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のび太が43年前に制定した「ぐうたら感謝の日」に、伝説の0点テストの確率を計算してみた!

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。

今日6月2日は「ぐうたら感謝の日」だという。制定者は『ドラえもん』ののび太。6月に祝日がないことを嘆き、ひみつ道具「日本標準カレンダー」を使って、全国的に国民の休日とした(1978年発行のコミックス14巻「ぐうたらの日」)。この日は一切働いてはならない! お~っ、いい休日ではないですか。

「ぐうたら感謝の日」とは、いかにものび太らしい発想だ。彼は本当に努力や勉強が嫌いで、学校のテストで何度も0点を取っている。それでいて、さほど気にする様子もなく、勉強してリベンジに励む様子もなく、学校から帰ってくるなり昼寝する。泰然自若とは彼のことですなあ。

感心してどうする!?  せっかくの「ぐうたら感謝の日」、のび太がいかにぐうたらで、0点をたくさん取っているかについて、『ドラえもん』のコミックスを読んで、その実態を探ってみよう。

◆のび太の0点率は60%!?

丸2日かけて『ドラえもん』全45巻を読んだところ、いろいろわかりましたぞ。

初めて0点を取ったのはコミックス2巻の「正直太郎」という話。そこから20巻の「設計紙で秘密基地を!」まで、実に7連続で0点を取っている。

初めて0点以外を取ったのは20巻の「アヤカリンで幸運を」。ママが「まあ、三十点もとったの。よかったわね!!」と最高の笑顔を見せている。

その後は点数も上がったり下がったり……なのだが、総合すると、のび太の勉強や学力が話題に上ったエピソードは全170回。そのなかで、のび太が0点を取った描写は26回だ(たとえば「隠しておいた6枚の0点をタイムカプセルに入れる」というエピソードの場合は、6回とカウント)。

一方、0点以外の点数を取った描写が17回(ママが「ひどい点」と言うなど、点数不明のテストの場合は「何点かは取った」と考えて、こっちにカウント)。つまり、試験結果への言及が43回で、うち0点が26回。ここから計算すると、コミックス全45巻での「0点率」は60%となる。

ただし、彼の名誉のために書かねばならないが、のび太は100点を取ったことがある。コミックス25巻「な、なんと!! のび太が百点とった!!」では、夢でも幻でもなく、ひみつ道具にも頼らず、正真正銘の100点を取っている。

本人も何度も目をこすっていたし、先生も「いや、わしも目をうたがったがね。何度調べても百点なんだ。」と結構ヒドイことを言い、ジャイアンやスネ夫やしずかちゃんに至っては、まったく信じない。自宅に戻るとドラえもんが「ああ、ついにカンニングしたか」。

これには、のび太も深く傷ついてしまった。反省したドラえもんは、どんなことでも人に知らせて信じさせる「ピーアール」というひみつ道具を出す。

この機械の働きによって、のび太の100点はテレビのニュースで報じられ、大学の先生が「コロンブスのアメリカ発見、アポロ11号の月着陸にくらべられる大偉業」とコメントし、国会ではこの日を「のび太記念日」と定め……という騒ぎになる。

いやあ、100点を取ったことによってマンガ1話が作られ、そのまんまのタイトルがつくのだから、たいした人物ですなあ。

◆二択のテストで0点を取った!

もちろん、100点は例外中の例外。多くは0点か、それに近い点である。

看過できないのは、二択のテストで0点を取ったことだ。これは、アニメ版の「テストにアンキパン」に出てくるエピソードだが、○×式の20問のテストで2枚連続して0点を取ったのだ!

呆れたドラえもんは「これはすごい」と感心して、こう説明した。「〇×式は、普通答えさえ書いてあれば、半分は嫌でも当たっちゃうんだ」。そして、20問全部外す確率が「約100万分の1」と告げ、「その0点を連続して取るんだから、これはもう天文学的確率だよ」。

筆者もまったくそう思います。では、その天文学的確率とは、どれほどか? 

○×式のテストでは、1問ごとに「○」か「×」かのどちらかをつけることになる。問題数が2問なら、答えのパターンは2×2=4通り(○○、○×、×○、××)。3問なら2×2×2=8通り(○○○、○○×、○×○、○××、×○○、×○×、××○、×××)。そして20問なら、答えのパターンは計104万8576通り!

そのうち、20問すべてを間違えるパターンは、たった1つしかない。したがって、○×式20問のテストで0点を取る確率は104万8576分の1。ドラえもんの言っていた「約100万分の1」とは、このことだ。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

だが、オソロシイのはここからで、前述のように、のび太が受けた〇×式テストは2枚。それで連続して0点を取ったのだ。この場合の確率はどうなるか?

104万8576分の1の確率で起こる現象が2回続くのだから、モーレツに確率が低くなる。104万8576×104万8576で、なんと1兆995億1162万7776分の1だっ!

やはり、のび太はすごいです。もう立派と称えてもいいかもしれない。今日は、こういう偉大な人が制定した「ぐうたら感謝の日」なのだから、やはり仕事は休みますかねー。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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