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「広告分のパケット代は無料」スマホの新たな節約術になるか

山口健太ITジャーナリスト
mineoの新サービス「広告フリー」(オプテージのプレスリリースより、筆者撮影)

MVNOサービス「mineo(マイネオ)」が、広告を表示するのに使ったパケットを通信量にカウントしない新サービスを発表。3月1日から提供を開始します。

動画を使った広告など、通信量は増加傾向にある中で、データを少しでも節約したいユーザーにとって注目のサービスになりそうです。

広告版「カウントフリー」サービスが登場

mineoを運営するオプテージの調査によれば、スマホの通信量の約4割は「広告」を表示するために消費しているとのデータがあるといいます。

これは毎月の携帯料金を節約したいと考えている格安SIMの利用者にとって、無視できない問題といえるでしょう。

たしかに、インターネット上には広告収入によって無料または安価に運営されているサービスやコンテンツが多数あり、それ自体はおトクといえるものです。

しかしスマホ向けの広告はどんどんリッチになっており、動画を使った広告のように通信量を大きく消費するものが増えています。

そこでmineoが始めるのが、広告を表示するために消費したパケットを通信量にカウントしない新サービス「広告フリー」です。

mineoの容量別プラン「マイピタ」では、データ容量が1GB・5GB・10GB・20GBという4つのプランが提供されています。もし広告表示によるデータ消費がなくなれば、実質的に毎月より多くの容量を使えることになるわけです。

理論的には、スマホの通信量の4割が広告ならば、データ消費は4割減ることになるはずです。ただ、実際にはYouTubeやSNSなど技術的に判定できない場合があることから、広告と判定される通信量はそれより少ない割合になるとしています。

実際にどれくらい節約できたのかは、マイページやアプリから利用の翌日には確認できるよう、可視化する機能を提供する予定とのことです。

パケット節約量を確認できる機能も提供するという(オプテージ提供資料より)
パケット節約量を確認できる機能も提供するという(オプテージ提供資料より)

一般に、通信事業者が通信の中身を見ることは「通信の秘密」の侵害となる場合がありますが、このサービスでは申し込んだ人に同意を取ることで、問題をクリアしているようです。

通信事業者の中には、同様の仕組みでSNSや動画、音楽などを通信量にカウントしない「カウントフリー」を提供するところがありますが、広告フリーはその広告版という印象です。

注意したいのは、広告フリーといっても「広告をブロックする」わけではないという点です。広告の表示自体は、これまでと変わらないとしています。

サービス提供の意図について、mineoは「我々もデジタル広告を出稿している。広告のおかげで生活が便利になっていること、良質なコンテンツが生成されていることも事実。広告の良さは活かしつつ、通信事業者らしく、通信量の部分に着目した」(オプテージ コンシューマ事業推進本部 モバイル事業戦略部の田村慎吾氏)と語っています。

mineoとしては通信量を減らすサービスを無料で提供することになり、減収につながる可能性については、「パケット不足がなくなることによる解約抑止、付加価値向上による新規獲得の増加が見込めるため、収支への影響はない」(同モバイル事業戦略部長の福留康和氏)と説明しています。

広告との「共存」にもプラスの効果か

インターネットのサービスにおいて、デジタル広告の存在は切っても切り離せないものといえるでしょう。

しかし、広告の表示がユーザーごとにしっかり最適化できているかといえば、まだまだそうではない場面も見かけます。

消費者にとって、興味がない広告を見せられた上に、データ容量まで消費させられるというのはいかにも損をした気分になり、広告を嫌う人は増えるばかりです。

このうち、広告フリーによってデータ消費の問題を緩和できるならば、広告や広告によって運営されるサービス全体にとって、プラスの効果を期待できそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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