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冬季五輪を迎える北京でオミクロン株によるコロナ拡大の危険も

宮崎紀秀ジャーナリスト
PCR検査を待つ市民の列(2022年1月9日天津)(写真:ロイター/アフロ)

 冬季オリンピックの開幕まですでに1か月を切る中で、五輪開催地の北京に隣接する天津でオミクロン株によるコロナの感染が拡大。中国当局は必死に抑え込みを図るが、感染が密かに進行したことを考えれば、オミクロン株がすでに北京に流入している可能性がある。

まもなくオリンピックなのに...

 来月2月4日に北京冬季オリンピックの開幕を控える中国だが、ここに来てコロナの感染拡大が不安要素になっている。中でも、北京に隣接する天津でオミクロン株による感染が確認された事態は、オリンピックを成功させたい中国にとっては油断できない。北京と天津は、中国版新幹線に乗ればわずか30分の近さだ。

 天津で初めてオミクロン株による2人の感染が確認されたのは、1月8日の早朝。いずれも海外渡航歴はなく、中国国内での感染とみられた。

封じ込め対策をとるが...

 天津当局は、同日には感染者の居住地など、感染の危険性が高い地域を封鎖。市民に対して、天津から他の都市への不要不急の移動はしないよう命じた。また、翌日9日の朝から約1400万人の全市民を対象にしたPCR検査を開始するなど、抑え込みに向けた素早い対応を見せた。ちなみに天津では、8日には上記の2人以外に18人の新規感染が確認された。

 一方、北京市は9日以降、天津で感染の危険性のある地域を訪れた人が北京に入ることを厳しく制限すると発表。同時に、前年12月23日まで遡り、それ以降に同様の地域を訪れていながら、すでに北京に入ってしまった人には、自宅隔離やPCR検査を受けるなどの防疫措置を命じた。

だがそれ以前に感染者が自由に移動...

 天津でオミクロン株の感染が確認されたのは8日だったが、その後、河南省の安陽では、天津に訪問歴のある大学生が、このオミクロン株に感染していたことが分かった。この大学生が安陽に戻ってきたのは、前年の12月28日だった。つまり、天津が移動制限などの措置を講じる前に、感染者が移動できていた事実が明らかになった。

 天津の衛生当局者も、国営中国中央テレビの番組で、その点を認めている。天津で8日オミクロン株の感染を確認した段階で、すでに3次症例まで進んでいたことが判明したとしており、密かに感染が進行していた期間が、15日から21日間はあった可能性を指摘した。

移動先は北京...

 更に、中国メディアによれば、中国大手検索エンジン「バイドゥ」が提供する、人の移動を可視化するシステムによって、1月1日から7日までの天津からの人の移動先は、北京や距離的にも近い河北省の廊坊市、唐山市などに集中していた。つまり、元旦から天津でのオミクロン株の検知以前の移動だ。1日と2日を除けば、いずれの日も移動先として北京が最も多かったという。

 こうした事実を考えれば、オリンピックを前に厳戒態勢をとる北京だが、感染の拡大を許す可能性は否定できない。北京としては、東京オリンピックではできなかった観客を入れての競技も実現し、コロナ対策の優位性もアピールしたいところだろうが、ここで重視すべきは、面子よりも人々の安全だ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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