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児童虐待の問題は「私たちの代で終わらせなければならない」エホバの証人 元2世・3世信者らの強い思い

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

5月22日、宗教2世の当事者からなる、スノードロップ・宗教2世問題ネットワーク・JW児童虐待被害アーカイブの3団体が連名で声明を出しました。

エホバの証人は、厚労省からの「子どもへの輸血を拒否するよう指図(さしず)や強制をしない」や「『宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A』(以下Q&A)の周知」などの要請を受けて、信者らに「お知らせ」を出しました。

その内容は、子供のしつけに対して「児童虐待を容認していません」や、輸血などの治療については「一人一人が自分で決めるべきことであると考えており、そのように教えています。誰かから強制されたり、圧力をかけられたりして決めることではありません」などという12項目からなっています。

内容は極めて不十分

これに対して、JW児童虐待被害アーカイブ代表の綿和孝さん(仮名)は「エホバの証人が外部からの意見に対して反応を示したことは例をみないこと」としながらも、その内容は「極めて不十分なもの」と話します。

宗教2世の当事者からなる3団体は「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」の信者への周知徹底や、教団が長年にわたり鞭を推奨してきたことを認めて「鞭をはじめとする虐待を受けた全ての2世3世らに謝罪すること」などを要望しています。

(出典:5月22日発表、スノードロップ・宗教2世問題ネットワーク・JW児童虐待被害アーカイブによる、国の要請に対するエホバの証人の対応についての声明書より)
(出典:5月22日発表、スノードロップ・宗教2世問題ネットワーク・JW児童虐待被害アーカイブによる、国の要請に対するエホバの証人の対応についての声明書より)

すでに今回の声明については、エホバの証人の側にもメール送っているということです。

児童虐待防止にむけての抜本的な法整備を要望

スノードロップ代表の夏野ななさん(仮名)は「教団は被害の事実を認めず、謝罪も改善もしていません」として「組織的な児童虐待防止にむけての抜本的な法整備をしてほしい」と国に強く求めます。

また「被害にあっている子供たちはもちろんのこと、すでに成人した人たちも、現在、苦しんでいる人が多くいます」と、被害者支援の拡充の必要性も訴えます。

現在、日本司法支援センター(法テラス)では「霊感商法等対応ダイヤル」0120-005931(フリーダイヤル)を開設しています。

ここでは高額献金の相談だけではなく、信仰を持つ親から児童虐待を受けているといった、宗教2世問題の相談も受け付けています。

しかしそのことが充分に宗教2世らに伝わっていない状況を踏まえて、夏野さんは「霊感商法等対応ダイヤルでは、宗教2世の問題も扱っていますので、周知をお願いします」とも話します。

「やりなおし」

綿和さんは、今回のエホバの証人の信者へのお知らせを読み「やりなおして頂きたい」との率直な感想をもったといいます。

「エホバの証人は『児童虐待を容認していません』といってはいますが、組織的に行った鞭打ちについて一切触れられていない」と指摘します。

「最近になっても鞭打ちが行われていることがわかってきている。これが虐待であることを明確に(信者らに)伝えてほしい」

そして、ご自身が高校生だった頃の体験を話します。

「私の父親は長老という立場の幹部でした。(教団内で)「審理委員会」が開かれて、同い年の女性の排斥処分の決定が出されたことがあります。その結果、女性は家から出されてしまい、親とは連絡を取れない状況になりました。そういった悲惨な状況を間近で見てきました」

エホバの証人では「排斥(された)者とは、一切の接触(関り)を持ってはならない」とされています。

この事例を聞いてわかることは「排斥」を通じて、親が子供を無視するなど、親子関係を断絶させてしまう忌避行為に及ぶのは、親自身の意思ではなく、教団の方針に従って行われているということです。つまり、組織的に宗教的虐待が行われているわけです。

「輸血は個人の決定である」旨の文言は詭弁でしかない

旧統一教会もそうですが、カルト的思想を持つ団体の教義は絶対であり、より上の信者からの命令や指示に従って、行動することを常(正しいこと)としています。信仰が強い人ほど、そうした行動を取ることになります。

今回の信者らへの通達では、輸血を含む治療について「一人一人が自分で決めるべきこと」であり「誰かから強制されたり、圧力をかけられたりして決めることではない」とされています。

しかし実際には、組織としての行動が基本とされるなかでは、親自身が独断で物事を決めるということは考えられません。

3団体が声明のなかで述べる「『輸血は個人の決定である』旨の文言は詭弁でしかありません」の指摘は、もっともといえます。

宗教2世らは「これまで教団内では、子供たちの権利や命が『信教の自由』のもとに奪われてきました。あってはならないことです」といい、綿和さんも夏野さんも「この問題は私たちの代で終わらせたい」との強い思いを持っています。

私たちは、引き続きエホバの証人が児童虐待を組織的に行っていないかの厳しい目を向けるとともに、カルト的思想を持った団体による、組織的な児童虐待(虐待の隠蔽を含む)を防ぐための抜本的な法整備の議論を高めていく必要があります。

さらに、エホバの証人による信者らへの「お知らせ」の後にも、こうした児童虐待の報告や相談があがってくれば、国としても、公益法人としての宗教法人として本当に存続させてよいのかを、旧統一教会に続いて、真剣に考えていかなければなりません。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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