「気弱なリーダー」が抱える2つの問題 気弱にならないコツとは?
以前、不思議だと思ったことがある。
それは、どんなに偉業を成し遂げた人でも、どこか気弱で、人前で緊張することがあるのである。
オリンピックで銅メダルを取った方と対談した経験がある。私にとっては雲の上の存在であり、その人生の歩み自体が偉業であった。だが意外にもその方はビクビクしており、こちらが気を遣うほどであった。取材を担当したメディアの方のほうが堂々としている印象があった。
また、革新的な商品を世に出した開発者や、5000人を超える企業に成長させた起業家のような成功者の中にも、意外とオドオドしていて、気が小さい方がいる。
気弱の反対は「気丈」である。「気丈夫」とも言う。
どんなに困難なことがあっても、緊張する場面でも、気丈に振る舞う人がいる。心が落ち着かない状態を相手に見せないよう、自分の態度、姿勢を飾る。気丈な人は「強い人」と言える。単純で鈍感な「鈍い人」とは異なる。
■気弱なリーダー2つの問題
ビジネスでリーダーシップを発揮する際、場合によっては気丈に振る舞うことも重要だ。そうでないと以下2つの問題を抱える。
(1)部下からの信頼が失われる
(2)対外的な影響力が低下する
社長から叱られたり、お客様からクレームを受けたり、部下が不安そうに「どうでしたか?」と尋ねてきたとき、
「私の責任でもないのに社長に呼び出され、1時間も説教された。管理者になって、いいことなんか一つもない」
と愚痴ったり、
「お客様にメチャクチャ怒られた……。私には向いてないよ、こういう役割は」
と弱音を吐いたりすると、部下は幻滅するだろう。
部下についていきたいと思われる上司になるには、
「お前は気にしなくていいんだよ」
と一言、気丈に言うだけで良いのである。
「社長はなんと言ってましたか?」
「私のせいでお客様にこっぴどく叱られたんじゃないんですか?」
と問われても、
「そんなことはない。目の前の仕事に集中しろ」
と気丈に振る舞えば良いのだ。たとえ部下のせいで理不尽なことを社長やお客様に言われていたとしても、である。
■「気弱」にならないコツ
過去どんな偉業を成し遂げた人でも、「気弱」になるシーンはある。
それは慣れないことをするときである。オリンピックに出場する選手でさえ、世界が注目する大舞台で活躍する人でさえ、インタビューではうまく話せなかったり、気の利いたことを取材時に話せなかったりすることがある。
それは単純に慣れていないからである。
私はビクビクすることと、ビックリすることを別に考える。
たとえば研修を受講しているとき、突然講師から
「あなたはこのことをどう思いますか?」
と質問されるとビックリする。心の準備ができていないからである。しかし、事前に講師から
「講義中、たまに当てますから覚悟しておいてください」
と言われていたら準備ができる。
「ここで当てられたら何を言おう」
「こういうケースでは、こう答えたらいいだろう」
と常に考えることができる。
もともとの性格が「気丈夫」であれば良いが、そうでない場合は常に「準備」しておくことだ。
■できることは「準備」しかない
部下の失敗のせいで社長から呼び出され、
「上司のお前がしっかりしていないからこうなるんだ!お前の責任だぞ、バカ野郎!」
と怒られると、さすがに怒りが湧く。
「なぜ部下のせいでここまで言われなくちゃいけないんだ」
と理不尽な社長に対して怒りを感じるだろう。この不満を部下にぶつけたくなる気持ちも出てくるはずである。
しかし、このような事態が社長に呼び出されたときから想定できていればビックリすることはない。社長に
「そんなこと言われても私の責任ではありません。100%部下の問題です」
と言わず、ただ、
「申し訳ありませんでした」
と気丈に頭を下げられるはずである。長い目で論理的に判断すると、その方が丸く収まると考えた場合である。そして、部下から
「社長、なんて言ってましたか?」
と問われても、
「心配しなくていい。目の前の仕事に集中しろ」
と凛とした態度で答えられる。
ビックリすることは鈍感でない限り難しいが、ビクビクすることは、事前に準備することで回避できる。
チームリーダーなんだから、こういう役回りをすべきときもある。社長に苦しい言い訳をしたり、部下に不満を口にしていたら誰からもリスペクトされない。
リスペクトされなければ、チーム運営がうまくいかず、長い目で見るとストレスをためることになる。ここは気丈に振る舞おう。衝動的な態度だけは避けよう、と柔軟に考えるべきだ
気丈に振る舞うためには、衝動的にならないよう「心の準備」が不可欠である。「心の準備」を繰り返すことで「状況判断能力」は鍛えられていく。