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ここ3年に防御率4.50前後が2度の先発投手に7年1億7200万ドルは払いすぎなのか、妥当なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
アーロン・ノラ(フィラデルフィア・フィリーズ)Oct 23, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 フィラデルフィア・フィリーズが、アーロン・ノラと再契約を交わしたようだ。ESPNのジェフ・パッサンらが、7年1億7200万ドル(2024~30年)で合意に達し、身体検査が済めば締結、と報じている。

 ノラは、30歳の先発投手だ。来年の6月初旬に31歳となる。2014年のドラフトで、フィリーズから全体7位指名を受け、翌年の夏にメジャーデビューした。2019年2月に4年4500万ドル(2019~22年)の延長契約を交わし、昨オフは、その契約についていた1600万ドルの球団オプションを行使された。

 2021年以降のシーズン防御率は、2021年が4.63、2022年が3.25、2023年は4.46だ。直近の3シーズンに、防御率4点台半ばのシーズンが2度ある。3シーズンのトータル防御率4.09は、このスパンに450イニング以上の38人中24位。15番目に高い。

 総額1億5000万ドルの契約を得た投手は、以下のとおり。報道のとおりであれば、ノラの7年1億7200万ドルは11番目に多く、野手を含めても、トップ50にランクインする。

筆者作成
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 だが、高額ではあるものの、高すぎるとは思わない。

 ここ3シーズンの奪三振率10.25と与四球率1.76とFIP3.31は、38人のなかで、それぞれ、7位と2位と7位に位置する。FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。

 また、ここ3シーズンとも、ノラは、32試合の先発マウンドに上がり、180イニング以上を投げている。計579.1イニングは、このスパンの3位だ。サンディ・アルカンタラ(マイアミ・マーリンズ)の619.0イニングとゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)の591.0イニングに次ぎ、コービン・バーンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ)の562.2イニングとザック・ウィーラー(フィリーズ)の558.1を凌ぐ。

 ウィーラーは、2019年のオフにニューヨーク・メッツからFAになり、5年1億1800万ドル(2020~24年)の契約でフィリーズに入団した。ここ3シーズンに防御率3.08とFIP2.86のウィーラーが1年後にFAということも、ノラと再契約を交わした理由の一つに挙げられる。

 さらに遡っても、2017年以降、ノラが規定投球回に届かなかったシーズンは、一度もない。7シーズン連続の規定投球回以上――短縮シーズンの2020年は60イニング以上、他のシーズンは162イニング以上――は、コールと並び、継続中では最も長い。

 なお、兄のオースティン・ノラは、先日、サンディエゴ・パドレスにノンテンダーFAとされた。こちらは、控え捕手。今シーズンの年俸は、235万ドルだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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