは現日本代表指揮官。ともにアシスタントコーチを務めたトニー・ブラウンアタックコーチも、ジョセフ率いるジャパンに携わる。

 今回の会見では29日への展望に加え、日本ラグビー界および日本代表に関する独自の見立ても語っている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——日本代表戦の位置づけは。

「今回のツアーでは、全部で4つの大きな試合がある(日本代表、ウェールズ代表、スコットランド代表、イングランド代表と対戦)。ひとつひとつのゲームが、異なる戦い方のできる機会を与えてくれる。

 日本代表戦で何が待っているか…。日本代表は、スピードがあり、スキルが高く、積極的にボールを使うスタイルを用います。それが私たちにとっての大きなチャレンジです。選手によっては実戦から間が空いている場合もありますが、それをキャッチアップし、自分たちもファストラグビーをしなくてはいけない」

——日本代表のスタッフには、ハイランダーズで一緒にコーチをしていた方が多いと思います。例えば、トニー・ブラウンアシスタントコーチや同コーチの作る攻撃への印象は。

「彼とはハイランダーズで一緒に仕事をしました。彼のスタイルは理解しています。それが日本代表によく現れている。スキル、ゲームマネジメントの面が向上していて、それが見られたのが今夏のフランス代表戦、直近の対オーストラリアAの3連戦です。特にその最終戦では、相手にいいプレッシャーを与えていました。私たちはそれにリスペクトを示しながら、相対していかなければいけない。自分たちもスキル、スピードを適応させなければいけない」

——今夏より、ニュージーランド代表に元アイルランド代表指揮官のジョー・シュミットアシスタントコーチが加わりました。シュミット氏は、日本代表との対戦経験が豊富でもありますが。

「ジョーはニュージーランド、さらにヨーロッパのラグビーに関しても広い知識を与えてくれる。オールブラックスに広い視野をもたらしています。それは彼がオールブラックスを倒そうとしていたからであり、我々の強み、弱みもわかっている。その知識を用い、特にアタックの面で尽力してくれます。日本代表についても、私と一緒にあらゆる側面で情報収集にあたっています。これは今回に限ったことではないですが、彼は細かく、細かく対戦相手やゲームの要素を見ていき、それをかみ砕いて選手、コーチに伝えています」

——ご自身がプレーしていた頃と比べて、日本代表や日本のラグビーはどう変わっていますか。

「実は、日本ラグビーの特徴は自分がいた時とあまり変わっていません。それは、自分たちのやりたいと思う形を追求し、フルコミットする姿です。また、日本代表の特性はスピードとスキルのレベルです。その特性を活かすことに長けているという意味でも、かつてといまとで大きな変化はないと見ています。ただ、その点によりハイレベルにコミットメントしている。いまの日本代表はそう見受けられます。素晴らしいことだと思っています」

 ラグビー日本代表は長らく強豪国の後塵を拝していたが、2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝。続く2019年の日本大会では初めて8強入りしている。そのため、この国について聞かれる海外出身者は総じて「進歩」を口にする。

 しかし、日本に近しいマクラウドは、自身の皮膚感覚に基づき「大きな変化はない」と見るのである。

 スタイルを全うしようとする心構え、速さや技術といった強みを活かそうとする姿勢は、ワールドカップで複数の白星を重ねる前から見られていたという。

——最後に。最近、ニュージーランド代表選手が「サバティカル」という国内制度を使って1シーズン限定で来日するケースが増えています。その間、当該選手はニュージーランド代表には入れないことになっています。これは同国代表の選手選考にどう影響しているか。

「サバティカルを使う選手では、ヨーロッパに行く選手よりも日本に行く選手の方がニュージーランドで長くプレーするように見受けられると学びました。逆に、ヨーロッパに行く選手はそのまま戻ってこないことが多いような。

 それを踏まえ、選手とともにどんなマネージメントをしていくべきかを考えなければいけない。

 選手は色々な経験がしたいと思っている。違うスタイルのラグビー、違う文化を味わいたいと思っています。ただしいったん、選手が離れると、その代わりに次の選手が(ニュージーランド代表に)加わってきます。そのため国外へ出る選手は、(帰国後に)もう一度オールブラックスへ戻るための努力をして激しい競争を続けるのか、海外経験を優先するのか、自分で決断をしなければならない」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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