中国海軍071型ドック揚陸艦が火災事故の誤解。実際は煙幕を出す訓練
11月21日に中国の海南島の三亜湾で大量の煙幕を出す中国海軍の071型ドック揚陸艦が目撃されました。その様子の動画を最初に中国の微博(ウェイボ)で報告したアカウントはこう投稿しています。
难得一见的071船坞登陆舰放烟幕
「071型ドック揚陸艦が煙幕を張る滅多に見られない光景」
感觉反华势力要用这个视频造谣了
「反中勢力がこの動画を利用してデマを広めたりしそうです」
出典:萌虎鲸的微博视频
そして案の定というか、実際に英語圏のSNSで「中国海軍071型ドック揚陸艦が火災事故」と根拠の無い説明書き付きで動画が拡散されました。更に「艦番号980、龍虎山(Longhushan、ロンフゥシャン)」と中国語の原文に無い情報が英語で勝手に付け加えられています。龍虎山は071型ドック揚陸艦5番艦ですが東海艦隊の所属であり、11月21日に海南島の三亜湾(南海艦隊の担当海域)に居たかどうかは未確認です。
なお中国では「珍しいが、たまに行われる煙幕を出す演習」くらいの反応で誰も騒いでいません。火災事故だという報道も一切ありません。中国以外のSNSだけで火災事故を煽るような投稿が相次いでおり、流言飛語のようになっています。
単純に映像のみを見ても火災事故にしてはおかしいことが分かります。もし火災事故ならこんな広範囲に一度に火が点くものでしょうか? 艦内には防火隔壁があるのでそう簡単には延焼しません。そして特に艦首(写真右方向)から大量に煙が出ているのが火災としては不自然です。あんな場所にこれほど煙を出すような可燃物は置かれていない筈です。
すると煙幕の発生装置が置かれていると考えるのが自然です。大量に煙幕を出して身を隠す訓練なのか、あるいはダメージコントロール(被弾した際の応急修理)を想定して煙幕を出す臨場感の溢れる訓練だったのか、そう考える方が妥当です。
- 第一報の微博の投稿は「煙幕の訓練」
- 火災事故を報じる大手メディア無し
- 中国人以外がSNSで火災事故と投稿
現状これまで2023年11月21日に中国海軍071型ドック揚陸艦が火災事故を起こしたと信じる根拠が何もありません。おそらく第一報の通り、単なる煙幕の訓練なのでしょう。なお中国海軍の071型ドック揚陸艦が煙幕を出す訓練は過去にも何回か確認されています。
他にも071型ドック揚陸艦による煙幕の訓練は行われている可能性はあります。軍艦が煙幕を出す訓練は、中国海軍以外でもアメリカ海軍などでも行われている通常の訓練の光景です。