電力需給ひっ迫警報と路面凍結をもたらす寒さと雪
三連休明けの東京
令和4年(2022年)3月21日、三連休最後の日に気象庁が発表した東京地方の地域時系列予報は、珍しい予報でした(図1)。
三連休明けの22日の東京地方の天気は「雨または雪(みぞれ)」で、気象庁の露場がある千代田区北の丸公園の気温は、日付けが変わった0時頃が一番高く、日最高気温が9度位、18時頃の気温が一番低くなって日最低気温が2度位となるという予報でした。
ただ、翌日の天気予報でいう最低気温は「朝の最低気温」、最高気温は「日中の最高気温」ですので、天気予報では、「朝の期間が終わる9時頃」の5度が最低気温、「日中の期間が始まる9時頃」の5度が最高気温として予報されました。
ほとんどの日は、朝に最低気温を観測し、日中に最高気温を観測していますので、特に問題がないのですが、3月22日の東京地方のように、気温が時間を追ってほぼ下がる一方だった場合には、わかりづらい予報となってしまいます。
南岸低気圧の北に発生する低気圧
3月22日は予報通り、前線を伴った低気圧が西日本の南海上から東日本の南海上を東進し、この南岸低気圧の北側にあたる関東の南海上で小さな低気圧が発生しました。
そして、この小さな低気圧が関東の東海上にある寒気を関東地方に運び込み、関東地方の気温がどんどん低下しました(図2)。
東京の最高気温は0時5分の9.9度でしたが、その後は気温がどんどん低下し、日中の気温は平年より10度以上低い2度前後となり、真冬時よりも寒くなりました(図3)。
ちなみに、最低気温は24時0分に記録した1.2度ですので、気温がどんどん低下した一日でした。
そして、関東地方の大半は、雪またはみぞれという天気でした(図4)。
このため、東京電力管内では、寒さのため電力需要が急増しました。
電力需給ひっ迫警報
電力需要と気温には密接な関係があります。
夏季は気温が高くなるとエアコンなどの使用が増え、気温が1度上がると2~3パーセント電力の使用量が増えるといわれています。
このため、猛暑の時などに、節電の協力が呼びかけられることがあります。
平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災後の原子力発電所の一斉停止を受けて、電力需要が電力供給能力を上回った場合には、「電力需給ひっ迫警報」を発表して企業や各家庭に節電をよびかける仕組みができたのは、夏場の電力不足に備えてでした。
ただ、平成23年(2011年)の夏は冷夏で、この警報の出番はありませんでした。
一方、冬季は気温が低くなると暖房の使用が増え、気温が1度下がると1パーセント程度電力の使用量が増えるといわれています。
ただ、灯油など、電力以外の暖房があるためか、夏季よりも気温による電気量の増加が少なく、これまで、冬季の節電の協力はありませんでした。
しかし、6日前の3月16日に宮城県と福島県で震度6強の揺れを観測した地震の影響で、福島県の広野火力発電所などが運転停止中でした。
このため、3月22日は東京電力管内で電力供給量が安定供給のために最低限必要とされる余力3パーセントを下回る可能性がでてきたことから、政府は、初めて「電力需給ひっ迫警報」を発表しました。
実際は、余力3パーセント以内どころか、供給量を一時上回ったのですが、かろうじて大規模な停電は発生しませんでした。
テレビ等で報じられた節電要請に対し、多くの人が協力したことが、綱渡りでしたが、落ちないで渡れた理由と思います。
「電力需給ひっ迫警報」は、一時、東北電力管内でも発表になりましたが、東京電力管内では、3月23日も継続して発表となっています。
これは、23日も最高気温が10度位までしか上がらず、朝までは電力需要が多くなる寒さであるからです。
【追記(3月23日11時)】
東京電力管内に発表されていた「電力需給ひっ迫警報」は、23日11時に解除となりました。
寒さと凍結に注意
3月23日の朝は、寒さによる電力需要の増加に注意が必要ですが、22日の雨や雪で濡れた道路の凍結にも注意が必要です。
通勤・通学には、交通事故や転倒に十分注意してください。
週の半ば以降は、最高気温、最低気温、ともに平年を上回る見込みです(図5)。
寒い、寒いといっていた冬が終わり、暖かい春がすぐそこまで来ていますので、あと1日、寒さに対する警戒を継続してください。
図1、図2の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図4の出典:ウェザーマップ提供。
図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。