人間にうつる「猫の病気」ってあるの?注意したい人獣共通感染症5つ!感染しないようにするには?
愛猫との幸せな暮らしは多くの飼い主に喜びと癒しをもたらしますが、驚くべきことに、猫が保持している菌やウイルスが人間にも感染することがあります!いわゆる「人獣共通感染症」です。
なかには非常に危険な感染症も存在するため、飼い主は「人獣共通感染症」について知っておきたいところ。
そこで今回は注意したい人獣共通感染症5つと、感染を防ぐための方法を紹介します。猫と暮らす人必見の内容です。
1.人獣共通感染症とは?
人獣共通感染症(Zoonosis)は、動物と人間の間で感染が起こる病気のことです。
これらの感染症は「動物から人間に」または「人間から動物に」伝染するものがあって、多くの場合動物と人間が密接に接触するか、動物由来の食品や環境から感染します。
2.注意したい人獣共通感染症5つ
2‐1.皮膚糸状菌症
「猫カビ」「疥癬」とも呼ばれる皮膚糸状菌症は、猫と人双方に感染する人獣共通感染症です。真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌が原因で発症します。
猫の場合は子猫や免疫力が落ちた猫(シニア猫・闘病中の猫)に発病のリスクがありますが、健康な成猫ではあまりみられません。
同じように人間の場合も子ども・妊婦・高齢者では発病リスクが高く、健康な成人であれば高い免疫バリアによって感染から守られるので、発病するのは珍しいです。
この病気は皮膚糸状菌をもった動物との接触によって感染するので、猫と触れ合ったあとに手を洗うことで、感染リスクを下げることができます。
【人と猫の症状】
・フケ
・脱毛
・痒み
・赤いリング状の発疹(人の場合)
【感染経路】
皮膚糸状菌をもった猫とのふれあい
2‐2.猫ひっかき病
猫に引っかかれたり噛まれたりすることで感染する人獣共通感染症です。正式名称は「バルトネラ症」で、「バルトネラ・ヘンセレ」という細菌が原因であることがわかっています。
バルトネラ菌というのは猫の口の中の常在菌(猫が常にもっている菌)ですが、ノミを介して猫が感染することもあります。しかし猫自身なにか症状が現れることはありません。
ただ人が猫にひっかかれたり噛まれたりして、バルトネラ菌が侵入すると患部が隆起したり、頭痛・発熱といった症状があらわれます。
症状が軽いと自然治癒することも多いですが、傷の治りが悪く痛みを伴う場合は病院を受診してください。
【人の症状】
・腫れ
・リンパ節の腫れ
・発熱
・倦怠感
・関節痛
など
【感染経路】
猫によるひっかき傷
2‐3.パスツレラ症
パスツレラ病は、猫や犬の口の中に常在する「パスツレラ菌」が原因で発症する人獣共通感染症です。外傷がなくても、過度なスキンシップでも感染します。
猫に症状が現れることはないですが、人に感染すると発熱や頭痛などの症状が現れることがあります。重症化すると敗血症や髄膜炎を発症するリスクがあるため、免疫力が低い人はとくに注意が必要です。
もし猫に噛まれたときはすぐに流水で患部を洗い流し、強い痛みや発熱などが見られたら病院を受診してください。
【人の症状】
・傷口の赤みや腫れ
・発熱
・風邪症状
・頭痛
・倦怠感
・肺炎(重症化)
など
【感染経路】
・過度なスキンシップ(キス・口移しなど)
・猫にひっかかれる
・猫に噛まれる
2‐4.重度熱性血小板減少症候群(SFTS)
重度熱性血小板減少症候群 (SFTS) は、マダニに刺されることで感染する人獣共通感染症です。
マダニがもつSFTSウイルスが原因で、猫や犬を含む多くの動物に感染します。日本では2013年に感染が確認された、比較的新しい感染症です。
犬や猫の場合このウイルスに感染しても症状が現れないこともありますが、猫が実際に発症すると致死率約70%と比較的高い死亡率となります。
主にマダニから感染する病気ですが動物から人に感染した例もあり、人が感染すると死亡率は10~30%ほど。とくに免疫力が低い人は注意したほうがいいでしょう。
有効な治療法は確立されていないので、猫を室内で飼育したり駆虫薬をつかったりして、マダニに寄生されないような対策をするのが大切です。
【猫の症状】
・発熱
・食欲不振
・元気喪失
・黄疸
など
【人の症状】
・発熱
・消化器症状
・頭痛
・筋肉痛
・神経症状
など
【感染経路】
・マダニによる吸血
・感染動物への接触(稀)
2‐5.トキソプラズマ症
トキソプラズマ症は、「トキソプラズマ」という原虫が原因で発症する人獣共通感染症です。猫はトキゾプラズマの最終宿主で、感染しても猫も人もほとんど「無症状」が多いもの。
人への感染は猫の糞便から感染するケースが多いため、排泄物を処理するときは注意が必要です。とはいえ猫の糞便を触って手を洗わない・糞便に汚染されたものを直接触るといったことがなければ猫から人への感染は起こりにくいとされています。
ただし妊娠中に感染すると「先天性トキソプラズマ症」という病気を発症するリスクがあるため、この時期は猫の糞便に対してとくに注意をはらったほうがいいでしょう。
【猫の症状】
・発熱
・リンパ節の腫れ
・下痢
など
【人の症状】
・リンパ節の腫れ
・発熱
・倦怠感
・軽度のインフルエンザのような症状
など
【感染経路】
・感染猫の糞便に汚染されたものを口に入れる
・加熱処理が不十分な肉を食べる(人の場合)
3.人獣共通感染症にならないためにはどうすればよい?
人獣共通感染症を防ぐためには、次の点に注意することが大切です。
・猫を室内で飼育する
・猫の排せつ物の処理は手袋を着用し、作業後は石けんで手洗いを
・外に出る機会があるときは、駆虫薬をつかう
・猫用品は定期的に消毒・洗浄し、ノミやダニが寄生しないよう管理する
・家中の掃除を行い清潔を保つ
このように日常的な衛生管理や猫の室内飼育を心がけることで、人獣共通感染症をある程度予防することができます。
ただし疑わしい症状が出た場合は早めに受診し、感染拡大を防ぐことも大切です。
4.まとめ
人にうつる猫の病気として、トキソプラズマ症・猫ひっかき病・皮膚糸状菌症・SFTS・パスツレラ病の5つを紹介しました。
愛猫とうまく共存していくためには、飼い主がこれらの疾患に関する知識と予防を行うことがポイントです。
猫を飼育するうえで人獣共通感染症対策は、人・動物の健康を守るために大切なことだと覚えておいてください!