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1万もの遺体の一部が隠された広大な農地 25人連続大量殺人犯の自殺から数十年、今も続く身元の特定

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
Google Street View。スクリーンショットは筆者が作成。

アメリカの中西部インディアナ州に、これまで約1万もの遺体の一部が土の中から見つかっている広大な農地がある。ここで新たに発掘された遺体の一部の身元が判明したと2日、複数の米メディアが報じた。

同州ハミルトン郡検視局の先月の発表では、今回身元が判明した犠牲者は1993年に行方不明になったジェフリー・A・ジョーンズさん。またジョーンズさんとは別に新たにDNA照合する遺体の一部が4つ見つかったが、身元の特定には至っていない。

この広大な敷地兼住居に住んでいたのは、連続大量殺人の容疑者、ハーブ・バウマイスター(Herb Baumeister)という男だ。

2日付のFOXニュースによると、男はインディアナ州で1980年代後半から1990年代前半にかけて少なくとも25人を殺害した容疑がかけられている。

男は18エーカー(約7万2800平方メートル)もの広大な敷地を持つ自宅兼農地(冒頭写真)に家族と共に住んでいた。別の資料によると、88年に州内でスリフトストア(リサイクル店)を創業。住居用に広大な農地の「フォックス・ホロー農場」を購入したのは、同年5月のこと。

事業は成功を収め、また結婚し3人の子をもうけた男はどうなっていったのか?

同州インディアナポリス警察などの発表によれば、この男によって殺され身元が判明しているのは12人にも上る。さらに男は少なくとも25人を殺害した容疑がかけられている。犠牲者の多くは若い同性愛者の男性だった。

記事にはこのように書かれている。「バウマイスターは生前、連続殺人犯によくある二つの顔を持っていた。一つは一見ごく普通の夫であり父親。しかし裏の顔は『ブライアン・スマート』という偽名を使い、バーで知り合った若いゲイの男性を標的にしていた」。

大量連続殺害、死体の遺棄に広大な敷地を利用

男は死体の遺棄に広大な自宅の敷地を利用した模様だ。人々を殺害後、遺体を細かく切断、焼却するなどして、人骨などを土の中に埋めたと見られている。男は指名手配されたが、逮捕を恐れ、96年に逃亡先のカナダのオンタリオ州で拳銃自殺をした。49歳だった。うまくいっていなかった事業や結婚生活についての遺書はあったが、いかなる罪も認めておらず、殺人罪で起訴されていない。

男の死後、ハミルトン郡検視局により男の自宅敷地内から焼かれたり細かく砕かれたりした大量の骨の破片などが回収されたが、多くはDNA鑑定が非常に困難な状態にあるという。よって男の死後28年が経過しても、いまだ遺体の一部の身元調査が続いている。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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