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このチームの「サプライズ」はもう終わり!? 20勝8敗から一転、ここ10試合は1勝9敗

宇根夏樹ベースボール・ライター
PNCパークのダグアウト May 10, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月29日のダブルヘッダーを終えた時点で、ピッツバーグ・パイレーツは、20勝8敗を記録していた。勝率.714はナ・リーグのトップ。ア・リーグを含めても、勝率.821(23勝5敗)のタンパベイ・レイズに次いで高かった。

 サプライズという点では、レイズよりもパイレーツのほうが上だろう。レイズは、過去4年ともポストシーズンへ進んでいる。一方、パイレーツのポストシーズン進出は、2015年を最後に途絶えている。過去4年はいずれも負け越し、2021年と2022年の黒星は、どちらも三桁に達した。

 先月下旬、パイレーツは、デレク・シェルトン監督の契約を延長したのに続き、外野手のブライアン・レイノルズと8年1億675万ドル(2013~30年)の延長契約を交わした。

 ただ、4月30日以降は、黒星を積み重ねている。10試合で1勝しか挙げることができていない。

 故障者が続出している、というわけではない。先発7登板で防御率3.06のビンス・ベラスケスは、今月上旬に右肘を痛めたが、遊撃手のオニール・クルーズが離脱したのは先月上旬なので、チームが失速する前だ。

 勝てない要因は、投打のどちらかではない。10試合中9試合は2得点以下。直近の5月10日も、3点しか挙げられなかった。また、10試合の半数は7失点以上だ。

 開幕から28試合の1試合平均5.5得点と3.6失点に対し、その後の10試合は1.5得点と5.8失点。スパンの長さは違うものの、得点も失点も極端に悪化している。

 ちなみに、ここ10試合で唯一の白星は、ミッチ・ケラーがコロラド・ロッキーズを完封した。スコアは2対0。7回裏に、ロドルフォ・カストロがホームランを打ち、2打点を挙げた。

 前年に100敗以上を喫したチームのポストシーズン進出は、これまでに1度しかない。2016年に59勝103敗(勝率.364)のミネソタ・ツインズが、2017年に85勝77敗(勝率.525)を記録し、ワイルドカードの2枠目に位置した。

 6年前のツインズはあくまでも「例外」であり、今シーズンのパイレーツは、そうならないのかもしれない。また、2015年のツインズは、ポストシーズン進出を逃しているものの、83勝79敗(勝率.512)だった。従って、2年連続100敗以上の直後にポストシーズンへ進んだチームは皆無、ということになる。

 もっとも、決めつけるのはまだ早い。これだけ負けが込みながらも、パイレーツは、現在も地区首位に位置している。勝率.553(21勝17敗)は、ナ・リーグ全体でも、勝率.676(25勝12敗)のアトランタ・ブレーブスと勝率.605(23勝15敗)のロサンゼルス・ドジャースに次ぐ。

 現時点の勝率でポストシーズン進出が決まるとすれば、ナ・リーグのワイルドカードの3枠目は、勝率.500(19勝19敗)のマイアミ・マーリンズかサンディエゴ・パドレスのどちらかとなる。

 一方、ア・リーグの状況は異なる。現時点でワイルドカードの3枠目に位置しているのは、勝率.568(21勝16敗)のトロント・ブルージェイズだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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