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「ハリポタ」ハグリッド役のロビー・コルトレーン天国へ。「子供の頃、いつも空を飛べたら…と夢想してた」

斉藤博昭映画ジャーナリスト
シリーズ1作目『賢者の石』で共演のT・フェルトン、E・ワトソン、R・グリントと(写真:ロイター/アフロ)

「ハリー・ポッター」の世界を頭の中でイメージしたとき、もちろん主人公ハリーの姿や、親友のハーマイオニーやロン、妖精のドビー、敵役のヴォルデモート、あるいはスネイプ先生……など、いくつもの顔が浮かんでくるが、中でもハリポタの世界を代表する存在として忘れがたいのは、あの巨体のルビウス・ハグリッドだろう。

ホグワーツ魔法魔術学校の森の番人として暮らし、魔法生物にも詳しく、ハリーら子供たちとは深い絆で結ばれ、時にはメンター(指導者)としての役割も果たす。

1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』で強烈なインパクトで登場して以来、映画シリーズ全作で活躍。回を追うごとにその出番は少なくなったものの、ハリーが窮地に陥っても「この人がいる」という安心感を与える存在だった。演じたロビー・コルトレーンも、まさにハグリッドそのものという魅力。近くにいる人を無意識にホッとさせる才能があるようで、原作者J・K・ローリングが希望したキャスティングでもある。

10/14、そのロビー・コルトレーンが亡くなった。72歳だった。ハグリッドを演じ始めたのは、50歳の頃で、そこから10年間、ハリポタの世界に俳優人生を捧げたことになる。

コルトレーンは身長185cm。体型もハグリッドそのものの巨体。

1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』の会見では「子供たちがハグリッドだと思って駆け寄り、抱きついてくる。それがめちゃくちゃ変な体験だった」と笑いながら語っており、2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では「まだ奇妙な感じだけど、若い世代は僕をハグリッドとしてしか見てくれないから、お行儀よく受け入れて、きちんと対応することにした。愛される巨人でいなくちゃね」と、茶目っ気もまじえて答えつつ、当たり役を得た喜びと戸惑いも滲ませていた。

ハグリッドへのアプローチは「半分巨人なのでダークサイドを持っている。1作目から2作目への変化は、その暗黒面をどう表現するかが重要だった」とのこと。そのアプローチが、最終話まで続く。

子役たちとの撮影現場については「まさに悪夢だよ」と冗談めかして話しながら、自身の子供時代を聞かれると、やや神妙な表情でこんなことを告白した。

「僕はあまり学校が好きではなかった。厳しい学校に通い、規律にきちんと従うことが何よりも重要だったからだ。当時いつも思っていたのは『空を飛びたい』ということ。日曜の朝に空を飛んで好きな場所へ行けたら、どんなに素敵だろう……ってね。『秘密の部屋』で車が飛ぶシーンがあるが、あんな風に飛びたかったんだ。厳しい学校だから、魔法を使って姿を消すのもクールかもしれないが、消えている間はみんなと一緒に行動できないし、反応することも不可能。だから飛ぶのが最高だと思っていた」

今、その言葉どおりに空へと飛び立ってしまったロビー・コルトレーン。

俳優としての最後の出演作は、2019〜2020年のTVシリーズ「Urban Myths(都会の伝説)」で、あの名匠、オーソン・ウェルズを演じていた(まさにイメージがぴったり!)。同シリーズには「ハリポタ」ロン役のルパート・グリントも出演している。

イギリス、グラスゴー美術学校で絵画や映画を学んだロビー・コルトレーンは、イギリスを代表するコメディ俳優となり、TVドラマのミステリー「心理探偵フィッツ」では主人公を任された。そして「ハリー・ポッター」以外にも「007」シリーズ2作に出演。イギリスが世界に誇るフランチャイズの両方で活躍した俳優として、いつまでも多くの人の記憶に残ることだろう。

2016年、イギリスのTVシリーズ「National Treasure」の撮影現場にて
2016年、イギリスのTVシリーズ「National Treasure」の撮影現場にて写真:Shutterstock/アフロ

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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