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この球団が36歳の先発投手2人と契約を交わしたのは、山本由伸に大枚を投じるためなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
カイル・ギブソン Jul 15, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 セントルイス・カーディナルスは、立て続けに2人の先発投手を手に入れた。11月20日にランス・リン、翌日にカイル・ギブソンだ。ギブソンとの契約は、まだ締結していないが、USAトゥディのボブ・ナイテンゲールらが合意を報じている。

 リンもギブソンも、実績のあるベテランだ。どちらも、通算100勝以上を挙げている。また、今シーズンは、2人とも、180イニング以上を投げた。

 ただ、今シーズンの防御率は5.73と4.73。150イニング以上の58人中、ワースト2位とワースト10位だ。昨シーズンは、リンが121.2イニングで防御率3.99、ギブソンは167.2イニングで防御率5.05だった。現在の年齢は、ともに36歳。リンは、来年の5月中旬に37歳の誕生日を迎える。ギブソンは、先月下旬に36歳となった。

 リンの契約は1年1100万ドルだ。年俸1000万ドルに、パフォーマンス・ボーナス(出来高)と2025年の球団オプション、年俸1100万ドル(解約金100万ドル)がついている。ギブソンの契約も、そう違わないようだ。ESPNのジェシー・ロジャースによると、年俸1200万ドルと球団オプションだという。

 このまま、来シーズンの開幕を迎えた場合、ローテーションには、マイルズ・マイコラススティーブン・マッツ、リン、ギブソンの4人が並び、あとの1枠は、若手のマシュー・リベラトーリザック・トンプソンが入るだろう。

筆者作成
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 カーディナルスは、2019年から2022年まで、4年続けてポストシーズンに進出していた。だが、今シーズンは、1990年以来の地区最下位に沈んだ。2地区から3地区となった1994年以降では、初の最下位だ。そこからの浮上をめざすには、心許ないローテーションに見える。マイコラスの防御率4.78は、150イニング以上のワースト9位なので、今シーズンの防御率ワースト10のうち、3人がカーディナルスに集結、ということになる。

 それほど高額ではない1年契約でリンとギブソンを迎え入れたのは、ここから大枚を投じ、エースとなり得る投手を手に入れるためではないだろうか。そのターゲットの一人には、山本由伸(オリックス・バファローズ)が挙げられる。

 長期の構想にも、山本はフィットする。リベラトーリとトンプソンは、どちらも、今シーズンがメジャーリーグ2年目だった。それぞれのドラフト順位は、2018年の全体16位と2019年の全体19位。リベラトーリは、2020年1月にタンパベイ・レイズから移籍した。来シーズンの年齢(6月30日時点)は、24歳と26歳だ。山本は25歳なので、年齢は近い。

 カーディナルスが山本を手に入れたとしよう。山本がメジャーリーグでも好投し、あとの2人が揃って開花すれば、カーディナルスは、そこから数シーズンにわたり、ローテーションの1~3番手を確定できる。山本と2人の一方でも、ローテーションのトップ2、両輪が揃う。

 マイコラスとマッツは、来シーズン、35歳と33歳だ。彼らは、2025年のシーズン終了後にFAとなる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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