【速報】38億円の支払い求め提訴 危険運転で全身まひの23歳女性が取り組む先端治療とは
■頚髄損傷で四肢まひの障害を負った女子大生
危険運転による交通事故で、四肢まひの重度障害を負った名古屋市の石田陽子さん(仮名/23)が、12月20日、加害者側を相手に約38億円の損害賠償を求め、名古屋地裁に提訴しました。
本件事故については2021年、以下の記事で報じました。
<危険運転の被害で女子大生が全身麻痺に 再生医療に希望を託す両親の苦悩【親なき後を生きる】) - エキスパート - Yahoo!ニュース>
事故は、2019年10月10日、22時半頃、広島県東広島市高屋町稲木の路上で発生しました。大学生の男(当時18)が購入して間もない乗用車を運転し、一般道を時速150キロで走行。緩やかなカーブを曲がりきれずに単独で横転し、助手席に乗っていた男性が重傷、後部座席に同乗していた陽子さんは車外に投げ出され、第5頸椎圧迫骨折などの重体となったのです。
運転していた男は自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪で起訴され、懲役2年8月の実刑判決が確定。現在、服役中です。
■なぜ訴額は「38億円」になったのか
さて、今回の提訴報道が流れると、38億円という高額な訴額に驚きの声が上がり、さまざまなコメントが寄せられています。
確かに、交通事故でひとりの被害者が請求する金額としては、過去にも例を見ない高額なものといえるでしょう。
記者会見で明らかにされた訴額の内訳は、これまでにかかった治療費、慰謝料、逸失利益、弁護士費用など約5億円、これに加え、将来かかるであろう治療費や介護費用、交通費などを、1カ月約510万円として、女性の平均余命(83歳)まで、約60年間支払うよう求めているとのことです。
この事故で頸椎を損傷した陽子さんは、重度後遺障害を負い、全身の運動機能と感覚が失われました。しかし、将来に向け、少しでも機能回復をはかりたいという望みをかけ、事故後、先進医療による治療に取り組んでいます。
その一例として、以下の動画をご覧ください。
以前にも紹介しましたが、これはCyberDyne(サイバーダイン)社が開発したHAL(ハル)というロボットを使っての下肢の訓練の模様で、陽子さんは同社が運営するロボケアセンターにたびたび出向き、専門のトレーナーのサポートを受けてきました。このほか、遠方の大学病院にも出向き、最新の再生医療も受けています。
しかし、こうした医療は、日本の保険制度では認可されていても、保険適用にならないものがあります。国の対応を待っていては治療もリハビリも進まず、体や筋肉は縮退して寝たきりとなってしまいます。
■自宅を売却して高額の治療費を捻出
父親の石田隆さんは、こう語ります。
「ロボット治療や再生医療等にかかる必要な費用については、加害者側が起こした調停によってその支払いを拒否されました。私たち被害者は自宅などの資産の売却してなんとか工面しています。いったい、何のための『無制限保険』なのでしょうか。刑事裁判では『十分に補償する』と言って減刑を図りながら、実際には支払いを拒否し、さらにもうこれ以上治癒の見込みがないと症状固定を強要してきたのです。彼らの対応には混乱をするばかりですが、人としての対応を望むばかりです」
また、石田さんは事故後の加害者側とのやり取りから、損保会社の立ち位置やその行為についても大きな問題を感じていると言います。
「調停などの文書には、加害者側の損保会社の会社名は一切出てきません。これは非弁行為を避ける、またはそれを回避する口実ではないでしょうか。答弁書や調停の文書は明らかに損保会社が書いたものであり、これは弁護士法に違反しています。私たちの事件に限らず、加害者は我々被害者の状況すら知らない可能性も高いと考えられます。DAA日本損害調査協会 代表理事の中谷様からも助言をいただきながら整理すると、自分たちの置かれた状況がわかってきました」
自分には何の落ち度もない突然の交通事故で、全身の自由を奪われた被害者が、一縷の望みにかけ、回復のために可能性のある治療やリハビリに取り組みたいと願うのは当然のことでしょう。
今回の提訴により、これまでの交通事故の判例に一石を投じることができるのか、また、『無制限』の任意保険は、こうした被害者の切実な訴えにどこまで対応できるのか……。
石田さんは語ります。
「損保会社、国、裁判所には、被害者を置き去りにした『ブラックトライアングル』ともいうべき制度を改め、正しい判断を行っていただきたいと思います。ちなみに、この『「ブラックトライアングル』という言葉は『改訂版 ブラックトライアングル 温存された大手損保、闇の構造 』( 谷清司著)、 『国・裁判所・保険会社の不合理な真実 虚像のトライアングル』(平岡将人著)より、著者の承諾を得て引用させていただいております」
今後の裁判のなり行きに注目していきたいと思います。
<関連記事>