東日本大震災直後の「三春桜」 行くことが支援に
赤坂サカスの三春桜
東京都港区の赤坂サカスに早咲きの三春桜があります。
この三春桜は、国の天然記念物で、日本三大桜の1つとして知られている、福島県三春町に所在する樹齢推定1000年を超えるベニシダレザクラの巨木(三春滝桜)の子孫樹です。
ちなみに、日本三大桜は、「三春滝桜」、「根尾谷の淡墨桜」(岐阜県本巣市)、「山高神代桜」(山梨県北杜市)とされています。
赤坂サカスの三春桜は、サカス付近で真っ先に春の訪れを主張する存在で、平成24年(2012年)からTBSウェザーセンターではこの桜が咲いた日(五輪以上開花)を記録しています。
これによると、https://news.yahoo.co.jp/byline/moritamasamitsu/20200310-00167023/三春桜が咲いてから7〜8日もすれば、東京と千代田区の靖国神社でソメイヨシノが開花する、つまり、東京でさくらの開花の発表を迎えるということです。
令和2年(2020年)は、3月3日に赤坂サカスの三春桜が開花していますので、3月11日に東京でさくらが開花と言うことになりますが、11日の段階では、まだ開花はしていません。
3月11日には東京で今季最高となる21.4度を観測し、12~13日も、日本海北部の低気圧に向かって、南から暖気が北上する予報です(図1)。
さくら開花の定義は、標本木(観察する対象の木)で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日です。
3月11日の段階で、靖国神社の標本木でさくらが一輪咲いており、そろそろ咲きそうな花芽も数輪あります。
気温も高めに経過しますのでので、東京のさくらの開花も秒読みです(図2)。
もし、12日に開花すれば、平年より14日早く、統計がある昭和28年(1953年)以降、最も早い開花となります。
福島県三春町
「三春」には、3度の春ということから「3年」の意味と、初春・仲春・晩春から「春の3ヶ月」の意味もありますが、福島県三春町の「三春」は、春にうめ、さくら、ももの花が一時に咲くことに由来するとされています。
気象庁では、さくら開花の観測のほかに、うめの開花やももの開花などの観測を行っています。
ただ、さくらの開花については、全国的に行われていますが、うめの開花とももの開花も観測をしている地点はそれほど多くありません。
表は、少ない観測地点の中から、山形、福島、和歌山の平年値を示したものです。
傾向として、うめの花が咲いたあとに、さくらやももの花が咲きますが、北国になればなるほど、高地になればなるほど、これらの開花時期が接近してきます。
ほぼ同時に咲くのが、福島県の山間部の三春町ということでしょうが、現在は、温暖化の影響で、三春町でも開花時期に差があるようです。
東日本大震災での風評被害
平成23年(2011)年3月11日に発生した東日本大震災により、「三春滝桜」は小枝が数本折れたものの、大きな損傷はありませんでした。
しかし、東京電力福島第一原発から西、約50キロメートルに位置していたため、放射能で危険との風評被害が発生し、さくらがきれいに咲いても観光客は激減していました。
このとき、気象予報士の森田正光さんが、気象予報士仲間に声をかけ、4月23日に被災地支援と応援のバスツアーを企画しています。
「三春滝桜を観賞し、募金や直販所で産地のものを購入しよう」「行くことが支援になる」という趣旨のツアーです。
森田正光さんが作ったウェザーマップ関係者だけでなく、幅広い呼びかけでしたので、日本テレビの木原実さんや、気象庁を定年退職したばかりの私も参加しました。
三春滝桜へは、例年に比べれば少ないとはいえ、訪れている人がそれなりにいました。
森田正光さんのような考えの人が少なからずいたのではないかと思います。
そして、三春滝桜の前には、次のような立て看板がありました。
三春滝桜へお越しのみなさまへ
このたびの大震災及び原発事故により、観光客のみなさまには、十分なおもてなしが叶わず、ご不便をおかけしますことをお詫び申し上げます。
今回、三春町も被害を受け、町民一丸となって復旧や避難者対応に取り組んでいるところであります。そこで皆様より、三春町への暖かいご支援ご協力を賜りたく、三春町応援募金箱を設置させていただきますので、ご理解をお願い申し上げます。
三春町は頑張ります。三春町は元気です。
三春町
三春町観光協会
津波被災地にも立ち寄ったので、往復12時間のバスツアーでしたが、三春町を含め、笑顔で頑張っている地元の人たちが印象に残っています。
皆が普段通りのことを行うことで、多くの人が安心した生活ができ、もっと笑顔になってほしいと思いました。
「さくら」は咲く
新型コロナウイルスの影響で、花の下に集まって宴会と言う、従来の花見風景はなくなりそうですが、それとは関係なく「さくら」は咲きます。
普段通りの生活に早く戻れるように皆で協力することが一番大事と思いますが、「さくら」を愛でることまで止めるということではないと思います。
来週以降、各地で晴れて気温が高くなる日が多くなる見込みです(図3)。
各地でさくらの開花がすすみますので、外出途中でさくらを見る機会が増えてくると思います。
この時に見るさくらは、新型コロナウイルス対策を頑張れる一つの要因になるのではないでしょうか。
タイトル画像の出典:高橋和也氏提供
図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。
表の出典:気象庁資料より著者作成。