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開幕戦でいきなり「走者を追い越し」ホームランを取り消される。幻となったこの1本は後々響いてくる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
コディ・ベリンジャー Apr 1, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールドシリーズ連覇に向けたシーズンは、椿事で幕を開けた。

 3回表の1死一塁から、ロサンゼルス・ドジャースのコディ・ベリンジャーが弾き返したボールは、ジャンプしたレフトのグラブに収まったものの、そこからスタンドへ飛び込んだ。先制の2ラン本塁打だ。

 けれども、一塁走者のジャスティン・ターナーは、この打球が捕球されたと思った。すでに二塁を回っていたターナーは、一塁へ戻ろうとして、二塁まであと数歩のところに来ていたベリンジャーに気づかず、駆け抜けていった。

 その結果、走者を追い越したとして、ベリンジャーのホームランは取り消された。ターナーは生還し、この一打は、打点1のシングル・ヒットとなった。ベリンジャーではなく、ターナーのミスだが、ルールはルールだ。試合は、5対8でドジャースがコロラド・ロッキーズに敗れた。両チームとも、ホームランは0本だ。

 こうした追い越しは、過去にも起きている。ただ、開幕戦では、もしかすると初めてかもしれない。ちなみに、違うパターンの「幻のホームラン」だが、1999年のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズでは、第5戦の15回裏にロビン・ベンチュラが「サヨナラ・グランドスラム」を打っている。一塁を回ったところでチームメイトの祝福を受け、ベンチュラは二塁にたどり着けなかった。

 ベリンジャーは、2017年に39本塁打、2019年は47本塁打を記録し、それぞれ、リーグ2位と3位にランクインした(2017年は新人王、2019年はMVPを受賞)。どちらのシーズンも1位とはかなりの差があったが、いつ本塁打王を獲得してもおかしくないスラッガーだ。もっとも、今シーズンは、この幻の1本によってタイトルを逃すことになりかねない。

 なお、ほぼ直立の構えはそのままながら、今春から、ベリンジャーはオープン・スタンスに変更している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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