都市場問題プロジェクトチーム 築地のリノベーション案を7年間400億円から800億円で提案へ
東京都の築地市場の豊洲移転問題について話し合う市場問題プロジェクトチーム(市場PT、小島敏郎座長)は、29日午後に予定されている会議で、築地のリノベーション案を提案する。平成15年に約3400億円で20年かかると試算され頓挫したかつての再開発型の整備案とは違い、市場敷地内の建物や配置を活用をしながら最小限のリフォームを行うプランで、整備期間は7年、事業費は400億円から800億円と見積もっている。市場PTの独自案として試算した。
市場PTの委員によると、今回、市場PTが公表する築地のリノベーション案は、小島座長がこれまで何度も「家主の責任」と強調してきた築地の本格的な修繕や耐震化工事に加えて、市場用の施設の新設も行う。さらに、国が食品衛生管理の国際的基準であるHACCP(ハサップ)の導入を2020年の東京オリンピックに向けて国内の全事業者に義務化する流れであることにも考慮し、市場内の業者が対応しやすいよう、外部からの害獣や害虫の侵入を防ぐ手立ても考える。
また、築地市場のリノベーションには、土壌汚染対策法上で定められた範囲の「土地の改変」を伴うことから、敷地内の地歴調査を行い、土壌汚染が明らかになれば土壌を掘削して入れ替える計画だ。
また、市場PTは、豊洲市場に移転した場合の事業継続性を話し合った前回1月14日の会議で、中央卸売市場会計(11市場の合計)が約100億円の経常赤字となることが明らかになったが、今回、その赤字額を約150億円に上乗せして修正する予定だ。前回、都が市場PTの委員からの指示で初めて算出したライフサイクルコスト(建設から解体までの建物にかかる総費用)には、設備の大規模更新費や解体費用などの項目が含まれおらず、少なく見積もられていたことが要因とみられる。
先週末の24日、「築地継続は豊洲移転よりコストかさむ 都が試算」という記事によれば、豊洲市場に移転した場合の77億円に対して、築地で営業を続けた場合のコストが少なくとも84億円となるという試算結果があるとNHKが報じた。今日の市場PTで公表されれば、都側の試算と市場PTの委員側の試算との間に乖離が生じることになり、試算の正確性についての確認の行方が注目される。
折しも、小池百合子都知事は24日の定例会見で、「市場のあり方戦略本部」を設置し、豊洲市場移転問題が11市場全体に及ぼす影響や経済合理性について議論を深めることを表明した。小池都知事就任からこれまで、築地市場の豊洲移転にの妥当性について論じてきたのは、市場PTや土壌汚染にの問題を取り上げる専門家会議など、外部の識者らによる私的諮問機関ばかりだったが、初めて都庁内部に会議体が設置しガバナンスを示す予定だ。
都議会の3月の定例議会の日程も終盤となり、政治の舞台での築地市場の移転問題の議論は一段落した。都議会自民党が全ての常任委員会で築地市場にまつわる諸問題を取り上げたことの影響からか、築地市場で働く業者の動きもそれぞれの思惑ごとに慌ただしくなってきた。
21日には、築地市場の水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合(東卸組合)が、築地市場への風評被害を懸念や3日の石原慎太郎元都知事による「築地の人たちは生殺し」といった発言に対する反論などを盛り込んだ、所感を全組合員に配布。29日には早速築地市場協会の伊藤裕康会長が都庁を訪れ、議論のための材料は揃ったとして、豊洲市場への早期移転を求めた。また、30日にも築地市場の女性経営者でつくる団体らの都庁内での会見が予定されている。
(理解不足により不正確な部分があり、一部訂正しました 22:19)