【NHL】ドラフト1位指名の日系人カイラー・ヤマモトにWHL(ジュニアリーグ)のチームへの降格通告
6月にシカゴで行われた「NHLドラフト」で、エドモントンオイラーズに1巡目(全体22位)指名された日系人選手のカイラー・ヤマモト(FW・19歳)
身長173センチと小柄なため、「NHLで通用するのか?」と疑問視するメディアも少なくありませんでしたが、7月初旬にルーキー資格のある選手らを集めたプロスペクト キャンプや、ジュニアの国際大会などでアピール。その甲斐あって開幕ロースター入りを果たしました。
▼NHLデビューを飾るも・・・
本人と同じく身長173センチながら、主力FWとして活躍し続けているタイラー・ジョンソン(27歳・タンパベイライトニング)の母親に、2歳の頃からスケーティングを教わっていた縁もあり、同郷の先輩FWに続け!と、ヤマモトは開幕から奮起。
しかし、昨日(現地時間)昨季までプレーしていたジュニアリーグ(WHL)のスポケーンチーフスへの降格通告を受けました。
ヤマモトの成績は、開幕から9試合に出場して、アシスト3。滞氷時の得失点差マイナス2。1試合(=60分間)の平均滞氷時間18分44秒。初ゴールは今後にお預けとなってしまいました。
▼ヤマモト降格の二つの理由
エドモントンがヤマモトに降格通告がしたのには、二つの理由があります。
一つは「チームの成績不振」
昨季のハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)を受賞したコナー・マクデイビッド(FW・20歳)を筆頭に、若手を中心に有力な選手が揃うとあって、開幕前に優勝候補の一角に数えられていたエドモントンですが、ここまで13試合で勝点9ポイント。
NHL全31チームの中で、開幕から11連敗を喫したアリゾナコヨーテスの次に勝点が少なく、「30位」に低迷しています。
最大の要因は「得点力不足」で、1試合平均2.31得点は31チーム中、最低の成績(昨夜の試合開始前の時点)。
マクデイビッドのハットトリックで開幕戦に快勝したのは幻だったのか!? という声が聞こえてきそうなほど、深刻なオフェンス力不足に陥っています。
ところが、このオフェンス力不足が、ヤマモトにとって追い風に!
得点力不足解消へ向けて、トッド・マクレラン ヘッドコーチが攻撃力の高い選手が揃うFWライン(=センターと左右のウイングの3人で組む)にヤマモトを抜擢した試合も見られました。
しかしヤマモトは、結果を残してアピールすることができなかったのです…。
▼サラリーキャップが大きなカギに
もう一つの理由は「サラリーキャップ」(チーム年俸総額上限)です。
6月12日に配信した記事で紹介したとおり、NHLでは必ずサラリーキャップの上限と下限の間に、チームの年俸総額を収めなければなりません。
その一方で、18歳で契約を結んだヤマモトは、3季目までの間「エントリーレベル契約」となります。
日本の企業に例えて分かりやすく言えば、正社員になる前の試用期間と同様で、これはチーム側が大きなリスクを背負わないようにするのが目的です。
前術したマクデイビッドも、7月に「来季からの8年総額1億USドル(およそ114億円=キャップヒット額)」の超大型契約を結びましたが、3季目の今季まではエントリーレベル契約のため、年俸は「92万5000USドル(およそ1億535万円)」に抑えられています。
▼10試合までならOK
NHLの規定では、エントリーレベル契約を結んだ年の9月15日時点で、18歳または19歳の選手の上に、年間10試合(レギュラーシーズン&プレーオフ)以内の出場であれば、同様の契約を翌年にも継続させることが可能で、ヤマモトのように18歳で契約を結んだ選手は、最大3季にわたってエントリーレベル契約でのプレーが認められています。
このルールの利点は、限られたサラリーキャップの中で試合に出場できる選手が増えること。
中心選手と比べてサラリーの低い選手が戦力になってくれれば、高額年俸のスター選手をサラリーキャップを気にせず起用することができるようになるため、チーム全体で見れば大きなプラスなるのです。
逆に選手の立場から見れば、年俸の低いプレーヤーはサラリーキャップとの兼ね合いを受けることが少なくなくなることから、NHLへ昇格する機会が巡ってくる可能性も高まります。
それだけに9試合だけの出場に終わったヤマモトへ、来季以降も含め再びエドモントンから声が掛かるチャンスも!
スポケーンは、おらが街のヒーローが戻ってくるとあって、大いに盛り上がっている模様ですが、、、
ヤマモトの胸の内は、再びエドモントンへ昇格するために、格が違うと呼ばれるような大活躍を期しているに違いありません。