韓国メディアの「死球でにらみつけた“ヌートバー批判”」はどれほどのものなのか?
“ヌートバー批判”は朴賛浩の個人の意見
「キム・ユンシク投手はわざと当てたわけではない。そんなふうに見てはいけない。メジャーリーグまで行った選手が、あんな姿を見せてはいけない」
10日行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日韓戦で、韓国KBS中継の解説者を務めたメジャー通算124勝の朴賛浩(パク・チャンホ)氏が、そう語ったという。これは6回に背中に死球を受けたラーズ・ヌートバーが、韓国投手をにらみつけた姿を見て、朴氏がそう意見を述べたもの。
実際、韓国メディア「OSEN」がその一言を記事にし、さらにその報道を日本メディアの「東スポWEB」が報じていた。あたかも、韓国のすべての世論が“ヌートバーを批判している”かのような雰囲気だが、メジャー経験のあるパク・チャンホ氏が個人的な意見を述べたまでで、実際にはそうではない。どちらかといえば、ヌートバーのプレーと活躍にスポットライトを浴びせるメディアがほとんどだ。
「ヌートバー対エドマン」の構図
アメリカ人の父と日本人の母を持つラーズ・ヌートバーに韓国メディアも注目していた。というのも、韓国代表にアメリカ人の父と韓国人の母を持つトミー・エドマンが選出され、2人がセントルイス・カージナルスでチームメートということも話題だったからだ。
韓国メディアの注目ポイントとして、日本代表は大谷翔平やダルビッシュ有などメジャー選手の話題が先行しがちだが、「ヌートバー対エドマン」の構図も無視できない。
そうなると2人のプレーを比較し、評価する話題が自然と増えるわけだが、「スポーツ朝鮮」は「結果はエドマンの完敗だった。4打数無安打1三振。一方、ヌートバーは0-3でリードされた3回無死一、二塁の打席で適時打を放ち、逆転への狼煙を上げた」と伝えている。
「ヌートバーのにらみつけは相手投手の心理を揺さぶった」
また、6回に韓国投手のキム・ユンシクの2球目がヌートバーの左肩付近に激突。死球を受けた直後に相手投手をにらみつける姿について、同紙は“批判”せずにこう表現した。
「ヌートバーは意図的に相手を挑発し(にらみつけ)、初めて国際大会に出場したキム・ユンシクの心理を揺さぶった。平常心を失ったキム・ユンシクは結局、近藤健介を押し出し四球で崩れ去った」
さらに守備についても両者を比較。「エドマンは0-0の2回1死の場面で、悪送球から吉田正尚を2塁まで送ってしまった。牽制球もうまく捕球できないシーンも2回あった。一方、ヌートバーは4-3で1点リードの5回1死一塁で、中前に落ちようかという打球に飛び込んで見事にキャッチし、失点を防いだ。韓国の逆転の流れをヌートバーのスーパーキャッチが経ち切った瞬間だった」と報じている。
韓国は2勝2敗に持ち込めば…
どちらかと言えば、韓国メディアはヌートバーの活躍、さらには国際大会だからこそ「負けられない」という闘志と気迫が全面に出ていた死球による“にらみつけ”のシーンも、相手投手を揺さぶるうえでは、「あってしかり」の行為だったという見方だ。
日本戦になるといつになくライバル心をむき出しにする韓国だが、その気迫はそこまで感じられなかったというのが正直なところ。日本はそう簡単に勝てる相手ではないと分かっていたものの、点差以上の実力を痛感させられたに違いない。
オーストラリアと日本に連敗した韓国の1次ラウンド突破の可能性は低いが、いずれにしても残りのチェコ(12日)と中国(13日)に勝利して2勝2敗に持ち込むこと。他国の結果次第では、まだ8強入りの可能性は残されている。