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【NIKE AACレポート】バスケットボールセンスの高さを発揮してオールスターに選ばれた大倉

青木崇Basketball Writer
ピック&ロールで持ち味を発揮していた大倉 (C)Takashi Aoki

NIKE ALL-ASIA CAMP 2017に日本から参加した5人の中で、北陸学院の大倉颯太だけが高校3年生。昨年似たタイプのキャンプを経験したこともあり、「(慣れは)多少あったんですけど、毎月毎週というわけではないので、何回やっても難しいものだなと思います」と話したものの、言葉の壁以外はすぐに順応していた。

ポイントガードでプレイしたこのキャンプでは、普段から学校で使っているピック&ロールを主体としたゲーム、ドリルを多くやっていたこともプラスに働いた。特にスクリーンを使って抜いてから自分でフィニッシュに行くところと、キックアウトなどのパスをするかの判断が、日を追うごとによくなっていく。「ゲームメイクはそれなりにできましたし、ドライブアタックやシュートも全然通用したと思いました。劣っていると思ったのはスピードだと思います」という言葉からも、自身が持っているスキルは十分発揮できたと言っていい。

キャンプ最終日に行われた15分1本のトーナメント形式で行われるゲームで、大倉は所属していたチームの優勝に貢献。特に決勝戦では残り2分15秒で3Pシュート、逆転された直後の残り42秒で速攻からレイアップ、残り10秒で勝利を決定的にするフリースローを2本決めるなど、終盤に存在感を示すことに成功した。日本や過去に参加したキャンプにない高さへの順応については、「日本にはない高さで、留学生よりも大きい相手だった。だいぶ苦労したというか、そこは初の経験だったところはあります」と振り返る。しかし、前述したように無理なフィニッシュには行かず、的確な状況判断からチームメイトを生かそうしたあたりは、昨年のウィンターカップで感じた賢い選手という印象を再認識することができた。

「日本と違った環境でやるのは、すべて自分にとってプラスになると思います。喋れない人とのコミュニケーションの取り方とか、練習を盛り上げるためにどう工夫するかとか、そういうのをいろいろな国のトップ選手やNBAのトップのコーチにレクチャーされて自分のものにできた。それが課題だった部分でもあったので、刺激を得たのは大きいです」

キャンプをこう振り返った大倉は、NBAのアシスタントコーチが見ている環境で、自身をアビールすることの大事さを学んだ。言葉の壁があったとしてもわかる範囲の英語で声を出し、ドリルやゲームのときにコーチの近くに行って目を見ることを意識。その結果は、いいプレイをすればハイファイブをしてもらえたり、ゲームでより信頼されるという形に出ていた。60人にいる参加者の中で目立つために、大倉はいろいろと考えていたし、通訳としてキャンプに来ていた元プロ選手の稲垣敦に対しても積極的に話しかけ、いろいろ学ぼうという姿勢も好感が持てた。

「夢のようでした。ワクワクしました。(一番楽しかった)そうですね。近くにいたんで。最高でした」と語ったように、大倉はキャンプ終盤にはサクラメント・キングスのバディー・ヒールドと一緒にドリルをする機会も経験。また、キャンプの後半におけるゲームで質の高いパフォーマンスを見せたことで、20人のオールスターにも選ばれた。

「入ったことは評価されたということでうれしいですし、一つ一つのゲームでもよくなっていったと自分でも思います。何がよくなったかと言えば、シュートや積極性以外で評価されたというところ。最初は積極的に行こうと考えていましたけど、日に日に変わっていって、周りを生かしていったり、コミュニケーションをとったりとか、時間と点差の対応で評価されたことが、オールスター選考基準だと思いました。すごくうれしいですけど、即席チームということでは、国も違うし言葉も違うだけであってやりにくい部分もありましたし、40%くらいのパフォーマンスしか出なかったというのが、ちょっとあれ(悔しい)ですね」

このコメントから後半を見ればわかるように、大倉自身はキャンプ全般のプレイに決して満足していない。しかし、北陸学院でやってきたピック&ロールが生かすことができたことに加え、「戻ってこれをやりたいというのもあったので、いい経験でした」と、新たなやり甲斐を見つけ出せたことでも、キャンプに参加した意味があったと言える。インターハイとウィンターカップでは、一回りレベルアップした姿を見せてくれることを期待したい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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