日米株価暴落!iDeCo、つみたてNISAはどうすべき?
2022年は年始から株式市場が下落しています。暴落という表現も言い過ぎではないでしょう。下落の理由はいくつか考えられますが、大きな原因となっているのは、アメリカの金利上昇観測、金融緩和の縮小、ロシアとウクライナ情勢です。投資において大切なことは、自分でコントロールできないことを嘆かないこと。今、個人投資家にできることは何でしょう。
株式市場の下落時対応は3つ
株式市場が下落する場合の対応はそれほど多くありません。
(1)直ちに売る
「言うは易く行うは難し」の方法が「売る」となります。金利が上昇すると株価が下がるのは投資におけるお金の流れの前提条件です。しかし、どれほど下がるかわからない場面では、「それほど下がらないかもしれない」「もう十分下がっただろう」「下げ止まって上昇するだろう」といった憶測や、損失を確定させたくないという心理的な痛みの回避など、メンタル面で合理的な判断ができない方が多いでしょう。
世界中の投資のプロと呼ばれる人たちは、常に売りどきを見計らっており、特に2021年末は売るタイミングを慎重に待っていたはずです。そして、1月になりアメリカの金利上昇、金融緩和の縮小が確実だと認識できた段階で保有する投資対象を売ったと考えられます。
日本でもアメリカでも長らく株高が続いていましたから、いい頃合いということで利益確定の売りも重なったと考えられます。
投資で最も難しい「売る」という行為は人間心理によって難しい行動になっています。
(2)買い増す
投資の世界では、ナンピン買い、底値買い、押し目買い、といって価格の下落局面で追加投資する方法があります。
買い増しの場合は、将来価格が上昇することを前提としています。iDeCoやつみたてNISAをコツコツ積立購入する意義は、株式市場が長期的に成長するという「前提」に基づいています。
この前提が機能している限り、買い増すという方法は有効です。ただし、この前提が一時的にでも機能しなくなったり、前提が崩れてしまう場合は、買い増しは損失を広げるだけになります。
iDeCoやつみたてNISAであれば、投資の目的地点は数年あるいは数十年先ですから、一時的な株式市場の下落は気にしない方が良いかもしれません。
(3)何もしない
投資の世界では、静観するのも一つの方法です。ただし、何もしないという結論に至る過程で、相場下落を知らず「気が付かない」場合、有効な手立てがなく「為すすべがない」場合、意図して「何もしない」場合があります。
iDeCoやつみたてNISAのように、定時定額積立を行う場合、株式市場の動向を見計らって機動的に売買するのは現実的ではありません。とくに、つみたてNISAは一度売却すれば非課税枠が消滅しますから、保有し続けなくてはならないという縛りを考える人もいるでしょう。
投資好きな方であれば、オプション取引を利用して値下げに備えたり、CFD取引を利用して値下がりを利用して利益を狙いにいく方法もあります。興味のある人は、デリバティブという分野になりますが、今後に備えて研究するといいでしょう。
iDeCoとつみたてNISAの違いが明らかに
今回の株式市場の下落で、図らずもiDeCoとつみたてNISAの違いを理解できた人もいるでしょう。
iDeCoは株式市場の下落局面で、他の金融商品に投資先を変更することができます。今まで積み立てたまとまった資金を安定的な投資先に変更するのが無難なやり方の1つです。預金、保険、短期金融市場型の商品に銘柄をスイッチしておけば、市場の下落から財産を守ることに繋がります。
本稿執筆(2022年2月23日)時点で、ロシア情勢は不透明ですが、紛争が激しくなれば株式市場は一段と冷え込むでしょうから、投資先の変更余地はまだありそうです。
一方で、つみたてNISAは金融商品のスイッチングを前提としたて仕組みではありません。あくまでも長期保有を前提に、あるいは機動的に売却し換金する器です。スイッチングができませんから、売るか保有し続けるかという選択肢しかない点は今後の投資戦略に大きな影響を与えます。
一般NISA、つみたてNISAならNISAを諦めて投資しなおすのもアリ
もし、つみたてNISAの投資家で、利益確定あるいは損切りのために保有商品を売却した場合、投資戦略を変更するという考えもあります。
一般NISAもつみたてNISAも一度売却すると、非課税枠がなくなりますが、通常の証券口座で取引を継続することは可能です。一時的に株価の安定している高配当株式に投資するなど、検討の余地はありそうです。
損益通算ができないデメリットも表面化
一般NISA、つみたてNISAで損失が発生している人は、損益通算が使えないために損切りできないという人もいるかもしれません。
損益通算とは、A商品の売買益とB商品の売買損を相殺する仕組みです。損失を有効に活かす投資戦略でもあります。一般NISAとつみたてNISAは売買益の非課税という条件の代わりに損益通算という仕組みを失っています。
損益通算ができるなら、他の投資の利益を確定できるのに・・・とほぞを噛んでいる人もいるかもしれません。
ゲームチェンジ後に過度の期待は抱かない
筆者が一番気になっているのは、株式市場のゲームチェンジの可能性です。これまではリーマンショック、欧州債務危機、コロナショックと金融緩和が継続されてきました。ところが、ここへ来て金融緩和の終了がアナウンスされています。
となると、下落が収まってもいままでのような株式市場の上昇スピードは見込めない可能性があります。また、日本でも黒田日銀総裁の任期満了が迫っており、今後はマイナス金利の解消、金融緩和の段階的縮小の可能性があります。
iDeCoやつみたてNISAの経験がない若い人は、株式市場が右肩上がりに上昇することが当たり前だと誤解している人も少なくないでしょう。実際は、上がったり下がったりを繰り返しです。株式市場で波に乗るには市場関係者の総意がどこに向かっているかを考えたり、理解しようと務めることも大切です。
ほったらかしで積み立てを継続するのも1つですが、いたずらに不安感を膨らませないよう、一般論ではありますが、対応策は何があるのか、あるいは対応策はないのかを知っておく必要が有るのではないかと考え、記事を作成いたしました。