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【スーパーフォーミュラ】史上最も予測不能なシーズン始まる。第3戦・鈴鹿で今季の流れを掴むのは誰だ?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
スーパーフォーミュラ【写真:JRP】

国内最高峰のフォーミュラカーレース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」(以下、スーパーフォーミュラ)の2022年シーズンが4月9日、10日に富士スピードウェイで開幕。初戦からいきなり熱いバトルが展開された。

今年は国内最高峰フォーミュラカーレースが50周年にあたり、次世代に向けた変革プロジェクト「SUPER FORMULA NEXT 50(ネクストゴー)」が始まったが、まさに50年という節目の集大成となる歴史的なシーズンになりそうだ。今回は4月22日、23日に鈴鹿サーキット(三重県)で開催される第3戦をプレビューする。

ランキング首位は王者の野尻智紀

今季のスーパーフォーミュラは1ラウンド2レース制のイベントが設けられ、全7ラウンド10戦でシリーズチャンピオンを争うことになっている。

2レース制で開催された開幕ラウンド・富士スピードウェイでは昨年王者の野尻智紀(Team MUGEN/ホンダ)と昨年ランキング4位の平川亮(carenex Team IMPUL/トヨタ)がレース1で激しいトップ争いを展開。レース1は平川がバトルを制して優勝した。

平川亮【写真:JRP】
平川亮【写真:JRP】

続く第2戦では予選の上位10台が0.5秒以内にひしめき合う大混戦の中、野尻がポールポジションを獲得。気温23度という季節外れの陽気の中で開催された決勝ではポールポジションから野尻智紀(Team MUGEN/ホンダ)が優勝。そして平川はなんと8番手スタートから野尻に1.6秒差に詰め寄る2位まで追い上げて2戦連続の2位表彰台を獲得した。

野尻と平川の2人が1位と2位を分け合う形で開幕ラウンドを終えたが、現在は予選の上位3台にポイントが与えられるため、獲得ポイントでは第2戦でポールを獲得した野尻智紀(Team MUGEN/ホンダ)=38点が首位、平川亮(carenex Team IMPUL/トヨタ)=36点が2位。ランキング3位には予選、決勝ともに上位につけた宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S/トヨタ)=19点がつけ、野尻と平川が獲得ポイントでは一歩リードしている形だ。

チャンピオンでポイントリーダーの野尻智紀【写真:JRP】
チャンピオンでポイントリーダーの野尻智紀【写真:JRP】

このまま2人のチャンピオン争いの構図になっていくのか、と誰もが予想するレースだったが、まだ断定はできない。なぜなら事前のテストで鈴鹿、富士ともにトップタイムをマークした坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)が中段争いに沈んだ。逆に鈴鹿のテストで中段に埋もれていた「Kuo VANTELIN TEAM TOM’S」の宮田莉朋ジュリアーノ・アレジがトップ10圏内でレースをしたりと、今季もタイム差が接近しすぎていてレースウィークの蓋を開けてみないと展開が読めないのだ。

1レース制が続くのは逆転の好機

第3戦・鈴鹿以降は7月の第6戦・富士まで1レースのみ開催のレースが続く。土曜日に予選を行い、日曜日に決勝レースを行う、通常通りのレースフォーマットだ。

2レース制で行われるイベントは土日ともに予選、決勝が行われるため、チームの動きも慌ただしく、データ解析ができる時間も限られるため、セッティングがうまくいっていないチームは決勝でも浮上のキッカケを掴みづらい。だが、1レース制であれば土曜日のデータを分析し、日曜日の朝のフリー走行で試し、上手くいけば決勝で逆転を期することができる。

TCS NAKAJIMA RACINGの大湯【写真:JRP】
TCS NAKAJIMA RACINGの大湯【写真:JRP】

開幕ラウンド・富士で振るわなかったチームにとってみれば、修正点を一つまたひとつと潰し、コツコツとポイントを積み上げていくチャンスがあると言えるだろう。

開幕ラウンドが驚くほどの不振に終わったのが中嶋悟監督率いる「TCS NAKAJIMA RACING」(ホンダ)だ。山本尚貴大湯都史樹というスーパーフォーミュラを代表するドライバーを擁しながら、予選で後方に沈み、大湯がレース1で7位に入ったのが最高位だった。

