レアル・マドリーを率いるジネディーヌ・ジダン監督は、2020－21シーズンに向けて新たな構想を練っているのかも知れない。

19－20シーズンのリーガエスパニョーラを制したマドリーだが、この夏は補強を敢行せずに静かな日々を過ごしている。新型コロナウィルスの影響で財政が圧迫される中、無理はしないというのがフロレンティーノ・ペレス会長の判断だ。

マドリーはすでにマルティン・ウーデゴールのレンタルバックが決定している。一方でダニ・セバージョス（アーセナル）のレンタル延長、ハメス・ロドリゲス（エヴァートン）の移籍金2500万ユーロ（約31億円）での売却が決まった。

19－20シーズン、マドリーはフェデリコ・バルベルデが台頭した。それによりカゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチとジダン・マドリーで中核を担ってきた選手たちの序列が崩れ始めた。契約期間を残り1年としているモドリッチに関しては去就に注目が集まったが、19－20シーズン終盤の好パフォーマンスと指揮官の信頼を根拠に残留する運びとなっている。

だが深刻なのはカゼミーロの代役探しだ。19－20シーズン、カゼミーロは公式戦46試合出場（出場時間4080分）。事実、マドリーはアンカーを確保するためにレンヌのエドゥアルド・カマヴィンガに関心を示していた。ただ、移籍金7000万ユーロ（約87億円）前後でこの夏に彼を獲得するのは現実的ではなかった。

ジダン監督は「人」ではなく「形」で問題の解決策を見いだす必要があるだろう。カゼミーロ不在の試合ではワンボランチを使うのは難しい。【4－2－3－1】あるいは【4－4－2】といったシステムでダブルボランチを使うことを検討しなければならない。

■ベイルとレギロンの去就

また、現在マドリーを悩ませているのが、ガレス・ベイルとセルヒオ・レギロンの去就だ。

ベイルは2013年夏に移籍金1億ユーロ（約124億円）でマドリーに加入。しかしながら度重なる負傷に苦しめられ、プレミアリーグで放っていたような輝きをリーガでは見せられなかった。いま、古巣のトッテナムが移籍先候補として浮上している。レンタル移籍が濃厚だが、争点は1700万ユーロ（約21億円）といわれるベイルの年俸をマドリーとトッテナムのどちらが負担するかになっている。

レギロンについては、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムが関心を寄せていた。トッテナムが移籍金3000万ユーロ（約37億円）で獲得に近づいている。一方でマドリーは買い戻しオプションを付け、将来的なレギロンの復帰を視野に入れている。

マドリーは今夏、アクラフ・ハキミを移籍金4000万ユーロ（約50億円）でインテルに売却している。アクラフとレギロンという2人の有望なカンテラーノを売り切ってしまうのは、マドリディスタとしては惜しいところだ。ゆえにレギロンに関しては買い戻しオプションを確保することでマドリディスタのハレーションを抑えたいというのがペレス会長の本音だろう。

マドリーは今夏、選手売却とレンタルで9600万ユーロ（約119億円）を得ている。かくしてコロナ・ショックを乗り越え、ジダン・マドリーはこれから始まるシーズンに現有戦力で立ち向かうことになる。