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打者と一塁カバーに入る投手が競争になり、先にベースを踏んだ打者がアウトになる

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャクソン・メリル(左)とマット・ムーア Jun 5, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月5日、ジャクソン・メリル(サンディエゴ・パドレス)は、1点を追う9回表、1死走者なしの場面で、一塁線にゴロを打った。

 一塁手のノーラン・シャヌエル(ロサンゼルス・エンジェルス)は、ベースの後方でこの打球を捕り、マウンドから走ってきてベース・カバーに入る手前のマイク・ムーアに、長めのトスをした。

 送球を受けた時点のムーアと左打席から駆けてきたメリルは、ベースまでほぼ同じ距離にいた。ベースを踏んだのは、メリルのほうが先だった。メリルの左足がベースに達した時、ムーアはまだ届いておらず、しかも、ベースを踏むことなく、走り抜けた。一塁の塁審は、両腕を水平に広げた。

 けれども、判定は覆った。ムーアは、捕球した後、グラブを右へ振った。左投手のムーアがグラブをはめているのは右手、メリルに近いほうだ。グラブがメリルの左太腿に触れたのは、メリルがベースを踏むよりも早かった。

 ムーアのファイン・プレー、と言っていいだろう。

 無意識の動作ではないらしい。ベースを過ぎ、塁審の横に達した時、右手のグラブを上げている。タッチしたことをアピールしたのだと思われる。

 メリルの次の打者、ハソン・キムを遊撃フライに討ち取り、ムーアは、試合を終わらせた。エンジェルスは、前々日と前日に続いてパドレスを破り、今シーズン2度目のスウィープを成し遂げた。

 1度目は、4月1日~3日にアウェーでマイアミ・マーリンズに3勝――ボルティモア・オリオールズに勝った3月31日を含めて4連勝――なので、ホームでスウィープは今シーズン初。その前は、ヤンキースを相手に3勝の昨年7月17日~19日だ。

 このシリーズを終え、エンジェルスは、24勝38敗(勝率.387)。シーズン勝率.500を記録するには、ここからの100試合中57試合に勝つ必要がある。

 一方、パドレスは、6月1日の時点では、今シーズン最多の貯金3だったが、カンザスシティ・ロイヤルズにサヨナラ負けを喫し、スウィープを逃したのに続き、エンジェルスに3敗。現在は、借金1の32勝33敗(勝率.492)だ。もっとも、現時点の勝率は、ナ・リーグ各地区の首位を除くと3番目に高く、ワイルドカードの3番手に位置する。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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