レースを終えて山本、大湯ともに「このままでは難しい状況」というニュアンスのコメントをチームリリースで発表。昨年から山本が上位でレースができない状況が続いていたが、昨年の開幕戦・富士で2位に入った大湯までもが原因不明のスランプに陥ってしまったのは実に不可解。第3戦・鈴鹿は山本、大湯ともに同チームで優勝を飾っているコースだけになんとか浮上のキッカケを掴んで欲しいものだ。

TCS NAKAJIMA RACINGの山本(左)【写真:JRP】
TCS NAKAJIMA RACINGの山本(左)【写真:JRP】

かつてはチーム力に大きく差があったものだが、今は弱小チームというのがほぼ存在しないに等しいスーパーフォーミュラ。名門チーム、数年前に好成績を残したチームであろうとも一気に後方にドボンしてしまうほど激しい競争が影で行われているのだ。

テスト走行のデータが豊富にある鈴鹿のあとは、どのチームも走行マイレッジが少ないオートポリス、SUGOでレースが行われる。鈴鹿で改善の兆しを見せ、オートポリス、SUGOで逆襲し、7月の第6戦・富士でどのチームが形成逆転を図ってくるかも注目だ。

鈴鹿は三宅の地元レース、TEAM GOHに注目

名門チームが苦戦する一方で、鳴り物入りでスーパーフォーミュラに参戦した「TEAM GOH」が躍進したのも開幕戦の大きなトピックスになった。

佐藤蓮(TEAM GOH)【写真:JRP】
佐藤蓮(TEAM GOH)【写真:JRP】

「TEAM GOH」は2004年にル・マン24時間レースを制した郷和道が創設したレーシングチーム。耐久レースやSUPER GTなどに参戦し、今季からスーパーフォーミュラに本格参入することになった。といっても、昨年、大津弘樹を起用して優勝した「Red Bull MUGEN Team Goh」として参戦していたし、メカニックなどの実働部隊はそのまま「TEAM GOH」へとスライドしているので、全く未経験のチームではない。

しかし、チームとして独立しての参戦は昨年12月に話し合われて決まったことであり、まさに急拵えの体制。しかも起用するドライバーは佐藤蓮三宅淳詞というルーキー2人。そこに監督として昨年までホンダF1のマネージングディレクターを務めた山本雅史が加わったことで、ミラクルが起こり始めているのである。

2021年までホンダF1で活躍した山本雅史(右)
2021年までホンダF1で活躍した山本雅史(右)写真:ロイター/アフロ

ホンダF1の顔として知られる山本雅史監督はホンダの会社員であると同時にレーシングカートの最高峰「全日本カート選手権」でトップドライバーとして活躍した。サラリーマンである以前に生粋のレーサーだった人物で、つまりレースで勝つために何をすべきかを心得え、ドライバーの気持ちを理解できるのだ。

開幕ラウンド・富士ではその「TEAM GOH」が驚くべき活躍を見せた。開幕戦では佐藤蓮(TEAM GOH/ホンダ)が予選2位を獲得。そして、第2戦では三宅淳詞(TEAM GOH/ホンダ)が予選9位から決勝5位まで追い上げ、2戦連続のポイントを獲得した。

三宅淳詞(左)【写真:JRP】
三宅淳詞(左)【写真:JRP】

三宅淳詞は鈴鹿サーキットのある三重県・伊勢市の出身。2018年にホンダの育成プログラム「SRS-F」を首席で卒業してスカラシップを得るも、2020年からはそのルートを外れ、独自の道を歩んだ。コロナ禍でメーカー枠を外れた若手がレース活動をしづらい状況であったにも関わらず、奇跡的に手にしたスーパーフォーミュラのチャンス。第2戦・富士で5位入賞を果たした三宅が地元の鈴鹿でどんな走りを見せるか、期待が高まる。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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