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サッカーで日朝雪解け? 平壌での「日朝戦」が終わるまで北朝鮮もミサイル発射を自制か

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
岸田文雄首相と金正恩総書記(首相官邸と労働新聞から筆者キャプチャー)

 いよいよ2026年の北中米ワールドカップ(W杯)のアジア2次予選、日本と北朝鮮の第1戦が今日(21日)、国立競技場で行われる。第2戦は5日後の26日、舞台を平壌に移して行われる。日本にとっては13年ぶりの平壌での試合となる。

 拉致問題や核問題など懸案は未解決のままだが、最悪の関係にあった13年前に比べると取り巻く環境も含めてとげとげしさは感じられない。

 ブラジルW杯出場権をかけた2011年の時は日本の制裁措置により荷物検査も含め日本の出入国検査に随分と時間がかかった。しかし、今年2月のパリ五輪の出場権をめぐる日本との試合ため来日した北朝鮮女子選手同様に北朝鮮の男子選手らは今回もすんなりと入国ができた。

 そのことについてはシン・ヨンナム監督も記者会見で「全く問題はなかった。非常によくしてもらっており、感謝申し上げる」とお礼の言葉を口にするほど、日本は寛大に対応した。

 次いでの話だが、シン監督は準決勝で日本に1-2で敗れたアジア大会での会見では日本をリスペクトすることは一度もなかったが、今回は「日本はアジアでも非常に強い国。強い日本と対戦するために非常に大きな努力を傾け、さまざまな準備をしてきた。明日の試合は非常にし烈な戦いになるかと思います」と日本を持ち上げることも忘れてなかった。

 今回、北朝鮮からは選手24人を含め46人が来日しているが、この中にはおそらく領事、外務、情報、渉外を担当する関係者も含まれているのであろう。北朝鮮国籍の入国者の往来を規制し、スポーツ関係者以外の入国を制限していた2011年の時の対応に比べると、これまた意外である。

 聞くところによると、26日の平壌での試合では日本も同様に日本の選手団をサポートするため外務省を含め14人が訪朝することになっている。外交や交流は相互主義が基本ではあるが、以心伝心とはこのことを指す。

 特に、目立つのは北朝鮮側の微妙な変化だ。

 日本サッカー協会によると、北朝鮮は平壌での試合取材のため20人以上の日本人ジャーナリストの入国を認めたそうだ。前回は現地に支局のある共同通信記者を含めたったの10人しか認めなかった。

 今回は、米国系と韓国系、及び北朝鮮に厳しい報道スタンスを取り続けている産経新聞の記者だけが除外されたようだが、政治的な理由からオミットされたのは明らかである。

 また、サポーターらについては民主党政権下の前回は「日本代表が最大限、力を発揮できるよう支援したい」(藤村修官房長官=当時)、「サポーターに応援に駆けつけていただくことができればと考えている」(中川正春文部科学相=当時)と述べ、数百人程度に人数を制限したうえでの渡航を容認していたが、今回は外務省は渡航自粛を求めている。日本独自の制裁を徹底させることよりも邦人を巻き込むトラブルが発生すれば、水面下での日朝接触がぶち壊しになるとの懸念が見え隠れしてならない。

 もう一つ、注目すべきは、北朝鮮が18日以後、ミサイルの発射をしていないことだ。

 北朝鮮は3月4日から14日まで米韓が合同軍事演習を実施したことに反発し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記自らが立ち会って6日に人民軍の射撃訓練、7日~8日に砲撃訓練、12日に戦車部隊の訓練、15日に空挺隊(落下傘部隊)の訓練、18日に短距離ミサイル(6発)の発射、そして19日には中・長距離極超音速ミサイルに搭載する多段式の固体燃料エンジンの地上燃焼実験を行っていたが、日本への脅威となるミサイル発射は短距離、それも北朝鮮の選手らが訪日する前日で、連続の発射はない。

 昨年、米韓合同軍事演習(3月13日~23日)が行われた時は14日(戦術誘導ミサイル2発)、16日(大陸間弾道ミサイル1発)、19日(弾道ミサイル1発)、22日(巡航ミサイルを4発)、23日(新型水中攻撃型兵器=魚雷)、25日(新型水中攻撃型兵器)、27日(弾道ミサイル2発)と2~3日置きに発射していたことを考えると、今のところ、これも一つの変化である。

 北朝鮮はU-20の女子サッカー選手がウズベキスタンで行われてたアジアカップで日本を破って優勝したことを3月11日に速報で伝え、また17日には韓国に3-0で勝った準決勝の試合を録画中継していたことから26日に実に13年ぶりに平壌で行われる日本戦が終わるまでは静かにしているのではないかとみているが、どうやらそれだけが理由ではなさそうだ。

 穿った見方かもしれないが、W杯及び五輪の予選で偶然にも男女が共に同じ組に入ったことで日朝共にホーム&アウエーで行われるサッカー試合をきっかけに膠着した関係を打開したいとの思惑が隠されているような気がしてならない。

(参考資料:「日本が決断すれば、岸田首相が平壌を訪問する日が訪れる」と発言した金与正党副長の狙いは?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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