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東大生はバカになったのか?利口になったのか?

前屋毅フリージャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

2017年度の国家公務員総合職試験の合格者を6月30日、人事院が発表した。合格者は1878人と、まさしく選ばれたエリートたちであり、中央官庁に籍をおくようになれば、キャリアと呼ばれる「官僚のなかの官僚」となる。

合格者の出身大学では東大がトップで、372人だった。2番目に多い京大が182人だから、圧倒的な強さである。

しかし昨年、2016年度は433人の東大出身者が合格している。それにくらべれば、今年は61人も減ったことになる。

国家公務員試験に合格できないほど、東大生はバカになったのだろうか?

詳しく調べたわけではないが、東大生の合格者が大幅に減ったのは、そもそも国家公務員試験を敬遠しているからではないだろうか。

「天下り後に儲けなくては採算がとれない」と、あるキャリアが話すのを聞いたことがある。エリートではあるが、国家公務員の給料がずば抜けて高いわけではない。退官後に天下りして、楽に仕事して高い給料と退職金を手にするのは、キャリアたちにしてみれば現役時代のツケを払ってもらっているようなものだったのだ。

それが昨今では、天下りに対する世間の目は厳しくなり、かつてのような甘い汁が吸いにくくなっている。キャリアたちにしてみれば、採算がとれなくなってきているのだ。

そんなキャリアは、最近の東大生にとって魅力的な存在ではなくなってきているのかもしれない。それより高学歴を生かして高収入につながる大手企業に就職したほうが、天下りで帳尻を合わせるよりは手っ取り早い。

そう考えれば、国家公務員総合職試験での合格者が減っているのは、東大生がバカになったからではなく、むしろ利口になったからである、といえそうだ。さらには、官僚となって天下国家を論じることも、東大生にはバカらしく映っているのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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