EV先進国ノルウェー、議論は優遇策からバッテリー生産の環境負荷へ
北欧ノルウェーの首都オスロで気候会議「ゼロ・カンファレンス」が開催された。現地の政治家や企業など、気候危機対策を早急に進めたいリーダーたちが毎年集まり、政策提案や議論をする場だ。
ロシアなどの影響を受けて、今回はエネルギー政策が主要テーマとなり、ノルウェー現地での排出量を減らすための対策、風力発電、水素エネルギー、船や工事車両の電動化などが話し合われた。
石油を掘る国でもあるが故、「石油とガスを止める前に、まずは代替エネルギーを」と、「石油とガス」という言葉は現場で飛び交っていた。
EV先進国でもあるため、EVの話題はお馴染みだが、関係者の注目は「EV優遇策」から「電池」へと移っていたのが印象的だった。バッテリー生産で発生する環境負荷と問題について、これほど深く指摘されている様子を筆者は初めて見た。
主催者であるゼロ財団の交通手段担当のイングヴィル・ロルホルト氏は「店頭で『排出量が最も少ない車はどれですか』と聞いても、無理がある。なぜなら、EVのバッテリー生産に関しての透明性や規制のスタンダードが存在していないから。EUが行動するまで待っている時間はない」と語った。
EUが進めている炭素フットプリントやライフサイクル寿命など情報を記載する「バッテリー・パスポート」にも話題が及び、「これからはバッテリー・パスポートは人権と同じくらい重要なものとなる」「市場競争に変革が起きる」という指摘もでた。
政治家と若い世代の代表の意見交換では
トップの政治家や大人の企業リーダーの出席者が多いゼロ会議でも、若者の声を取り込もうという姿勢は忘れられず、国内最大級の若者の環境団体「自然と青年」も参加。
代表のギーナ・ギルベル氏(21)は「ノルウェー大陸棚における石油・ガス活動を規制するためにも、グリーン産業へと人が移行しやすいようにするのが政府の仕事」「高い数値目標は好きだが、空砲なら意味がない」と、決定権がある大人の行動に危機感やスピードが欠けていると意見した。
対して、タリエ・オースラン石油・エネルギー大臣(労働党)や保守党の国会議員などからは「ノルウェーに石油は莫大な利益をもたらしており、自然エネルギーは同じような利益を生まない。中国などと競争するためにはもっと賢くあらなければ」「ノルウェー大陸棚をまずは電動化」などの回答が出た。
「未来は私たちの手に」団体のリーセ代表は、ノルウェー政府は市民の消費ライフスタイルにおけるガイドラインを出すべきだと提案。
ゼロ会議の開催中は米国発「ブラックウィーク」で街中がセール一色となり、無駄な消費行動で消費量が莫大することが現地メディアで議論されているところでもあった。
EVはノルウェーが好む気候・環境対策だが、EV利用を続けるためにも、バッテリー生産の問題から目をそむけてはならないと、議論が進んでいる印象を受けた1日だった。