証人の認識と食い違う調書に弁護士「検事の誘導でしょ」と一刀両断
籠池夫妻の公判、18日は森友学園の小学校認可申請をサポートしたコンサルタント会社の代表が証人に。ところが一向にぐっとくる話が出てこない。終わりも近づき「これは記事は無理かな」と思い始めた矢先、どかんと新事実が。やはり“籠池劇場”は最後まで何が起きるかわからない。
金額の食い違う申請書「不正ではない」
森友学園が出した小学校の認可申請書には建設費は4億円と記載されていた。実際はこの時点で7億円余りと見積もられていたが、設置基準をクリアするためだったという。公判担当の宇賀博道検事の尋問で代表は次のように証言した。
「4億円の見積書作成は申請を通すためでした。実際の金額と違うというのは、最終的には理事長(籠池元理事長)が決めました」
「実際の金額とは違いますが、将来差額のところを一致させることができると考えていました。業者の協力で何とかなると思っていました」
これは、金額が食い違っていても、将来は一致させることができるから、不正にはあたらないという認識だ。
証人の認識と食い違う供述調書
これについて水谷恭史弁護士は反対尋問で検事の取り調べ状況について尋ねた。
「あなたの取り調べの担当は沖検事で、8回にわたって取り調べを受けていますね。その途中から録音録画が始まっていますが、そのきっかけが、あなたが相談した弁護士からの抗議書だったことを知っていますね」
「取り調べが長時間でしんどかったんです。仕事に差し障ります」
「私が主張することが一部受け入れて頂けなくて」
水谷弁護士は、取り調べの録画の中で、沖検事が「弁護士の抗議を受けるのは心外」「そんなに強く言いましたか?」「長時間と言われるのも心外」などと話していたと指摘。4億円の申請が不正な申請でうその金額だと思っていたのかを尋ねた。すると
「(取り調べ内容をまとめた)文書を読み聞かせされて、ニュアンスが違うとやりとりしました。4億円はうその金額ではなく、帳尻を合わせられる金額です」
「沖検事の調書では?」
「主張が認められて、調整可能(だから不正ではない)と書いてもらいました。私の認識に合わせて、そういう風に(=不正ではない)理解してもらいました」
「沖検事が作ったあなたの供述調書には『4億円というウソの内容を記載していました』とありますよ」
「業者に協力してもらえばできるので、虚偽申請と思っていたわけではありません。違法ではありません。調書は読み聞かされただけで読んでいないのでよくわかりません」
「沖検事は正確に書いたと思われますか?」
ここで宇賀検事が「異議あり。聞く必要がありません」
ところが野口卓志裁判長は即座に異議を棄却。代表は証言を続けた。
「私は違法なものではなく、何とか調整できると取り調べでも言いました。私がどう思ったか書いてもらったのでサインしました。ウソというだけならサインしていません」
弁護士は「検事の誘導でしょ」
法廷が終わった後、水谷弁護士に尋ねた。
「あの調書のことをどう受けとめています?」
「検事の誘導でしょ」
一刀両断であった。
籠池氏「証人との絆は変わらない」
ところで、この日の公判ではもう一つハプニングがあった。お昼の休憩が終わって審理が再開される際に、野口裁判長が籠池元理事長に釘を刺したのだ。
「さきほど閉廷後に証人にあいさつしたそうですね。証人にあいさつはしないようにしてください」
言葉はあくまで柔らかく丁寧だったが、籠池氏は立ち上がって裁判長の方に頭を下げた。
籠池氏によると、法廷で証人が会釈したので返したとのこと。証人については、ともに小学校開校をめざした同志という思いが強いという。
ここで一句。
「開校を 共に励みし かきつばた」
かきつばたの歌は伊勢物語に出てくる。妻と別れて東に向かう思いをうたっている。かつての同志が検察側の証人となって現れたが、いつまでも絆は変わらないという思いを込めたという。