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吉田優利も負けた?韓国の賞金女王イ・イェウォンのスゴさとは…愛称は“パーフェクト”と“メンタル”

金明昱スポーツライター
昨年韓国ツアーで3勝して3冠を獲得した21歳のイ・イェウォン(写真・KLPGA)

 韓国女子ゴルファーのイ・イェウォンのことを初めて知ったのは、2019年に宮崎県で開催された日本・韓国・台湾のアマチュア選手の3ヵ国対抗戦「ネイバーズトロフィーチーム選手権」だった。

 ホスト国の日本としては負けられない試合でもあったわけだが、当時の日本女子メンバーは米ツアーでプレーする吉田優利を筆頭に、21年のプロテストに合格した後藤未有、小倉彩愛、21年4月のオーガスタナショナル女子アマチュア選手権」を制した梶谷翼と豪華な顔ぶれだった。

 韓国のナショナルチームも精鋭揃いで、当時のエースがイ・イェウォンだった。彼女は個人戦で3日間、一度も首位を明け渡すことなく優勝。韓国女子は団体戦で優勝しているが、2位の日本に12打差をつけての圧勝だった。

 正確無比なショットで隙のないゴルフをするとの評判が広まり、プロ入り後も間違いなく成功すると言われた逸材だった。

飾りではなかった韓国ツアー賞金女王の肩書き

 そして今週開催の女子ゴルフのメジャー「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」。ここに出場している韓国4選手の中で、もっとも成績がいいのがイ・イェウォン。大会2日目を2位タイでフィニッシュし、トップとは1打差で優勝争いに食い込んでいる。

 昨季の韓国ツアーで3勝して賞金女王、KLPGA大賞、平均ストローク1位の3冠の実力は飾りではないようだ。2021年にプロ入りし、2年後の20歳で頂点に立った。それが決してマグレではないのは、今季も韓国ツアー開幕から2戦目で優勝を手にし、2年連続の女王タイトル獲得に向けた戦いに挑んでいる。

 22年のルーキーイヤーこそ優勝はなかったが、この年も2位が3回、3位が3回を含むトップ10入り13回で賞金ランキング3位。当然ならが新人賞も受賞している。

「うさぎのようにかわいくてもゴルフは恐ろしい」

 彼女の持ち味は精度の高いドライバーとアイアンショット。昨季のフェアウェイキープ率は79.1567パーセントの11位。パーオン率が74.8792パーセントの4位。平均ストロークは70.7065の1位。ここ一番での集中力の高さとメンタルの強さが売りで、大会前には「優勝を考えすぎるとうまくいかないので、1ホール1ホールを大事にプレーしてベストを尽くしたいです」と語っていた。

 21歳とは思えない落ち着いた雰囲気だが、見た目はまだどこかあどけなく、体もそこまで大きいとは言えない。

 そんな彼女の愛称は「パーフェクトバニー」。ファンがつけたのだが、見た目はうさぎのように小さくてかわいらしいが、コース内に入れば恐ろしいほどに完璧なゴルフをするという意味だそうだ。もう一つ、「メンタルクイーン」とも呼ばれているが、これもミスしても動じない落ち着いたメンタルが、彼女の強さの一つでもあるからだ。

「メジャーはコース設定が難しいので、守りに徹することが基本」。残り2日の決勝ラウンドも抜かりのないプレーで、日本選手の前に立ちはだかる。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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