中国公船の尖閣沖接近が常態化、昨年は接続水域航行が過去最多の352日 領海侵入も過去2番目の多さ
中国海警局の公船が昨年1年間に尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で確認された日数は352日となり、2年連続で過去最多を更新した。
海上保安庁によると、中国海警局の公船は1年365日のうち、台風などの悪天を除き、ほぼ毎日尖閣周辺を航行している。特に近年は機関砲搭載の1隻を含む4隻の航行が常態化している。
また、尖閣周辺の接続水域(領海の外側約22キロ)で確認された延べ隻数でみても、昨年は1287隻となり、過去最多となった。
●尖閣領海侵入は?
一方、中国公船による尖閣領海侵入(沿岸から約22キロ)の日数は昨年1年間で42日に上った。中国公船が初めて領海侵入した2008年12月以来、これは2013年の54日に次ぐ過去2番目の多さとなる。延べ隻数でみても129隻に達し、こちらも2013年の188隻に次いで過去2番目の多さとなった。2013年は、前年2012年の日本政府による尖閣国有化を受け、中国公船による尖閣接近が急増した。
●尖閣領海侵入時間も最長
さらに、中国海警船4隻は昨年3月30日から4月2日にかけて80時間36分間にわたって、尖閣諸島周辺の日本領海に侵入した。これは1回の侵入としては過去最長時間となった。4隻は海域で日本漁船の追跡を続けていた。中国公船は尖閣周辺の領海内で、あたかも自国の領海内であるかのように、操業中の日本漁船に接近して追尾をするなど自らの法執行の動きをぐっと強めてきている。
●習近平氏「1ミリたりとも領土は譲らない」
中国の習近平国家主席は昨年11月下旬、軍指揮下の海警局に対し、尖閣諸島について「1ミリたりとも領土は譲らない。釣魚島(尖閣の中国名)の主権を守る闘争を不断に強化しなければならない」と述べ、領有権主張の活動増強を指示したと伝えられている。共同通信は匿名情報筋の話として、中国海警局が2024年には必要に応じて日本の漁船に立ち入り検査する計画を策定したとも報じた。
●習氏は中国史上まれに見る海洋政治家
習氏は中国史上まれに見る海洋政治家として知られている。習氏にとって海洋利益は自らの政治キャリアの生命線となっている。習氏は政治家としてのキャリアの中で中国東海岸の福建省で17年以上、浙江省で5年近くを過ごした。呉勝利(ご・しょうり)という海軍の総司令を本来ならば引退なのに、引き続きやらせたこともあった。つい最近も海軍トップの司令官を務めた董軍(とうぐん)氏を新しい国防相に任命したばかり。海軍司令官がこのポストに昇任するのは初めてだ。
習氏は内政的に海洋権益をアピールし、国内世論に対しても領土ナショナリズムをうまく利用して中国共産党の権力維持を図っている。つまり、尖閣問題は中国の国内政治と密接に絡んでいる。
このため、日本は中国の海洋活動、特に尖閣諸島や台湾付近で行われている活動に対する監視能力を強化し続けなければならない。
尖閣諸島は台湾の北東約170キロに位置する。日本政府は、日本が台湾問題への関与を強めるにつれ、中国が日本に圧力をかけようとしているとみている。
●国連が1969年に尖閣周辺で石油埋蔵の可能性指摘
振り返れば、中国が尖閣諸島を自国の領土と本格的に主張してきたのは、国連アジア極東経済委員会が1969年に尖閣周辺海域に石油埋蔵の可能性を指摘した直後の1970年代からである。
そして、今や尖閣周辺海域で中国公船を見るのはもはや珍しい光景ではなくなった。このため、沖縄県の2大紙「琉球新報」「沖縄タイムス」をはじめ、日本のメディアが中国公船の尖閣接近をニュースとして取り上げるボリュームも減ってきている。近年多発する北朝鮮のミサイル発射実験と同様、もはや日常的な出来事と化し、大きなニュース価値を見いだせなくなっているのかもしれない。
しかし、これは結果として、国家の大事な主権問題である領土問題に対する日本社会の関心を低下させていくことにもなりかねない。そして、これこそが尖閣の実効支配を徐々に狙う中国の「サラミ戦術」の狙いでもある。
那覇市にある第11管区海上保安本部の広報官は4日、筆者の取材に対し、「海上保安庁では、常に尖閣諸島周辺海域に巡視船を配備して領海警備に当たっており、中国海警局に所属する船舶への対応に当たっては相手勢力を上回る巡視船で対応するなど、引き続き万全の領海警備体制を確保していく」と強調した。
(関連記事)
●中国3隻目の空母「福建」がほぼ完成、初の試験航海をまもなく開始予定 中国メディアが報道