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雪に弱くなった関東・東海 今冬から大雪警報の発表基準を引き下げ

饒村曜気象予報士
東京都心雪景色(ペイレスイメージズ/アフロ)

大雪によって重大な災害の起こるおそれがある旨を警告して発表するのが大雪警報です。

その発表基準値は、災害形態の変化や防災対策の進捗、予報技術や観測技術の進歩によって、絶えず見直しが行われています。

24時間降雪量から12時間降雪量へ

昔の大雪警報の発表基準は24時間降雪量が使われてきました。

平成21年12月から青森、山形、福島の各県の大雪警報の基準が12時間降雪量となって、北日本では全て12時間降雪量を使うようになるなど、近年は、短い時間の降雪量を使う傾向にあります。

また、発表する地域を細分する傾向があります。

これらは、除雪体制が整備され、雪が積もり始めてから1日たたないうちに迅速な除雪が可能になるなど大雪への対応と災害形態が変化したこと、まとまった強い雪のほとんどが12時間以内で収まる場合が多く、雪の止んでいる地方の大雪警報の解除を早くするためです。

また、雪は同じ市町村でも高度が違うと降り方が大きく違いますので、山沿いと平地で基準をわける場合がありますが、この境目の高度は、民家や交通機関の集中する平野部での予報をより実状にあわせた形で出せるよう低くする傾向があります。

これらは、雪による災害発生や生活への影響など、地域の実情に合わせた大雪警報を発表するためのものです。

関東・東海地方の今冬からの大雪警報

関東・東海では、今冬から(正確には11月17日13時から)大雪警報と大雪注意報の発表基準を引き下げています。

図1 関東・東海地方の今冬からの大雪警報の発表基準の数値
図1 関東・東海地方の今冬からの大雪警報の発表基準の数値

主要道路等で除雪を開始する等の積雪深を、大雪警報基準とし、平地では12時間降雪の深さ10センチとしています。

これまでは、24 時間降雪の深さ20~30センチが基準でしたので、数値的には半分となります。

これまで、12時間降雪量が10センチを超えていても24時間降雪量が20~30センチに達しなければ大雪警報は発表されませんでしたので、今までより大雪警報の発表が増えます。それだけ、雪に対して弱くなり、災害が起きやすくなっているのです。

また、路面凍結防止剤の散布等を行う積雪深を、大雪注意報基準とし、平地では12 時間降雪の深さ5センチメートルとしています。

これまでは、24 時間降雪の深さ5~10センチが基準でしたので、数値的には同じ値下か半分となります。

気象庁の発表資料によると、「今回の見直しにより、より早いタイミングでの大雪警報の発表が可能となり、関係機関のより迅速な除雪・防災体制の確保や住民のより早期のタイミングでの不要不急の外出の回避等に役立つ」としています。

12時間降雪量で大雪警報の発表が早くなる?

気象庁では、大雪警報の基準として12時間降雪量を使うことによって、これまでよりも早いタイミングで大雪警報を発表することが可能となるとして、平成26年2月8日の埼玉県熊谷市の例をあげています。

このときは、大雪警報の基準である24時間降雪の深さが30センチに達したのが20時ですが、今冬からの基準である12時間降雪の深さが10センチに達したのが15時です。つまり、今冬からの基準によれば、5時間も早く基準に達しますので、早い段階での警報・注意報の発表が可能とのことです。

ただ、同じ年の2月14日、南岸低気圧の通過により、甲府市では1時間に1~9センチの降雪が続いて積雪が114センチと、119年の観測で最大であった49センチを大幅に上回っています(図2)。県庁所在地の積雪の記録でいえば、甲府は、新潟市の120センチや山形市の113センチと並んだのですが、この時の山梨県甲府市の大雪警報発表は、10時03分です。

図2 平成26年2月14日の甲府の降雪と積雪
図2 平成26年2月14日の甲府の降雪と積雪

甲府では、今後も雪が降り続くとして、24時間降雪量が7センチに達した段階で大雪警報を発表していますので、12時間降雪量が基準であっても、警報発表のタイミングは同じであったと思います。全てのケースで、大雪警報が早く発表できるとは限らないようです。

個人的には、12時間降雪量を使うことにとって、警報発表のタイミングが早まる効果よりも、道路関係者等の関係機関の活動に資する警報が発表できる効果の方が大きいと感じています。

雪の期間は、都市化や地球温暖化の影響で短くなる傾向がありますが、これは平均的な話です。

年によっては早くから、あるいは遅くまで続くことがありますので、常に気象情報に注意する必要があります。

大雪情報とともに気温情報も

大雪が降ったときの行動は、量だけでなく、積雪の状態にも大きな影響をあたえますので、降雪量の予報だけでなく、気温の情報(これまでの変化や予報)も合わせて考える必要があります。

同じ降雪量でも、気温が低い時のサラサラした雪より、気温が0度付近と高いときのベタベタした雪のほうが、雪かき時に腰を痛めない配慮がより必要です。

また、融けた雪が再び凍ってアイスバーンになると、転倒事故や交通事故が急増しますし、水分を多く含んで重たい雪がふる場合は、架線に張り付いて重みで架線切断がおき、停電の可能性が高くなります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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